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03 父母との家族会議で

 帰宅して父の執務室へ直行する。

 うまい具合に母も在室していた。2人以外の家族に、隣国へ遊学中の弟がいる。

 事の次第を報告すると、父が口を開いた。


「なるほど、糾弾者3名は全員平民で、舌鋒はソコソコだったのだな。しかし、どうも真剣味が足りないというか、中味がちゃんとした非難になってないというか……」


 それに男爵令嬢のナターシャさんだって、小説なら豊満な御胸をイロボケ野郎に押し付けてシナ垂れかかるのに、ただ控えているのみだった。母が口をはさむ。


「この結婚は、そう、あの人が言い出したことだもの、解消は無理よね。一度、口に出したら、テコでも動かないから……」


“あの人”というのは、王后のことだ。母は同級生だった。父が続ける。


「そうだなあ。アイツは尻に敷かれて言いなりだ。いやいや、アイツだって認めねえぞ」


 父の言う“アイツ”は国王のことだ。御学友だったので、今でも気安くこう呼ぶ。敷かれているってぇ? 父よ、他人のことが言えるのか?

 お(いえ)の一大事だというのに、二人は呑気な物言いだ。全く緊張感が無い。表情も普段通り。私もか。


 根本的には、そもそも婚約自体が不可思議なのだ。私より優秀な御令嬢は何人もいる。外国語でも歴史学でも、あのトンカチをサポート可能な御方だらけなのだ。それにみなさん、遥かに見目が麗しい。目鼻立ちが整っていて愛嬌もある。さらに、出るところが出て、絞られるところが絞られている。

 こっちは誰に似たのか、眼ヂカラだけは負けやしない。眉毛も釣り気味だし……。胴体は? 自慢じゃないけど絵に描いたようなツルペタ。悔しいけど……。

 御令嬢の中には、いるはずだ。あのクソボケカスはイヤでも、嫌いでも、王太子妃の地位にはなりたいという上昇志向の娘が……。とっても魅力的だぞ。みんなにカシズかれて、宝石も、より取り見取りで、美味しいものが食えるんだ。誰か、引き受けてやってくれよ。

 自分でいうのもなんだが、こっちは跳ねっかえり娘だぞ。

 国王夫妻が親友の娘だからと甘えているのだろうか。自分たちが生み出した失敗作の尻拭いを押し付けないでほしい。生贄に差し出す我が両親もどうかと思う。なぜ私なのか。白状してくれよ。本当に知らないのか。


「それでだなあ。婚約破棄と騒ぐ理由が分からん。天地が引っ繰り返っても無理だぞ。あのボウズも分かっているはずなんだが……。親への反抗か。馬鹿なのか。ああ、言うまでもないか。それにしても、なんでアンドレの若造は止めないのだ」


 このあたりの会話は1回目のときと一緒だ。それに、どうして、破棄が無かったことになったのだろうか。本来なら国政を揺るがす一大事だ。男爵令嬢は修道院送りで、アンドレたちもタダで済むはずはないのだ。まあ、今度も学園内の学芸会というくらいの認識で、シレっと無かったことになるのだろう。クソヤロウの不出来は貴族社会では公然の秘密……というか、有名だから、悪ふざけと捉えられているようだ。早い話が、犠牲者は私一人ということ。ほんと、迷惑だ。腹が立つ。


「明日の朝に登城してアイツと相談するが、期待はするな。事の次第は、もう知っているはずだ」


「でだな、ベアトリス」


 父が向き直り、顎を少し突き出して喋り出した。


「要はお前の考え方次第だぞ。どうせ、あのボウズとクっつかなければいけないのだ。(のが)れることは出来ない。運命だ。ということは王太子の御(きさき)様だぞ。妃殿下って呼ばれるんだぞ。ボウズが即位すれば国王で、お前は王后陛下だ。この国で一番偉い女性というわけだ。ボウズ自体が無能でも、そういうことだ。

 そこで、よく考えろ。その無能をこき使ったらどうだ。国王が出来損ないなら、お前はなんと、やりたい放題だぞ。女性の中で一番どころか、あのボウズよりも上、我が国一番の権力者だ。今の国王夫妻だって、アイツより彼女の方が上だろ。けれど、お前の相手は、あの無能だ。現王妃以上の権力者になれるぞ。どうだ。魅力的だろう」


 なるほど、なるほど、そういう考えもあるのか。なすがまま、きゅうりがぱぱ、っていうことだな。それも悪くない。王国を手中に収めた悪役令嬢かあ。カッコいいかなあ。女帝だよね。響きがいいなあ。じょてい、ジョテイだよ。女王陛下。シバの女王、サドの女王様、……。あっ! これはエロ小説か。

 そうだ、ウスノロをパシリに使っていたのだっけ。「おい、お菓子をクスネて来い」って命令したら、素直に王宮の超高級品を持ってきたな。ありゃあ甘かった。女王様になったら心置きなく毎日あれを口にできるのか。うふふふふっ! 陰でボスザルって呼んでいたのは知っていたけれど、あの頃といっしょかあ。


「ただね、ベアトリス」


 あっ! 一人で耽美な世界に浸り込んでいた……。母に現実世界へ呼び戻される。


「ひとつ、乗り越えなければいけないハードルがあるのよ。解っているかしら?

 そうよ。彼との間に子どもを作る必要があるの。王族の配偶者になった義務ね。貴方も、お年頃だから、耳学問として知っているわよね。学校でも教わったでしょ。女性の身体の仕組み……。そして男の人と、どんなことをするのか。あの王太子と、なにをしなければいけないか……」


 えっ?! 子ども……。子どもねぇ……。あー、考えたことが無かった。気が付かなかった。私一人では出来ないのか……。ヌケサクと夫婦(めおと)になるということは、そういうことだった。

 恋愛小説に出てくるよね。(なま)めかしい場面が……。濡れ場っていうんだっけ。自分のことだなんて、想像したことが無かったなあ。今まで、他人事と楽しんでいたのに……。えっ、体を重ねるんだっけ。一糸まとわぬスッポンポンで……。そうしてトンチキのチンポを受け入れるのか……。種付けね。あー、下腹部が痺れてきた。意識しちゃだめだ。

一応、タイトルの回収回でした。

なすがまま云々(うんぬん)は、天才バカボンのパパのキメ台詞せりふです。

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