13 悪役令嬢は立つ
アンドレが言う。
「国の運命を左右する決定は緊張しますね。ありがとうございました」
ウォルター将軍が続ける。
「よくぞ、耐えてくださいました。感謝します。お尋ねになりたかったですよね。アレシア城のこと。実はすでに特務部隊を向かわせています。陸路で1隊と、海路で1隊の合計2隊です。我が軍は、正規戦よりもゲリラ戦に重きを置いているのです。あの席では誤解を招きかねないので、口にしにくいことでした。
敵である包囲軍の状況は間諜が掴んで逐次、連絡する手筈です。アレシア城は数年前より武器や食料を集めているという情報があって今回、納得しました。コーネリアス殿は先見の明をお持ちですな」
「ああっ、6年前に我が家に戻ったとき、そんな話をしたわ。弟は攻める方法を尋ねたのよ。私は言ったの。決め手はクロスボウだって。それから火矢攻撃で城を焼き払えとか……」
「なるほど、それで消火用の砂と塩ですか。変なものを調達するものだと報告が上がっていました。確かに反乱軍にとって、コーネリアス殿は不倶戴天の敵、王女もろともに殲滅したいでしょうな。こりゃあ、心強い。早い吉報を待てますな。
また我々は、ヴェスト王国正規軍の再結集を画策して将校クラスを十名、国王派貴族の下へ遣わしています。彼らの腕をもってすれば、忽然と立派な軍隊が立ち上がります。国境に集結した反乱軍は、もはや袋のネズミです。
それと、我が軍のもう一つの特徴が、歩兵による集団戦法です。対してあちらは騎兵戦です。もちろん一対一では敵いません。でも集団だと断然こちらが有利です。それに、相手が個人的な功名を狙うのに対して、こちらが目指すものは集団での勝利です。日々、彼の国のことは研究に研究を重ねて、演習も繰り返しています。敵ではありませんよ」
アンドレが私の役割を説明してくれる。
「歩兵大隊の出陣式で檄を飛ばしていただきます。喋る内容はこちらで用意します。それと、国中を巡回して、戦意を鼓舞していただきます。戦線を支える後方の国民に方向性を与えるということです。これから何十年か、隣国を支えるために負担が続きます。まあ、関係が良好になれば、すぐに元は取れますけどね。陛下にお願いするのは、いわゆるプロパガンダです。
それと、先ほど、ライアンが説明したように、すでに戦後対策の実行に入っています」
私は、幼い新国王ロバートを従えて、出陣式で演説する。
「我らが誇る精鋭たちよ。今、秘めたるその力を見せる時が来た。
彼の国の民を救い、我が国の憂いを取り除くのだ。
正義は我にあり。勝利の女神は我が軍に微笑む。
行け、勇者よ。ツワモノたちよ」
ははははっ! とうとう女帝になっちゃった。悪役令嬢が女帝だよ。でも、操り人形の女帝。まあ、役割演技の女帝だね。
その後、マチルダさん以下5人の女性騎士を従えて国中を回った。銃後の護りは女性が多いから、感激された。女性の地位向上にも役立つことだろう。
駆け足ですけれど、タイトル回収回でした。あと、次の完結回で、ばらまいた細かい伏線をすくい挙げます。
イラスト画像は、SeaArtによりAI自動生成されたものです。




