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54イースター編「うなじのかたい民」


水曜の夜。

はれるや教会の祈祷会。

小さな円になって座る人たち。

世界地図が机に広げられていた。

祈祷会には、めりい、ろいこ、ヨシア、らむ、モーセ、呼木さんもも来ていた。


「祈祷会なんて初めてで、緊張するなぁ⋯」

ろいこはらしくなく、緊張している

「だいじょうぶ。心のままに、赤裸々な心で挑んでいいんだよ」

呼木さんは、ろいこを元気づけた。


「今日は、世界のために祈りましょう」

そう言うのは、はれるや牧師。

戦争、貧困、迫害。

遠い国の出来事が次々と挙げられる。

呼木は目を閉じる。



(世界は、こんなにも壊れている)

その時。

ろいこがぽつり。

「自分の外側の問題より、まずは内側がなぁ……」

静かな部屋に、やけに響く。

「この前の期末テストの点数が壊滅的だったし」


一瞬、空気がゆるむ。

めりいが小声で。

「そこ?」

「いや、でもほんとに。

世界平和祈る前に、私の数学が滅びてる」

一同は爆笑した。

けれど。


その言葉は、呼木の胸を刺した。


(外側より、内側)

世界の問題を語りながら、

娘との関係はどうだ。

教会の未来を案じながら、

自分の高慢はどうだ。

うなじのかたい民。

それは、遠いイスラエルの話ではない。


(私のことだ)


はれるや牧師が聖書を開く。

★マタイ7:5

「偽善者よ、まず自分の目から梁を取り除きなさい。

そうすれば、はっきり見えるようになって、兄弟の目からちりを取り除くことができます。」


静かに読まれる言葉。

呼木は目を閉じる。



梁。



人の欠点は見える。

自分の傲慢は、見えにくい。



続いて、聖書の学びがあった。

今夜の箇所は、士師記。

勇者・ギデオンの歴史だ。

「主は、ギデオンに言われました。

“あなたの民は多すぎる”と」

三万二千人。

それが、三百人にまで減らされる。

人間の力を削ぎ落とされる。

「数でも、武器でもなく、

わたしが救うのだ、と神は示されたのです」


めりいはノートに書く。

《三百人でも勝てる》

ろいこは小声で。

「三百点満点だったら、私もいけたのに」

「ないから」

とめりい。

でも、その軽口の奥で、

ろいこも少し考えている。

(自分の弱さって、そんなに悪いのかな)


祈りの時間。

めりいの番。

「神さま。

世界の問題も大きいけど、

まず、私の中のかたいところをやわらかくしてください」


素直な祈り。

呼木はその声を聞きながら思う。

(私は、正しさで人を動かそうとしていなかったか)

ギデオンは、最初、臆病だった。

「私は最も小さい者です」と言った。

それでも、神は用いた。

(強さではなく、従順)


祈祷会が終わる。

夜風。

ろいこが伸びをする。

「よし、まずは数学から悔い改めます」

「悔い改めの使い方違う」

めりいが笑う。

呼木は少し後ろを歩きながら、空を見る。


(梁を、取り除け)


娘の顔が浮かぶ。


「あんな⋯⋯」

まだ固いままの関係。

でも。

まずは、自分の目から。



ヒツジへ。

今日は、ギデオンの話を聞いた。

神さまは、強い人じゃなくて、

弱い人を使うらしい。

だったら、

テスト赤点の私も、ワンチャンある?

でも、まずは。

自分の梁を取るところから。

ヒツジも、うなじ、かたくなってない?


続く⋯

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