52イースター編「娘」
1月1日。
私は、日記帳を開いた。
アンネ・フランクは、自分の日記帳に「キティ」と名付けたらしい。
新年、一念発起。私も、それに倣おう。
私の日記帳の名前は──
『ヒツジ』。
理由は簡単。
主はわが羊飼い。
だから私は、羊。
ヒツジは夢を見る。
でも最近は、夢だけじゃなくて、ちゃんと歩いてる気もする。
1月3日
新年礼拝。
「明けましておめでとうございます」
教会の挨拶って、なんか独特。
ろいこは相変わらずクール。
「今年もよろしく、ヒツジちゃん」
「それ日記の名前!」
ヨシアはスーツで来ていた。
「神社も忙しいけどさ。
……今日はこっち来た」
ちょっとだけ照れくさそうだった。
らむは「あけおめ」とだけ言って、席に座る。
モーセは少し静かだったけど、前より自然に笑う。
新しい年が始まった。
特別な奇跡はないけど、
ちゃんと“ここにいる”感じがした。
1月20日
呼木さん、最近よく笑う。
前よりも、少し軽くなったみたい。
でも時々、遠くを見る。
2月14日
バレンタイン。
私は大量の“義理チョコ”を用意した。
「はい、ろいこ」
「なにこれ。色、やばくない?」
「溶けただけ!」
「2回?」
「……3回」
ヨシアも受け取る。
「ありがとうな」
一口かじる。
固まってない。
「……これは、斬新だな」
「まずいって言え!」
らむは爆笑。
「これ兵器だろ」
モーセは真顔で言った。
「……愛は忍耐です」
「聖書使うな!」
教会のロビーが笑いで満ちる。
味は……まあ、その、
来年に期待。
神さまって、派手じゃない。
でも、ちゃんといる。
ヒツジは、今日も歩いてる。
−−−−
その日、呼木さんは娘に会った。
娘は父親を見つけると、ぷいっと目を背けた。
娘の名前は、あんな。呼木あんな。
続く⋯




