㊿クリスマス編「クリスマスコンサート開催」
12月24日。
はれるや教会は、いつもより少しだけ眩しかった。
入口にはリース。
ろいこが「センス良くない?」と自画自賛した金色の星。
中では、キャンドルが揺れている。
めりいは深呼吸した。
「……始まるね」
「震えてる?」
「ちょっとだけ」
「風邪じゃん」
「違うし」
その時、扉が開いた。
らむとモーセ。
ヨシアも、部活帰りのコート姿で入ってくる。
「間に合った……」
ヨシアは息を整えながら席に座った。
会堂が暗くなる。
はれるや牧師が静かに語り始める。
「今夜、私たちは“誕生日”を祝います。
しかしそれは、有名人の誕生日ではありません。
神さまが、人として生まれた日を覚えるのです」
めりいは、ろいこを見る。
ろいこは珍しく真面目な顔だ。
「全能の神が、
力ではなく、
赤ん坊として来られた」
キャンドルの光が揺れる。
「支配するためではなく、
共に生きるために」
モーセの目が、少し見開かれる。
第一部、賛美。
「行くよ、サラ!」
「ああ、デボラ!」
ライトが当たる。
内村デボラとサラ・ミス・コナーランド。
力強いゴスペルが会堂を震わせる。
♪ Glory to the newborn King
声が重なり、天井を突き抜ける。
めりいの胸が熱くなる。
(これが……賛美)
曲の合間、デボラがマイクを持つ。
「山梨で歌った夜を覚えてる?」
サラが微笑む。
「あの、小さな教会」
客席後方で、呼木が顔を上げる。
デボラの視線が一瞬止まる。
「……あの時、私たちに“声は神からの預かりものだ”って言った人がいた」
サラが続ける。
「不器用だけど、まっすぐな牧師さんだった」
呼木は目を伏せる。
ろいこが、ちらっと彼を見る。
(山梨……?)
小さな違和感が、心に落ちる。
第二部、メッセージ。
はれるや牧師が語る。
「皆さんは、バスケットボールをご存じでしょうか?」
ヨシアが顔を上げる。
「この競技を考案したのは、
ジェームズ・ネイスミスという牧師でした」
(え?)
ヨシアの目が見開く。
「彼は、若者たちのために、
冬でも体を動かせる健全なスポーツを、と祈りながらルールを作ったのです」
体育館の光景が、ヨシアの頭に浮かぶ。
「信仰は、教会の中だけにあるものではありません。
コートの上にも、学校にも、家庭にも、あるのです」
ヨシアは拳を握る。
「あなたの才能は、神からの贈り物。
それを通して、神の栄光は現れる」
静かな拍手。
ヨシアの胸の奥で、何かがほどける。
(バスケも……神の中にある?)
ラスト賛美。
会衆全員で歌う。
♪ きよしこの夜
めりいの声が、震えずに響く。
ろいこも、小さく口ずさむ。
らむは歌詞カードを見つめながら、少しだけ声を出す。
モーセは目を閉じていた。
終演後。
ロビーは笑顔であふれる。
「よかったな」
ヨシアが言う。
「うん」
めりいは頷く。
「クリスマスってさ、
プレゼントの日じゃなかった」
「じゃあ何」
ろいこが聞く。
めりいは考える。
「神さまが、“遠いまま”じゃいられなくなった日」
モーセが、静かに言った。
「……近くに、来た日」
その言葉に、誰も否定しなかった。
会堂の奥で。
デボラが呼木に近づく。
「──覚えてますか?」
呼木は、かすかに笑う。
「……勿論。忘れないとも」
サラが頷く。
「あなたの言葉、まだ響いてる」
ろいこは、その光景を見ていた。
(山梨。小さな教会。優しい牧師)
心の奥で、何かが動く。
まだ思い出せないけれど。
雪が降り始める。
めりいは空を見上げる。
(ヒツジは夢を見る)
でも今は、夢じゃない。
光は、ちゃんとここにある。
続く⋯




