㊽クリスマス編「ウィンターカップ」
久しぶりの更新。完結まで書き上げたいです
リバイバルコンサートの後、ヨシアのウィンターカップがあった。バスケの冬の大会だ。
なんとしても勝たねばならない試合だった。
体育館は、冬の空気よりも熱かった。
スタンドはぎっしり埋まり、
バスケットボールの音が何度も跳ね返る。
今日は──
ウィンターカップ予選。
扶桑ヨシアが、コートに立っている。
白いユニフォームの背番号「7」。
ジャンプボールの前、目を閉じていた。
(祈ってる……?)
めりいは、ぎゅっと手を組んだ。
「ろいこ、見た? 今、祈ってたよね」
「さあね。ルーティンかもよ」
ろいこは腕を組んだまま言う。
けれど、その目はちゃんとコートを追っている。
試合開始。
相手は県内トップクラス。
高さもスピードも一枚上。
ヨシアは果敢にドライブするが、ブロックされる。
3ポイントはリングに弾かれる。
前半終了、10点ビハインド。
「……やばいね」
めりいの声が小さくなる。
「まだ前半」
ろいこは短く言う。
「でもさ、ヨシア、なんか焦ってる」
タイムアウト。
ベンチに戻ったヨシアは、タオルをかぶってうつむいている。
顧問の先生が何か指示を出しているが、
彼の目はどこか遠い。
(神社の跡取り。
キリスト教の友達。
どっちつかずの自分──)
そんな彼の葛藤を、めりいは少しだけ知っている。
後半。
ヨシアはパスを選んだ。
自分で決めるのではなく、仲間を活かす。
アシストが決まり、流れが変わる。
「おおっ!」
めりいが立ち上がる。
「今の上手い」
ろいこが小さく頷く。
点差は縮まる。
残り1分、2点差。
会場が揺れる。
ボールはヨシアの手に。
相手がダブルチームで詰める。
(撃つ? パス?)
その瞬間──
彼は、迷わず跳んだ。
フェイダウェイ。
ボールは高く弧を描き──
ネットを、揺らした。
同点。
歓声が爆発する。
残り5秒。
相手のラストシュートは外れ、
延長戦へ。
ヨシアは天井を見上げた。
(主よ。勝ちたいです。
でも、あなたが与えるものを受け取ります)
その顔は、もう迷っていなかった。
延長戦。
最後のブザー。
結果は──
74対72。
ヨシアたちの勝利。
体育館の外。
冷たい風の中、ヨシアは汗だくで出てきた。
「ヨシアー!」
めりいが手を振る。
ろいこは少し距離を保ちつつも、笑っている。
「……来てたんだ」
「当たり前じゃん!」
「祈った?」
めりいが聞く。
ヨシアは少し考えてから言った。
「うん。でもさ……
“勝たせてください”じゃなくて、
“迷わないようにしてください”って祈った」
「……へえ」
ろいこが珍しく柔らかい顔をする。
「迷わなかった?」
「うん。最後は」
ヨシアは笑った。
その笑顔は、勝ったからというより、
何かを乗り越えた人の顔だった。
帰り道。
めりいは空を見上げる。
冬の空は澄んでいる。
「なんかさ」
「なに」
「夢って、勝つことじゃなくて、
自分の場所でちゃんと立つことなのかも」
ろいこは肩をすくめた。
「詩人かよ」
でも、少しだけ優しく言った。
「……悪くないね、それ」
続く⋯




