表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/56

㊽クリスマス編「ウィンターカップ」

久しぶりの更新。完結まで書き上げたいです

リバイバルコンサートの後、ヨシアのウィンターカップがあった。バスケの冬の大会だ。

なんとしても勝たねばならない試合だった。


体育館は、冬の空気よりも熱かった。

スタンドはぎっしり埋まり、

バスケットボールの音が何度も跳ね返る。

今日は──

ウィンターカップ予選。

扶桑ヨシアが、コートに立っている。

白いユニフォームの背番号「7」。

ジャンプボールの前、目を閉じていた。


(祈ってる……?)


めりいは、ぎゅっと手を組んだ。

「ろいこ、見た? 今、祈ってたよね」

「さあね。ルーティンかもよ」

ろいこは腕を組んだまま言う。

けれど、その目はちゃんとコートを追っている。



試合開始。

相手は県内トップクラス。

高さもスピードも一枚上。

ヨシアは果敢にドライブするが、ブロックされる。

3ポイントはリングに弾かれる。

前半終了、10点ビハインド。

「……やばいね」

めりいの声が小さくなる。

「まだ前半」

ろいこは短く言う。

「でもさ、ヨシア、なんか焦ってる」

タイムアウト。

ベンチに戻ったヨシアは、タオルをかぶってうつむいている。

顧問の先生が何か指示を出しているが、

彼の目はどこか遠い。

(神社の跡取り。

キリスト教の友達。

どっちつかずの自分──)

そんな彼の葛藤を、めりいは少しだけ知っている。

後半。

ヨシアはパスを選んだ。

自分で決めるのではなく、仲間を活かす。

アシストが決まり、流れが変わる。

「おおっ!」

めりいが立ち上がる。

「今の上手い」

ろいこが小さく頷く。

点差は縮まる。

残り1分、2点差。

会場が揺れる。

ボールはヨシアの手に。

相手がダブルチームで詰める。

(撃つ? パス?)

その瞬間──

彼は、迷わず跳んだ。

フェイダウェイ。

ボールは高く弧を描き──

ネットを、揺らした。

同点。

歓声が爆発する。

残り5秒。

相手のラストシュートは外れ、

延長戦へ。

ヨシアは天井を見上げた。


(主よ。勝ちたいです。

でも、あなたが与えるものを受け取ります)


その顔は、もう迷っていなかった。

延長戦。

最後のブザー。


結果は──

74対72。


ヨシアたちの勝利。

体育館の外。

冷たい風の中、ヨシアは汗だくで出てきた。

「ヨシアー!」

めりいが手を振る。

ろいこは少し距離を保ちつつも、笑っている。

「……来てたんだ」

「当たり前じゃん!」

「祈った?」

めりいが聞く。

ヨシアは少し考えてから言った。

「うん。でもさ……

“勝たせてください”じゃなくて、

“迷わないようにしてください”って祈った」

「……へえ」

ろいこが珍しく柔らかい顔をする。

「迷わなかった?」

「うん。最後は」

ヨシアは笑った。

その笑顔は、勝ったからというより、

何かを乗り越えた人の顔だった。



帰り道。

めりいは空を見上げる。

冬の空は澄んでいる。

「なんかさ」

「なに」

「夢って、勝つことじゃなくて、

自分の場所でちゃんと立つことなのかも」

ろいこは肩をすくめた。

「詩人かよ」

でも、少しだけ優しく言った。

「……悪くないね、それ」


続く⋯

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ