㊻ペンテコステ編:私の声を、聞いて!
日曜日、教会に行った。
爆賛が終わっても、まだ私の心はどこか高揚していて、どこか不安だった。
礼拝が終わった後、はれるや牧師と呼木さんが笑顔で迎えてくれた。
はれるや牧師
「地震があったらしいけど、」
ろいこ
「なんとか。突然の事だったからビックリしたわ」
はれるや牧師
「怪我が無くて良かった。神さまの守りがありましたね。
ABC教会は、耐震工事もしてありますから」
呼木
「それで、ABCキャンプ場での爆賛、楽しかったんだって?」
めりい
「うん、すごく! すっごく楽しかった!」
私は、両手を大きく広げた。
「あんなに歌って、踊って、汗だくになったの、久しぶりだった……」
呼木
「それは良かったね」
呼木さんは優しく頷いた。
ろいこ
「めりいってば、すごいはしゃいじゃって。半分くらいトランス状態だったよ?」
ろいこが、ちょっとからかうように笑う。
「ろいこは黙って。」
めりい
「でも……歌ってるとき、本当に“なにか”が来てる気がしたんだよ。心の奥のほうが、熱くてさ。うまく言えないけど……」
はれるや牧師が、少し真面目な顔になる。
「それが“聖霊の満たし”かもしれませんね」
めりい
「聖霊……の満たし?」
はれるや牧師
「そう。聖霊は、私たちの心の中に働く神さまの力です。言葉じゃ説明しきれないけど、私たちを神に向けて動かす力とも言えるかな」
めりい
「うん……そうかも」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
呼木
「で、今日はその“満たされた”声で、何か歌ってくれない?」
呼木さんが、冗談っぽく言った。
めりい
「え?」
呼木
「さっき“歌ってるとき”って言ってたでしょ。ペンテコステって、聖霊が降りて、弟子たちが“異なる国の言葉”で神さまを賛美した日でもある。
つまり、“声”が与えられたってこと。……めりいの“声”も、もう与えられてるんじゃない?」
私は、びっくりした。
自分の「声」……
自分だけに与えられた“なにか”……。
それは、ずっと探していたものだった。
「じゃあ……一曲だけ」
私は、教会のピアノの前に立った。
エリちゃんが伴奏についてくれて、私は少しだけ深呼吸をした。
「主はわが羊飼い……わたしには乏しいことがない……」
私の声が、小さく教会に響いた。
みんなが静かに聞いてくれていた。
ピアノの音と、私の声が、教会の天井に吸い込まれていく。
途中、ちょっとだけ声が震えた。
でも、それでも──
「わたしは、恐れない。主がともにおられるから」
それだけは、強く歌えた。
歌い終わったあと、誰かが小さく拍手してくれた。
ろいこだった。
「……うまくなったじゃん」
ちょっとだけ泣いてるみたいな顔だった。
めりい
「ありがとう」
私は、にっこり、そう答えた。
はれるや牧師が、嬉しそうに言った。
「これが、ペンテコステの恵みですね」
呼木さんも、小さく頷いた。
「うん。“幻”も、“夢”も、“声”も……神さまはちゃんと、与えてくださる」
私は、日記帳『ヒツジ』に、こう書くことにした。
> 「私の“声”は、小さい。でも、神さまのもとに届くように歌えた。
それだけで、今日は十分だと思う」




