㉟ペンテコステ編:ヒツジとヤギ
嫌いだ。
ワタシは他人が嫌いだ。
道行く、すれ違う他人全てが憎くてしょうがない。
だからワタシは、今日も「妄想ゲーム」で通行人を倒してゆく。
頭の中で妄想するだけなら自由だ。クマを街中に召喚して人を食わせるも、怪獣を召喚して街をぶっ壊すのも、妄想なら許される。
通学のストレスを、ワタシはそれで解消していた。
ブツブツうるさいハゲのサラリーマン、
ペチャクチャしゃべる頭悪そうな女子高生、
おばあさんに席を譲ろうともしない生意気な小学生、
ガムを噛む偉そうな不良、
地団駄を鳴らすボケたおじいさん、
すべてが憎かった。
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私はろいことはれるや牧師、ペドロさんと呼木さん、教会のトラクト配布(チラシ配り)でI駅に来ていた。今日は休日なので人は少ないけど、なるべく多くの人に配るぞ!
「今度の日曜日、教会でコンサートやりまーす」
「よろしくお願いしまーす」
「いっしょに歌いませんかー?」
チラシは、なかなか受け取って貰えない。それはそうだ。誰しも、教会に興味があるわけじゃないから。
「お願いしまーす」
「なぁ、かれこれ1時間やってるけど、誰も受け取ってくれないことなんてある?」
「わたしは1枚受け取ってくれる人がいたよ」
「うへ〜。釣りしてた方がマシだよ」
「まあまあ。私たちは①人間をとる漁師なんですから。気長にやりましょ」
「最悪の休日だよ〜」
ろいこはチラシが全然減らないので愚痴を吐いた。
「これが終わったらお昼奢りますよ。寿司とかどうです?」
「マジ!?やったるか!」
ろいこはあっさり上機嫌になった。チョロい。
※①人間をとる漁師⋯マタイ4:18〜19、マルコ1:16〜18。ペテロとアンデレの兄弟は元々漁師でした。2人が釣りをしていると、イエスさまが声を掛けられ「あなたを人間をとる漁師にしてあげよう」と仰られた。
ペテロはイエスさまの弟子の中でもトップになり、弟のアンデレも初代教会(紀元1世紀の教会)の中心メンバーとして活躍しました。神さまの素晴らしさを伝えるために活動している人は、みんな「人をとる漁師」ということです。
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チラシを配っていると、私は突然走ってきた子にぶつかった。
ドンッ
「いたっ」
「チッ!どこみて歩いてんだよ!」
「あっすみません」
ぶつかってきたのはそっちでしょ……と言いたくなったが、ここは堪える。
彼女は舌打ちをしてそそくさと駅のホームへ向かっていった。
「なにアイツ。ヤナカンジー」
「まあ、急いでたんだよ」
「やり返せよめりい。私ならグーだぜ」
「クリスチャンがやり返しちゃダメって、礼拝でキャンプでも言ってたじゃんか」
「うへえ、①ガンジーかよお」
「ガンジーでも、助走つけて殴る」
「ペドロさん、変な日本語覚えないで」
①ガンジー⋯インドの独立運動家。インドを支配していた大英帝国に、暴力を使わない「不暴力、不服従」のやり方で抵抗した。ガンジーはヒンドゥー教徒でしたが、聖書やクルアーン(イスラム教の聖書)など、他宗教にも理解を示していました。
イエスさまの「右の頬をぶたれたら、左の頬も差し出しなさい(マタイ5:38〜39)」という教えと通じる、偉大な人ですね。
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「ぶっ〇すぶっ〇す……」
ワタシは胸がムカムカした。さっきのぶつかった女の子のことで、気が立っていた。
これから街のゲーセンに行って、スッキリしようと思っていたので、気持ちが先立ってあの子にぶつかってしまった。
正直悪いとは思ってるけど、謝れなかった。
「なんでワタシが謝らなきゃいけないんだ……クソ」
素直になれない心。本当に思っていることは、心の奥底に沈んでいく────。
心は底なし沼みたいだ。大切なモノも、底へ沈んでいって、戻ってこない。
9月、夏が終わりを告げて秋になる季節。私の心は晴れることはない。苦しい。
「いっそ電車に飛び込んで死んじゃおーかな……」
と思ったけど、シューティングゲームでハイスコアを出せてないし、太鼓の達人だってまだ鬼までクリアできてない。レースゲームだって……
ゲーセンでハイスコアを出せてないというのが、私の生きがいになっている。私は駅の黄色の線をじっと見つめる。
「この線を超えたら、あの世行きかぁ……」
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私は、さっきの女の子がとても気になった。
一瞬だが、あの子がヤギのストラップを付けているのを見つけた。彼女はヤギ好きなのかもしれない。
「おいめりい?どうした?」
「ぼーーーっ」
「はれるや先生、めりいがヤバいっす」
「え?」
「めりい、おいめりい!」
ワッッ!!!!
「ひゃあっ!」
「ボーッと生きてんじゃねえよ!」
「ごめんごめん」
「で、チラシ配りどうよ?」
「さっぱり。やっぱりみんな貰ってくれないね」
「空からヘリで配れればなあ」
「それじゃ舞っちゃうじゃんか。お金も掛かるし」
「手渡しの方が愛、伝わりますよ」
「そうだねペドロさん」
ペドロさんはチラシ配りに慣れているのか、半分ぐらいまで減っていた。
「ペドロさんのルックスのおかげじゃねえの?」
「ろいこさんたら、お世辞はやめとくれよ」
「オカマか!」
私たちのところへ、ひとりの見慣れない青年がやって来た。
「やあ!もしかして、キミ達もクリスチャンかい?」
「はい、そうですけど……」
「アンタだれ?」
「僕はモーセって言います。本名じゃないすけど」
私はこの人に、なにか言い知れない違和感を感じた。
続く。
最近調子を崩してて、毎日更新がムズかしいです。すいません。
でもやれる限り、執筆したいと思います。
神さま、ひとりでも、教会に人を呼べますように。
あなたもぜひ、クリスマスは教会に来てください。教会のクリスマスは、正月まで続いてます!




