㉕ABCキャンプ編:スキット準備
朝食の後にキャンプ場の掃除をする時間になった。
レジェメを見るとスケジュールがギッシリだ。
「ピンポンパンポン。みなさまにお知らせします。今日のお昼に予定されていたBBQですが、急遽夕食の時間にズラすことにしました。ご理解のほど宜しくお願いいたします。ピンポンパンポーン⤵︎ ︎」
ヘビゴロウ先生の放送が流れてきた。講師がなにやってるんだろうか。
私たちめりいグループは女子トイレの掃除係だ。
「朝食、重かったもんなあ」
「出ちゃいそう……」
「ちょっと!らんり!大丈夫!?」
烈っちゃんが絵本ちゃんを心配して休ませてあげた。
「無理して食べてたもんな」
「まじつらたん・・・ぴえん」
ろいこもギャル先輩も青ざめていた。
私も無理して食べきったけど、もうお昼抜きでもいいかも・・・・
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時間すぎて昼食の時間。
亀さんが申し訳なさそうに立っていた。
「朝はごめんなさい。お昼は軽めの薬膳料理にしました」
生姜の薬膳蒸しスープに、野菜のお粥。デザートに桃。これなら食べられそうだ。
「ぐァつ!ぐァつ!」
相変わらず丈治と勇次郎は大食いだ。昼が食べられない人の分まで平らげしまった。
「好吃!好吃!」
ヘビゴロウ先生は亀さんに感謝のグーサインをした。亀さんは嬉し涙を流し礼をした。中国式の礼みたいだ。
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午後はところ変わって湖のほとりへ。
集合写真を取るみたいだ。
「はいはい笑って笑って、ピスピース!」
カメラマンのおじさんは変な人だった。
「ヒューヒュー!顔が固いよー!ほら笑って笑って」
こういう時だと緊張して顔が固くなる。私のアルバムを見ると、だいたいぎこちない顔のオンパレードだ。
「いくよー!1たす1は〜〜〜?」
「たんぼのたーーー!」「にーーー!」「Dois!(ドイス/2つ)」
なんかバラバラな掛け声になってしまった。
「はいダメー!もう一度揃えてー!」
8回のリテイクの末、ようやく集合写真の時間が終わった。ふぅ・・・
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次はスキット(劇)練習の時間だ。
実は1日目にスキットの企画を話し合う時間が、フリータイムの前にあった。
劇のお題になる聖書箇所は、くじで決められる。
めりいグループとちいろばグループのお題はダニエル書6章の「ライオンの洞穴から救われるダニエル」の話だ。
「※①ダニエルって王さまの夢を解き明かす人だっけ」
「そうそう。ネブカドネザル王ね」
「で、ダニエル役誰がやんの?」
「それをこれから話し合うんじゃない!」
「じゃあダニエルやりたい人手を挙げて〜」
いつもなら手を引っ込める私だが、ここは手を挙げてみる。
「え」
見ると私しか手を挙げていない。
「じゃあダニエル役はめりいちゃんね、メモメモ」
私が主役!!!???
え?なんで私手を挙げたの?自分でも訳が分からなくて混乱した。
「やるじゃんめりい。中学の頃は樹の役だったのに」
なんで挙げちゃったんだろう・・・後悔の念が込み上げてきた。
「じゃあライオンの役はおカッパくん、烈っちゃん、丈治くん、勇次郎くん」
「ダリヨス王の役は……」
「わ、わたしがやります!」
絵本ちゃんが手を挙げた。
「うん!絵本ちゃんで決まりね!」
こうして、着々とキャストが決まっていった・・・
しかしヒーローちゃんが
「せっかくだから、アレンジしたストーリーにしてみない!?」
と、提案してきた。
「アレンジ?たとえばどんな?」
「特撮ヒーローもの!」
「お前の趣味じゃねえか!」
ヒビキさんは突っ込んだ。
「ヒーローってダサくないっすか…?」
「ないわー却下」
「ダサくないもん!仮面ライダーカッコイイもん!」
大人の気が微塵もなくなるヒーローちゃん。
「仮面ライダーって……子供向けだろ」
「大人が見ても楽しめるもん!クウガ見てみなよお!」
もはやどっちが子供か分からない。
このままじゃ喧嘩になりそうだ。
「特撮ヒーローの案いいと思います。ヒーローものにアレンジしましょう」
「めりいちゃん!ハレルヤ!」
「おいおいマジかよめりい」
「だって、このままじゃ喧嘩になりそうだったし……」
「主人公は天使マン。
天使マンがダニエルを怪人獅子洞穴から救い出します」
「おお!」
「天使マンは私がやります。ろいこはダニエルの役やってね」
「アタシが!?」
「やだ!天使マンはアタシがやるの!」
ヒーローちゃんがゴネてきた。アンタカウンセラー(先生)だろ……
「じゃあじゃんけんで決めましょう。負けた方はダニエルを罠に嵌める悪役になります」
「よーし!やったる!」
「はあああああああああ・・・・・・!」
ヒーローちゃんは気合いを込めた。そして
「変身っ!!」
左拳に力を込め、全身に力を漲らせる。
「仮面ライダークウ……」
「もとい!ヒツジ仮面!」
いつの間にかヒツジの仮面を装着していたヒーローちゃん。正直ダサい。
「時間押してんだから早くしてよね・・・」
烈っちゃんは冷めた目でジャンケンを見ていた。
「うぉぉおおおおおっ!!!!!」
「最初はグー!じゃんけん」
「ホイ!」
私は最強のチョキを捨て、パーを出した。
ヒーローちゃんは力を込めているのでグーで来そうだったからだ。
案の定、ヒーローちゃんは握りこぶしだった。
「くっ……なぜ!」
「よしっ」
「ABCのスピルバーグはキミだ!」
ヒビキさんが拍手をして私を称えてくれた。
スキットは絶対成功させるぞ!えいえいむんっ!
続く。
※①ダニエル⋯新バビロニア王国のネブカドネザル王に仕えた。ネブカドネザルは世界史でも出てくる人物なので覚えておいてください。聖書ではもっぱら悪い王さまとして描写されてますが、反対にダニエルは義しい人として描かれています。ライオンの洞穴に落とされても、神さまに信頼したダニエルは本当に尊敬するべき人ですね。




