㉔ABCキャンプ編:SIN(罪)
Ladies and Gentlemen!おはようございます。こちらABC Radio。皆さん如何お過ごしでしょうか?私は元気MAXです。では今日も神さまの前に張り切っていきましょう!
目覚ましの曲は※1天使にラブソングをから「
Hail Holy Queen」。
「おぉ〜〜マ〜ジィィか!!!」
やかましいぐらいのペドロさんの美声で目が覚めた。
キャンプ2日目だ。
「あーうるせえ!」
「ろいこ、おはよう」
「んぁ、おはよう。そしておやすみ」
ろいこは朝に弱い。全然眠れてない様子だった。
「んもう、朝から何!?」
「んんぅ〜。お早うございます」
「あーしまだ眠いんだけどぉ?」
「烈っちゃん、絵本ちゃん、ギャル先輩、おはよう」
「えほんちゃん?」
「昨日言ったじゃん……じゃないですか」
烈っちゃんは先輩だった。うっかり。敬語で話さないと怒られる。
「ああ?そうだっけ」
烈っちゃんも朝に弱そうな感じだ。と思いきやパッと起きて布団を畳み、身支度をした。
「さっ!みんなはやくデボーションしましょ!」
はやい。昨日聞くところによると、烈っちゃんは学校でクラス委員長、生徒会長をやっているそうだ。リーダー気質のキビキビとした人だ。でも寝顔はかわいかったなあ。
私は2度寝したろいこを起こし、布団を畳みパジャマを着替えながら、昨日のゴスペル説教後の振り返り会について思い起こしていた・・・・
※1天使にラブソングを⋯わがまま娘のデロリスがギャング王の殺害現場を目撃してしまい、修道女として身を隠し、修道院での生活で変えられていくハートフルコメディ。名作なのでぜひ見てください。今週2が金曜ロードショーでやります。
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「めりいちゃん!ろいこちゃん!こっち来て!」
ゴスペル説教後にヒーローちゃんに呼び寄せられる。
「今から振り返り会をします」
見ると他のグループの人達も集まって話をしている。
おカッパがこっちを見てあぐらをかいている。
「男女一緒だけど、緊張しなくていいからね」
ヒーローちゃんの右隣にらんりちゃんがいた。人が多いところに慣れてないのか震えていた。
わたしはらんりちゃんの右隣に座ることにした。
「大丈夫。わたしも緊張してるから」
私はらんりちゃんの右手を握った。
「マタイの福音書18:20
二人または三人がその名によって集まるところには、私もその中にいるマタイの福音書18:20」という、呼木さんの言葉を思い出した。私がらんりちゃんと一緒にいれば神さまも共にいて下さる。それを信じてらんりちゃんの手を握った。
「痛い!」
「あっごめん」
思わず強く握りすぎちゃった。ごめんね、らんりちゃん。
「そろそろ始めようぜ」
「まずお互いの自己紹介からね。男子グループから」
「男子グループじゃねえよ。『ちいろば』グループだ」
「そう。そういえば私たちのグループ、まだ名前決めてなかったわね・・・」
名前。それは本当に大事だ。作品を作ってタイトルを付ける時「懺悔」だの「俺が異世界転生してキャベツに転生!?」みたいなタイトルで人が買ってくれるかは分からない。「ヒツジは夢を見る」なんて本をいま考えたが、誰か手に取ってくれないだろうか?
「ひつじでいいわ」
烈っちゃんは即答した。
「じゃあ、ひつじグループ。そっちが先に紹介しろよ。レディーファーストだ」
「はあ?こういう時にレディーファーストは無いでしょうよ?」
「いいからはよ紹介しろ。時間押してんぞ」
おカッパは左腕に巻いた腕時計をせわしなく人差し指で強調する。
「雷雲綿めりいです。高1です。ひつじグループは嫌なのでめりいグループという名前を提案します」
「ええ?」
「はっははは!言われてんじゃねえかレッ…!」
おカッパが言い終わらないうちに烈っちゃんはおカッパを肘で小突いた。
「肘は反則だぞ、暴力反対……」
「悪かったわね」
「まあめりいグループね。賛成の人は?」
特にみんな不満はないようで、みんな賛成してくれた。こんな咄嗟に思いついた名前なのに、なんか照れくさい。
「なに笑ってんのめりい」
烈っちゃんにニヤけた顔を見られた。はずかしっ。
「俺は黒木ミツチ。高2だ。もう知ってるよな」
おカッパとずっと呼ばれてたので本名を忘れていた。
「湊義也です!高3ですっ!後輩諸君は猿先輩と呼んでくれ!」
おカッパと同じくゴスペルバンドをやっていた人だ。
「丈治です……眠いっす」
ちびまる子ちゃんの小杉みたいな人だ。
「日馬勇次郎だ。ラグビー部の高校1年。押忍ッ」
ガタイが良すぎる。相撲部もイケそうだッ
「さあ自己紹介も終わったところで、振り返り会をしましょう!」
男子のカウンセラーが振り返り会の進行を務めるみたいだ。名前は……
「あっれ!私の紹介がまだだったな、私は……」
「兜イブキ!」
「ヒビキ鍛えてます!」
「イブキなのかヒビキなのかどっちだよ!」
「ヒビキでいいです!」
「さて、今日のゴスペル説教でわかんないところある人〜?」
「はい」
「はい、めりいさん」
「あの、人の罪ってそんな重いものですか?イエスさまは、軽い罪でも重い罪でも、ぜんぶ背負うつもりですか?」
「あーなるほどね……」
「私もむかしはそう思ったよ。でも罪に重いも軽いも無いんだ。神さまに背くことが全部罪なんだ」
「俺は悪くねえ!って思う心がイチバン良くないね。神さまを処刑したパリサイ人はそういう頑なな心があったんだ」
「そうですか。すいません」
「後でいっしょに神さまへ謝りましょう」
「あとなにか質問ある人?」
「はい!」
「はいミツチくん」
「人を赦すことってそんな難しいものですか?イエスさまが十字架の上でどう思っていたか、俺にはよく分かりません」
「ミツチくんは誰かに悪いことされても人を赦せるかい?」
「赦せますね!難しいことじゃないですよ!」
バチン!
烈っちゃんがおカッパの頬を叩いた。
「何しやがる!」
「ほらね。言葉だけよね。右の頬をぶたれたら左の頬も差し出さなきゃ(マタイ5:39)」
「痛えよ!アントニオ猪木かよ!痛えよ!」
「とまあ、人を赦すことは決して簡単じゃないんだ」
「例えば人を憎んでいる人に『憎むのをやめろ』と言っても、彼の気持ちが強ければ説得は失敗するね」
「人にはできないが、神さまには出来るんだ(マタイ19:26)」
その言葉を聞いてらんりちゃんの表情が険しくなる。
「あの、いじめっ子がイジめられても、イエスさまは赦せるんですか?」
「ああ。イエスさまはとても寛容なお方だ。イジメっ子の暴力や誹謗中傷に決して負けず、打ち勝つのがイエスさまだ」
「そう、ですか」
らんりちゃんの表情はまだ重い。このキャンプに来ている誰もが訳ありなのだと、感じさせられた。
「じゃあ紙にいままでした悪いことを書けるだけ書いていこう!」
ヒーローちゃんとヒビキさんは全員に紙を配った。
私は今までの罪を紙に書けるだけ書いていった……。走馬灯のように悪い記憶が※1甦る。イエスさまはどうして私たちの罪を、過去現在未来の全人類が持つ罪を引き受けたんだろうか。呼木さんは聖書の神を「愛の神」と呼んでいた。
愛してるってだけで、他人の罪のために死ねるだろうか?私はろいこのためでも死ぬのは嫌だなぁ……
わたし達が書き終えると、2人のカウンセラーはそれを集めていった。そして……
ビリビリッ!
「!!!???」
ヒーローちゃんは目の前で紙をすべて破いてしまった。
「イエスさまがこうしてみんな罪を精算したんだよ!私たちは生まれ変わったんだ!ハレルヤだね!」
書いた紙をみんなの前で発表するかと思ったので、破かれてよかったかも……でもビックリした。
※1甦ると蘇るの違い⋯一応書いておきます。
「蘇る」は「死んだ人が生き返ること」の意味で使われることが多く、「甦る」は「一度衰えたものがまた盛んになること」の意味で使われることが多いようです。キリスト教ではもっぱら後者の「蘇る)の方を使います。イエスさまは十字架に架かり、3日後に蘇えられました。僕たちの罪のために。そのことを忘れないで欲しいです。
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「さあ、寝るわよ」
一日目の終わり、就寝準備に入った。
カウンセラーのヒーローちゃんは他のカウンセラー達と食堂で会議していた。
布団とシーツを敷いて寝るなんて、小学校の修学旅行ぶりかも。
「おやスイミ〜」
ボケをかまして眠りに入るギャル先輩。めりいグループ一番の年長者は、すごくマイペースだ。
「ささきち先輩、起こさない方がいいわよ。寝るのを邪魔するとすっごいキレるんだから……」
「そうなんだ烈っちゃん」
「先輩!めりい、あなた後輩なんだから先輩呼びしてよね!」
「いいじゃん無礼講で」
「良くない!ろいこ!あなたもしっかりしなさい!」
「うるせ〜なあ〜」
ギャル先輩、咲紗知先輩がそう寝言を言うや否やみんな眠りについた。
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(ねえ、誰か起きてる・・・?)
ギャル先輩を起こさないよう、小声で呼びかけた。
(起きてませーん)
(起きてんじゃん)
(わっ、私も起きてまひゅっ)
(らんりちゃんかわいい〜)
(ううっ///)
(やめなよろいこ)
(いいじゃんいいじゃん)
(ごめんねらんりちゃん)
(いや、大丈夫……です)
(なんだ、2人とも仲良いじゃん。いつの間に)
(フリータイムの時間にね)
(ふ〜ん。妬いちゃうなあ)
(ねえらんりちゃん)
(な、何ですか?)
(絵本ちゃんって呼んでいい?)
(えっ?えっ?どうして?)
(あだ名で呼び合いたいなあって)
(めりいのあだ名はヒツジな!)
(やだ!)
「大接戦ドゴォォン!!!!」
ギャル先輩が寝言で大声を上げたので、私たちは無理やり寝付くことにした。
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2日目のデボーションの時間になった。
最初に受付でレジェメ(用紙)を受け取っていたのでそれに説教やデボーションで気づいたことをメモするのが、キャンプでの勉強だ。
「デボーション終わったらみんなで夏休みの友やっつけようぜ〜」
「聖書を開いて。今日の箇所は第1サムエル17:44〜48節──」
ダビデがゴリアテを倒すところだ。
「みんなで朗読していきましょ」
ダビデは神さまに信頼して、6.5キュビト(286㌢)の怪物に立ち向かっていった。
昨日のゴスペル説教(Praise&Gospel。以後P&G)じゃないけど、ダビデにとってのヒーローは神さまなんだなあ。
みんなでダビデとゴリアテの話を分かち合い、ひとりひとりお祈りした。
「天の父なる神さま、私たちは弱い人間ですが、ダビデのように、純粋に神さまに全信頼を寄せて、苦難に立ち向かっていけますように。このお祈りに感謝して、主イエスさまの御名によって祈ります。アーメン」
ギャル先輩は見た目とは裏腹に真剣に祈りを捧げた。
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今朝の朝食は満漢全席だった。
「朝からこんなに!?」
「つい気合い入れすぎちゃった。ごめんね。テヘッ」
朝から肉まん(パオズ)、中華スープ、青椒肉絲、エビチリ、デザートに桃と、朝には重いメニューだらけだった。
丈治くんと勇次郎くんだけは「うまい!おかわり!」「強くなりたくば喰らえッッッ」とそれぞれ5人分平らげた。
めりい達は「太り気味」になった
こんなんで行けるか2日目……!?
続く。
長くなりました。ごめんなさい。




