㉓ABCキャンプ編:あなたのヒーローはだれ?
レクリエーションが終わったあと、ヒーローちゃんが「あっ!」と何かを思い出したかのような顔をした。
「みんなのスマホとか預けるんじゃなかったでしたっけ!?」
「!!??」
ヘビゴロウ先生も「忘れてた!」という顔をしていた。
「皆さんごめんなさい!忘れてました!
今から皆さんのスマホを回収したいと思います」
「やだ!」
「キャンプが終わる間だけです。このキャンプ生活をより楽しむため、スマホから一時離れましょう。漫画なども預かります」
私は四六時中スマホをしている生活をしているので、正直イヤだった。TwitterとかInstagramとかTikTokとか見たいし・・・
しかしみんなは渋々スマホをボックスに入れていた。私だけ出さない訳にはいかない。私はスマホをボックスに預けた。
「はぁ〜〜スマホ、また会おう!」
ろいこも辛そうだった。みんなスマホに依存しているよねぇ・・・。
中にはソシャゲにハマっている人とかはめっちゃ嫌そうな顔をしてスマホを渡していた。「パ〇ドラが、FG〇が、ログインが……」とブツブツ言っていた。
3泊4日、スマホ無しで過ごすことになるとは思わなかった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
フリータイムの時間になった。
外にはサッカーコートやバスケットコートがあるのでペドロさんやろいこはそっちに行ってしまった。
「みんなーーー!サッカーやろうぜ!ボールは友達だよ!」
「うおおおお!!!三苫のドリブルぅぅ!!」
みんな元気だなあ。
「みんなバスケやろうぜ!」
「うちバスケ部だよ!」
「マジ?人集めて3on3やろうぜ」
「おけまるー」
ろいこも早速バスケ仲間を作っている。
私はどう過ごそうかな・・・
キャンプには色々揃っているみたいで、卓球台ではヒーローちゃんが烈ちゃんと打ち合っていた。
「うおお!前陣速攻ぅ!」
「ドライブ!チキータ!チョレイ!」
2人の試合には観客がいっぱい群がった。卓球ってこんな群がるんだ・・・
自分はどうやって時間を潰そうかとキャンプ場の中をうろつくと、同じグループのらんりちゃんがいた。
「らんりちゃん!」
「あ、えと、同じグループの……」
「めりいだよ」
「あっあっめりいさん、いや、先輩」
「めりいでいいよ。いま暇かな?」
「あっめりい……さん。絵を描く場所を探しているとこ……です」
「へえ、絵描けるんだ。ちょっと見せてみて」
「あっ、どうぞ……」
らんりちゃんのスケッチブックいろんな絵が描かれていた。彫刻のスケッチ、風景画、アニメのキャラクター、馬、ロボットや似顔絵……
「すごい上手いねらんりちゃん!私は美術の成績悪いから羨ましいなぁ・・・」
「えへへ、ありがとう……ございます」
「タメ口でいいよー」
コミュ障な私だが、不思議とらんりちゃんは話しやすかった。下級生だからかな。
「2人とも、なにしてるんだい?」
後ろから大柄の人が来た。キッチンワーカーの亀さんだ。
らんりちゃんはスケッチブックを自分の背中に隠した。ホントはあまり人に見せたくないんだ。
「ああ、亀さん……2人で話してたんです」
「そうなんだ。ワタシいま仕込みが終わって暇だから、少し話そうよ!」
「ええ、いいですよ」
「あう……」
3人でソファに座った。かなり座り心地がいい。
「昼食どうでした?お口に合えば良かったけど……」
「絶品でした!」「あ、美味しかった、です」
「そうかそうか!独学でやってるもんだから正直不安でね。喜んでくれたならなにより」
「え、独学なんですか!?」
「そうだよ。国のお袋が作っていた料理を参考にしたメニューもあるけどね」
「中国の?」
「そうそう。おれ天津の生まれなの」
「天津・・・」
「望海楼教堂っていう教会が有名なところだよ。キミたちも一度行ってみるといいよ、えっと」
「めりいです」「ら、らんりでひゅ!噛んじゃった」
「めりいちゃん!らんりちゃん!いい名前だね!」
亀さんはニッコリ笑った。
「でも今は中国はとても旅行に行ける状況じゃないなあ。共産主義の独裁体制が続いてるんだ」
「・・・?」
「つまり、クリスチャンは※1迫害されてるんだ」
「えっ」
私は驚いた。迫害なんて昔の話だと思っていた。
歴史の授業や礼拝でキリスト教の歴史について聞いた。皇帝ネロがペテロやパウロなど多くのクリスチャンを迫害した。
キリストを信じているはずの十字軍がイスラエルを奪還するため、自分たちの欲望のためにイスラム教徒やユダヤ教徒を虐殺した。
日本でも江戸時代は激しい迫害があった。※2長崎五島で信者が磔にされたり、逆さ吊りにされたりして多くのクリスチャンが命を落とした。
でも今は信教の自由があって、自由に宗教を信じられる。中国の国民はそんな信教の自由すら与えられていないというのだ。
「ほんとにひどい話さ。今は故郷にも帰れないね。
おふくろ、元気にしてっかな・・・・」
誰も彼も苦しい思いをしている。神さまを信じていても、辛いことはいっぱいある。どうしてだろう。神さまに泣き言を言いたくなるけれど、ヨブは神さまを恨まなかった。
「忍耐」という言葉をよぎった。神さまに祈り続けて、待ち続ければ道は開けるのかな。
「あの!わたしが亀さんの似顔絵を描きますっ」
「らんりちゃん!?」
「嬉しいね。でもどうして?」
「お母さんにプレゼントできると思うから……です」
「!!」
らんりちゃんは優しい子だ。私にはこんな事はできない。
「ありがとう、ありがとう」
亀さんはとても喜んでいた。
らんりちゃんは一生懸命絵を描いた。消しカスがいっぱい出てきたのでゴミ箱を持ってきてあげた。
1時間後、絵は完成した。
「出来ました!」
「おおっ!上手い!ありがとう、ホントは日本に留まり続けようと思ったけど、情勢が良くなったら一度天津に戻るよ。本当にありがとう。いい土産ができた」
「えへへ……いつか絵本を出すのが夢なんです」
らんりちゃんの賜物は絵描きなんだ。いいなあ、私の賜物はなんだろう?
※1迫害⋯宗教団体や民族をイジめること。悲しいことに、キリスト教の歴史では迫害もされたし迫害もしているのです。
聖書には「マタイ10:28からだを殺しても、たましいを殺せない人たちなどを恐れてはなりません。そんなものより、たましいもからだも、ともにゲヘナ(地獄)で滅ぼすことのできる方を恐れなさい」とあります。また
「マタイ5:39要約 だれかがあなたの右の頬を打つなら、左の頬をも向けなさい」とあります。
イエスさまは迫害をすることなく、また迫害を受けても屈することはありませんでした。クリスチャンに限らず、すべての人がイエス・キリストを手本に生きて欲しいですね。なかなか難しいことですが、神さまに祈って乗り越えていきたいです。
※2長崎五島列島⋯めちゃくちゃ綺麗な島です。しかしここで凄惨な迫害がありました。映画の「沈黙-サイレンス-」をぜひ見てほしいです。Amazonプライムやネットフリックスなどで見られるのでぜひ見てください。名作です。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ゴスペルの時間になった。
賛美を歌ったあと、ヘビゴロウ先生の説教がはじまる。
「みなさん、皆さんにはヒーローと呼べる人はいますか?理想のヒーローはいますか?」
「仮面ライダークウガ!」
ヒーローちゃんが元気に答えた。
「オーズ!」「ウルトララマンティガ!」「ゴジラ!」「うちの母ちゃん!」「大谷翔平!」「スーパーマン!」
みんな口々に自分のヒーロー像を上げていった。
「ほうほう、思ったより分かれましたね。
僕たちクリスチャンには何よりも強い、誰よりも大きいヒーローがいます」
「それがイエスさまです」
「イエスさまは神さまと共に天国にいました。
しかし、この世に罪があるのを見て悲しまれ、神さまによって人間としてこの世に来られました。紀元0年のことです」
イエスさまが生まれた年が歴史のターニングポイントになってるんだもんな。すごいなあ。
「人として生まれたイエスさまは、30歳になってから救世主として活動を始められました。
イエスさまはまず※①バブテスマのヨハネに※②洗礼を受けに行きました。イエスさまは神の子なので罪などなく、洗礼を受ける必要がないにも関わらずです」
「それは救世主として活動されるための下準備だったのです。その後イエスさまは荒野に行き40日の断食をし、サタン(悪魔)と問答をして退けました」
「イエスさまは何千人も弟子を集めました。各地で奇跡を行い、人々に神の教えを広めました」
「それを良く思わない人がいました。パリサイ人です。当時のイスラエルで権力者だったユダヤ教の学者たちです。『自分たちこそ正しい!』と威張りくさってました」
「イエスさまは彼らを痛烈に批判しました。
『ルカ11:42
だが、わざわいだ、パリサイ人。おまえたちはミント、うん香、あらゆる野菜の十分の一を納めているが、正義と神への愛をおろそかにしている。十分の一もおろそかにしてはいけないが、これこそしなければならないことだ』
何度も度々批判されたため、プライドをズタズタにされたパリサイ人はイエスさまを罠に掛けて殺そうと計画しました」
「イエスさまが選りすぐられた12弟子の中に、イスカリオテのユダという人がいました。彼の心にサタンが入り、彼はイエスさまを裏切り、イエスさまをユダヤ教の指導者、ローマ軍の元に(※③)売り渡しました」
「イエスさまは十字架に付けられました。今までイエスさまを支持していた人たちの一部は手のひらを返し、イエスさまを罵りました」
『救い主なら十字架から降りてみろ!』
「イエスさまは敢えて捕まったのです」
「え?なんで?」
ろいこが質問した。授業中でもろいこは忌憚なく先生に質問する子だ。
「いい質問ですね。僕たちの罪のためです」
「イエスさまは十字架で苦しみながら死に、3日後に蘇りました」
「皆さんはなにか悪いことをしたことありますか?僕は飼っていたヘビに餌をやり忘れて死なせてしまったことがあります。子供の頃でいえば、悪ガキだったのでカエルの尻にストローを入れて破裂させるなんてしょっちゅうで、万引きもしたし、親をいつも困らせました」
「ひくわー」
「僕たちの犯した罪はとても精算できるものではありません。犯罪を犯したら罰金を払ったり、刑務所に入れられたりしますが、私たちの犯した罪を精算しようとするものならば、とても懲役100年でも足りないでしょう」
「なにせ生まれた時から罪を持っているのですからね。アダムとイブが神さまになろうと善悪の知識の実を齧り、そこから全人類は生まれながらに罪人になりました」
「後で自分の罪を思い出して見てください。そしてこのキャンプで悔い改めましょう。
私たちのヒーロー、イエスさまは罪を悔い改めた人を必ず!赦してくださいます」
ヘビゴロウ先生の熱いメッセージが私の胸を打った。
※①・②バプテスマのヨハネと洗礼⋯イエスさまの従兄弟。ラクダの皮を着て荒野で伝道活動していた。「悔い改めよ!天の御国は近づいた!」と人々に洗礼を施していた。
洗礼というのは川に身を沈めて心を清める儀式。いまはクリスチャンになるための儀式だけど、この時は悔い改めの儀式だった。
※③ローマ軍の元に⋯当時イスラエルはローマ帝国の支配下にあり、イスラエル王ヘロデはローマに媚びを売っていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
私の罪を思い起こしてみる。
小さい頃に駄菓子屋のおもちゃを勝手に持っていって、お母さんにすごく怒られたっけ。
最初に呼木さんを見た時、不審者だと思って避けた。あんなにいい人だったのに。
ヨシアと喧嘩した。ヨシアのお父さんが呼木さんを悪く言ったとき、ヨシアのお父さんを私は睨んだ。お父さんには気付かれなかったけど。
親友のろいこにも悪いことをした事がある。中学の頃に喧嘩をして口を聞かなかったことだ。
そんなに悪い罪ではないのかもしれない。イエスさまは、重い罪から軽い罪まですべて背負いきるというのだろうか。
疑問がまた生まれた。
続く。
1日目を書くのに4話もかかっちゃった・・・
次からギアをひとつ上げて行きたいですねっ
神さまは「わたし(神さま)に背くこと全てが罪だ」と言われました。神さまを信じない、聖書を読まないで何か別のことを優先してしまう、聖書の神さまよりも大事なものを作ってしまう、嫌いな人を憎み続けてしまう……
クリスチャンでも罪を犯します。僕も罪を繰り返してその度に「自分って最低だ」と自己嫌悪に陥ります。
大事なのは「バカだと思われても神さまを信じきれ!」ということです。これは「笑顔でいこう!」というマンガの受け売りです。
神さまを信じきった人々が、最後に勝つのです。最後に愛が勝つ。




