⑭教会編:イジメられた人たち
月曜日、ヨシアにデボーションで教わったことを伝えに行った。
「ほーん、ヨシュアがモーセの後継者だってのは知ってたけど、そんな事がねぇ」
先週土曜日に、ペドロさんとバスケをしてボコボコにされたので落ち込んでるかと思ったが、案外ケロッとしている。立ち直りが早い。
「ん?そりゃあん時は悔しかったさ。部活でもウジウジしてたからゴリ先輩に背中叩かれてさ、部長にあそこまで激励されたら、頑張るしかねぇっしょ」
ヨシアはすごい人だ。尊敬する。
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部活後、私はろいこと一緒に帰り、公園へ向かった。
呼木さんとペドロさんが待っていた。
「Oh!メリーさん!ロイコさん!」
「2人とも来てたんですね」
「ペドロさんがキミ達に会いたいって来てくれてね」
ペドロさん、暇なんだろうか……?
「今日は仕事ないからねー」
暇ではなかった。私は心の中で謝った。
「さて今日は、イスラエル民族の話をしましょうか」
「ちょうどペドロさんとイスラエルの話をしていたんですよ」
「そうだ、なんとなく聞いてたけどイスラエル民族ってなに?」
「そもそも、イスラエルってどこにあるんですか?」
ペドロさんはおもむろに地面へ世界地図を描いた。上手い……!
「ココが日本。ココがブラジル。そしてここが、イスラエル」
ペドロさんが木の棒で指し示したのは、ある1箇所だった。地図に詳しくないから、ええと・・・
「エジプトの北ですよ。
この辺りは昔から、ヨーロッパ、中東、アジア世界と繋がる重要な場所ですね」
「イスラエルは、私の還るところでもあります」
「帰る?なんで?」
「ペドロさんはユダヤ人なんですよ」
ユダヤ人?聞き慣れない言葉だった。
「ユダヤ人っていうのは、イスラエル民族のこと
イエスさまが亡くなり※1、天に昇られてから後のこと、
イスラエルでローマに対して反乱が起こったんだ。
圧倒的なローマの前に勝てる訳もなく、彼らは世界中へ散らされていったんだ。
ディアスポラ(民族離散)だね。残酷な歴史だ」
既にろいこは眠そうだ。部活後だから無理もない。
「方方へ散らされていったイスラエルの民はやがて「ユダヤ人」と一括りで呼ばれるようになった。
ユダヤ人達は、移住した先でイジメられた。『余所者は出てけ!』とか散々詰られた」
「ひどい!!!!」
ろいこは突然大声を上げた。眠気に抗って一声。
「そうだね酷いね。けれど、ユダヤの人達はくじけながらも、聖書の教え、神さまの教えを大切に守り抜いたんだ」
「ユダヤ人は機知に富んだ人々だ。ノーベル賞の20%はユダヤ系の人たちだよ」
「すごいっ!!!」
ろいこがリアクションbotと化している・・・よほど眠いんだろうな。
「でもペドロさんってブラジルの人じゃないの?」
「祖母がユダヤ人でした。だから祖母からユダヤ人としての教育を受けてきてます」
「現在イスラエルでは、世界中のユダヤ人を集めています。※2」
「イスラエル民族が散らされて、またイスラエルへ戻っていくのは聖書でも預言※3されているんだ」
『エゼキエル書39章27-29節
わたしが彼らを国々の民の間から帰らせ、彼らの敵の地から集め、多くの国々が見ている前で、彼らのうちに私の聖なることを示すとき、彼らは、わたしが彼らの神、主であることを知ろう。
わたしは彼らを国々に引いて行ったが、また彼らを彼らの地に集め、そこにひとりも残しておかないようにするからだ。わたしは二度とわたしの顔を彼らから隠さず、わたしの霊をイスラエルの家の上に注ぐ。―神である主の御告げ―」
※1イエスさまの生涯についてはクリスマスで詳しくやりたいと思います
※2帰還法⋯イスラエルの法律により世界中のユダヤ人移民をイスラエルへ帰還させる活動が、実際に行われています。詳しくはBFPで検索して見てください!
※3預言⋯予言とは違います。預言は「神さまから預かった言葉」という意味です。イスラエルにはかつて神さまからの言葉を授かる預言者(日本でいう巫女のような役職)という人たちがいました。
預言者についてもまた詳しく解説できればと思っています。
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すごい話を聞いたような感じがする。
イスラエルなんて、今まで聞いたことも無かった。なんの馴染みも何もない国と、聖書で繋がった気がした。
またユダヤ人の話を聞いて、私はろいこと初めて会った時のことを思い出した。
小6の頃、私には友達と呼べる人はいなかった。
クラスとの関わりも希薄だった。どうにも、クラスの雰囲気に馴染めなかった。
私は放課後公園で本を読むのが趣味だった。今日読んでいるのはソクラテスの伝記だ。
本の内容はだいたい読んだら忘れてしまうが、「読む時間」が好きだから別にいい。公園で穏やかな風に当てられながら、私は本をめくる。
「や〜〜い!本の虫〜!」
耳障りな言葉が聞こえてきた。声のする方を向くと、同級生が3人、私の方へやってきた。
「お前だら?いつも公園で本を読んでるの」
「目障りなんだよね。いつも本を読んでて、根暗っぽくて」
「早くどっか転校してよ」
私は気が動転した。今までイジメの対象になったことはない。本を公園で読むようになったのはつい最近のことだ。
私は黙ってその場を立ち去ろうとした。
「ハハハ、ダッセー!」
悔しかったが、私は感情を押し殺して、その場から逃げ去ろうとした。
「恥ずかしくないんか!いいじゃんけ!」
いいじゃんけ?良くないけど。
「なに?誰?」
同級生のひとりが辺りを見渡すと、女が一人。
「いいじゃんけ!」
だから良くないって。なんなのアンタ。
「ウケるー。アンタも仲間に入りたいの?てかそれ方言?」
「アタシはろいこ!Y県から来た!」
本で読んだことがある。Y県には甲州弁という方言があるらしい。
もしや彼女は私を庇ってくれてる?
後で知ったけど、「いいじゃんけ」は「やめなよ」という意味らしい。
「へえ、Y県か〜。方言汚いよね〜笑笑」
「だらだら言ってる奴らに言われたくないずら」
「は?」
ろいこと名乗った子は、同級生の1人を張り手で倒した。
そのまま喧嘩になり、ろいこちゃんは3人相手に張り合った。
「ちくしょー!PTAに訴えてやるー!」という捨て台詞を吐き、逃げる3人。
「へへっ!おとといきやがれ!」
鼻をさするろいこちゃん。鼻血が出ていた。
「あの、これ、使う?」
私はポケットティッシュを差し出した。
「ああ、自分のあるから」とろいこちゃんは自分のポケットティッシュで鼻をかむ。
「すごいね、3人に立ち向かうなんて」
「ケンカは度胸だよ。向こう (Y県)だったら男とも喧嘩してたし」
すごい子だ。私は彼女に憧れを抱いた。
「あの、弟子にしてくれないかな?」
「弟子って……笑笑
友達なら、いいよ?」
こうして私はろいこと友達になった。
ろいこはその後私をイジめた相手とも仲良くなった。コミュ力おばけだ。私はそんなろいこを尊敬する。
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ユダヤ人の歴史を聞き終えた後、ペドロさんから提案があった。
「メリーさん。ロイコさん。教会に来ませんか?」
「えっ、教会?」
「それはいい。私に教わるよりちゃんとした牧師先生に教わるといいよ」
呼木さんはニッコリとした。
「でも、私は呼木さんに教わっている方が……」
「心配なら、私が一緒に教会を見に行きましょう」
今度はペドロさんがニッコリ笑った。
「ハレルヤ!素晴らしいことです!」
今度の日曜日に教会へ行くことになった私とろいこ。
教会って、どんな場所なんだろう?
続く。
14話目にしてやっと教会へ……次回もお楽しみに!
22/11/21ゴリの声優である梁田清之さん死去。お悔やみ申し上げます。




