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⑬教会編:負けらんねぇ

土曜日の朝7時になった。

眠いのをこらえて、公園に向かう。

ろいこは朝に弱いみたいなので置いていく。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ヨシアはバスケウェアで公園に着ていた。なにやらやる気スイッチ全開のようだ・・・・

「なあ、ペドロさんって人は土曜日も来るんだよな?」

「多分。毎朝ランニングに寄るみたいだよ」


呼木さんがやってきた。

「おはようございます。2人とも」

「おはよう、呼木さん。ペドロさんはそろそろ来るかな?」

「ほほっ、やる気に満ち満ちてますね。羨ましい限りです」

呼木さんも少し眠そうだった。昨日お巡りさんに補導されて疲れてたもんなぁ・・・


ペドロさんが向こうからやって来た。

「Ohーーーーーー!!!おはよぉーございまぁぁぁす!!!」

サンシャイン池崎みたいに元気が有り余っているペドロさん。朝からうるさいぐらいに活発だ。

「おはようございますペドロさん。今日はヨシアくんがあなたに用があるみたいですよ?」

「Ah?」

「ども、ヨシアです。バスケ部やってます」

「Humm?」


「あなたとバスケで対決がしたくて待ってました」

「Ô! (オー!)」

なんでバスケなんだろう。たしかペドロさんはサッカーが得意のはずだ。

「Bpasquetebolはブラジルの方でもやってたよ。サッカーの合間に」

「やっぱり、ペドロさんも強そうだ」

ヨシアは運動神経いい人に全員バスケ勝負を挑むようだ。以前ろいこにもバスケ勝負を挑んだことがある。

〈1点でもシュートできればなんでも1つ言うことを聞いてやる〉というご褒美みたいな勝負を挑まれたが、ろいこは終始翻弄されて、蜂の一刺しでボールを奪ってシュートしかけたけど入らなくて……

思えばあの勝負からろいこはバスケに打ち込むようになっていた。


「ルールは3点先取にしましょう」

「わかった。それでいいよ」

日本対ブラジルの対抗戦が始まった。やっぱろいこも呼んでおくんだった。今更ろいこのスマホにモーニングコールを入れて起こした。

「ひどいよめりい!」

「ごめんごめん。今度スタバでコーヒー奢るよ」

「コーヒーは苦手なのっ!」

プツッ、と通話が切れる。一目散にやってくるだろうなあ、すまん、ろいこ。


ハンデとばかりにヨシアからのボールだ。

オフェンスに長けているヨシアだが、1回後ろに退がり様子を見る。

ペドロさんの表情は真剣そのものだ。気を抜いたら一瞬でやられる。

「(クソっ……!攻める隙がない!)」

ペドロさんの身長は190はあるだろうか……ヨシアとは差がありすぎた。


「どうしました?」

「くっ!」

バトル漫画のような睨み合いが続く。

一瞬気を緩めたのか、ヨシアはボールを高くドリブルしてしまった。

刹那、ペドロさんが(ワシ)のようにボールを鷲掴み、そのまま空の彼方へフリースローでシュートしてしまった・・・・


ボールを奪われたのが受け入れられず、フリーズするヨシア。しかし直ぐに正気に戻る。

「・・・・もう一度だ!」

「É claro!(エ クラールー!/勿論!)」

ヨシアはやっぱりカッコイイ。正直に認めたくないけど。


今度もヨシアからのボールだ。今度は果敢(かかん)に攻めていくヨシア。

しかしペドロさんのブロックは堅い。まるで城壁のような堅固さを感じる。

「もう終わりじゃないですよね?」

「まだまだ!」

「(正直ゴリ先輩より強いぜこの人……!

フェイントを掛けてもすぐに対応してきたし、小手先は通用しないか……)」

今までにない強敵と対面するヨシア。


不意に(めりい)はピコーンと、アタマの豆電球が閃く。

「ダビデとゴリアテみたいだ!」

「そうですね。ダビデは巨人ゴリアテ相手に戦う話に似てますね」

「ヨシアはダビデっぽいですよね」

「けれど、ダビデは“神さまに全て委ねた”から勝てたのですよ。自分の力に頼るのは、良くないことです」

「(自分の力……!?)」

ヨシアの走馬灯が再生される。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

幼い頃、(ヨシア)は病弱だった。

そんな俺を心配してか、じいちゃんがとあるビデオを見せてくれた。

「ほれ、アメリカの強いスポーツ選手たちじゃ。

コレ見て元気出せい」

黒い肌の、見慣れない人達が、ひとつのボールを巡って走り出す。

汗が光る。あの人たちのプレイに、俺はいつしか夢中になってしまった。

「どうじゃヨシア!バスケやらんか!?」

俺のじいちゃんは神主だった。なんでじいちゃんが数あるスポーツの中からバスケを選んだか知らないが、じいちゃんがサッカーを見せていたら俺はサッカー好きになっていただろう。

でも、俺はバスケを選んだ。

じいちゃんは神社の神さま達に祈願していた。俺の体が強くなるようにって。八幡さまは武の神さまだから、きっと強くしてくれるって言ってた。


「自分の力」で強くなったんじゃない。

俺はじいちゃんのお陰で強くなれたんだ。


「じいちゃん……」

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

うっすらした意識の中でじいちゃんを思い出す。

汗と熱で体がヒートしてきた。もう肩で呼吸するほどスタミナも消耗している。

この後電車に乗って部活に向かわなきゃいけなかったが、もう後のことはどうでもいい。


「1点でも、入れてやるッ・・・!」

ヨシアは息が切れながらも勇猛果敢に攻めていった。

それはさながら戦場の兵士のようだった。


しかし、現実は残酷だった。

ペドロさんはボールをひょいと奪うと、あっさりフリースローでシュート。プロとアマのような、雲泥の差が浮き彫りになった。


「〜〜〜ッ!!」

一瞬鬼の形相になるヨシア。

その後3ゲーム目もペドロさんがゴールし、3-0。

あんなに悔しそうなヨシアを見るのは初めてだった。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

「も〜〜っ、終わってるっぽいじゃ〜ん」

ろいこがドタドタとやってきた。髪は整ってないし服はジャージとだらしのない格好だった。

「あれ?ヨシアくんは?」

「先に部活行ってるよ。元気なかったから、そっとしておいてね」

「あ───。」


ペドロさんは少し申し訳なさそうな顔をしていた。

「大人気なさすぎましたね……」

「いや、ヨシアは手を抜くと逆に許さないタイプだから。全力で相手してくれて謝謝(シェシェ)?ペドロさん」

「謝謝は中国語じゃんっ!」

ペドロさんはランニングに戻り、ろいこは部活へ向かった。


私は呼木さんとデボーション(聖書を読んて神様にお祈りすること)をした。

クリスチャンはみんな朝からこれをするらしい。

朝の読書、なんて時間が小中学校の頃にはあったが、朝に本を読むと、なんか特別感がある。

「今日はヨシュアの話をしましょう。ヨシアくんの名前の由来になったと思われる人ですね」

「呼木さん、アタシと2人きりなんだから敬語ぬきでいいよ。堅苦しくない?」

「そうですか。それじゃ敬語ぬきで」

「※1モーセからイスラエル民族を導く使命を受け継いだのが、ヨシュアだね。後継者として、最初は上手くやっていけるか不安があったんだ」

「だからこそ神さまが

『ヨシュア記 1:9わたしはあなたに命じたではないか。強くあれ。雄々しくあれ。恐れてはならない。おののいてはならない。あなたが行くところどこででも、あなたの神、主があなたとともにおられるのだから』

と、何度も強くヨシュアを励ましたんだ。

めりいちゃんは将来に不安はないかい?大丈夫、ヨシュアが励まされたように、めりいちゃん、キミの未来も神さまが導いてくださるよ」


私は胸の布をきゅっと握った。神さまが心の中に来ているような、そんな感じがした。


※1モーセ⋯名前はヘブライ語 (イスラエルの言語)で「引き上げる者」。エジプトで奴隷にされていたイスラエルの人々を解放し、神さまが約束された約束の土地、〈カナン〉まで民を導いた。

歴史的に見てもモーセは40歳頃までエジプトで将軍として働いていて、イスラエルにとっても人類史にとってもスゴい人!

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

続く。

ペドロさんのモデルはこの前RIZINフェザー級王者になったクレベル・コイケさんです。

クレベルさんは磐田在住の人です。ぜひ知って貰いたい磐田市の有名人のひとりです。


あと何話か前にW杯がどうたらとか書きましたが、ただの時事ネタです。作中現在のシーズンは6月頃なので、W杯はやってません。やっちった。

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