英雄譚の一ページ
ここは、迷宮都市《神界摩天楼》
世界に一つだけ、神秘と魔物、夢と危険に満ち溢れるダンジョンがある場所。
ダンジョンでしか採取出来ない資源が数多あり、それらを求めて各国から重要人物や商人、孤児までもがやってくる。
摩天楼と言われているが、実際は地下へと何十層も続いている。
このダンジョンに潜るためには、《召喚士》と呼ばれる役職に登録しなけばならない。
まぁ、手続費用は成人男性の平均年収5年分とバカにならないとか言ってられないくらいな方外値《そのくらい命の危険があるという意味があるとかないとか》だが、
必要な資格は特に無い。
あるとすれば魔力持ちか否かだ。
人間が魔力を持つ事は少なく、数値化すれば百人に1人らしい《両親どちらも魔力持ちでもその子に魔力があるとは限らない》。
魔力の扱い方等々はサモナー登録、管理、ダンジョン運営に携わるサモナーギルドが最初に軽く教えてもらえる。
その先は、自分で見つけるか師匠に教えを受ける、一番多いのはギルドから情報を買い取るのだ。
その情報料も法外レベルだが、ダンジョンで成功すれば、、なんとかいけるらしい。
「お待たせしました、ジーク・マルドク様、書類の審査が完了しました。
こちらがサモナー登録証となっております。名前をお確かめの後、魔力を注いでください。」
そして俺、蒼は今日サモナー登録を果たす。
受付嬢から受け取ったサモナー登録証は一言で言えば、今のサモナーランクを一目で分かるようにしたものだ。
ただし、木級だから木製、石級だから石製ではなく、魔鉄で出来たプレートにサモナーの魔力を馴染ませる事で登録されたランクの見た目に変化する。ファンタジーはエコまで活用できる。
漢字の間違い無く、先程教わった感じに魔力を体外放出、収束、注入を行う。
すると、サモナー登録証は木目のついた茶色い姿となる。
「では、パートナーとなる魔物を召喚しますので、あちらの部屋にお願いします。」
プレートの変化を見届けた受付嬢は幾何学的模様の魔法陣が敷かれてる部屋へと促す。
これがサモナーと呼ばれる所以である。
この魔法陣で魔物を召喚し、それと共にダンジョンに潜る。
その魔物にもランクはあるものの、判断が難しい。
しかし、魔物の固有スキルの有無、ステータスの数値で今後のサモナー生活はかなり違ってくる。
どのような魔物が出てくるかは、神のみぞ知る、というやつだろう。
「では、魔法陣の中央に立ち、詠唱を」
「……はいッ」
俺の顔に何かついてたのだろうか、受付嬢が少し笑う。
「大丈夫、肩の力を抜いてください、緊張しすぎると魔力の制御が難しくなりますよ?」
ただ緊張してたのが顔に出てただけのようだった。
「アハハ…そうですね、リラックスリラックス」
深呼吸をして、さぁ、いざ!!
「…『我、ジーク・マルドクの名において、古の盟約より望むは其の力、
魔力と魂を結び、共に苦楽を過ごすことをここに誓う
契約者たる我が名の下に、今一度姿を表したまえ』」
【召喚】
(レア、きてくれ!!!)
魔法が無事発動し、俺を中心として炎の嵐が吹き荒れる。
暫くして、嵐が止むと、目の前には一匹の狐がいた。
「おめでとうございます。無事召喚成功いたしました。」