追放side カムイの視点 クリムゾンドラゴンとの死闘
全く、全て最悪だぜ。
せっかく再会できたミシロに反旗を翻されるわ、女共には散々な態度を取られるわでここにきてから散々だ。
「なぁ。戦わないのか?」
「は、はぁ?不必要な戦いを避けているだけだよ。俺たちはこの方法を使って8層っていう深層までたどり着いていたんだからな」
「なるほどな。いやすまない。でかい口を叩いていた割にやけに弱腰だなと思い」
ムカつく。そういう一言余計なところが腹立つって言ってんだ。
そういうしょっぱい精神攻撃でこの俺が動揺するとでも思ってんのか。
小賢しい小賢しい。
所詮運だって運。ここまでたどり着けたのは運。
ちょっとは強いかもしれないが、そもそもお前ら4人じゃないか。
あぁそうだなんで気がつかなかったんだろ。
初めから人数まで釣り合ってねぇじゃんか。
そりゃあ勝てるって。つまりだ。
俺たちに足りなかったのは俺クラスの実力者一人だったってことだ。
この深紅の薔薇は俺にも匹敵するほどの力を一人一人が持ってやがる。生意気なことにな。
だがミシロのやつは俺より実力は大きく劣る。
AであってAではない。
何が言いたいかと言うと、仮に
深紅の薔薇≒俺という図式があるとすれば、そこから更に
深紅の薔薇>>>深紅の薔薇(メンバー単体)≒俺(超A級)>>>ソアラ、ルーナ(準超A級)>>>ミシロ(A級)という力関係に基づく図式が生まれてくるのではないか。
ミシロ自体文句なしにA級ではあるが、それはあくまでも凡人の中にいたらの話であって、ここSランク相当の難関ダンジョンにおいては役立たずの雑魚同然。
ここで活躍できるのは深紅の薔薇や俺様のような本当の実力者だけ。
深紅の薔薇は4人全員が俺様クラスなのに、黄昏の獣王団ときたら俺様クラスなのは1人だけ。ほか全部片手落ちの実力者ばかりだったからああなってしまったのだ。
それが決して悪いとは言わないが、少なくともこんな超難関ダンジョンにおいては無理ゲー極まりない事態だったのだ。
いや、むしろ俺だったからここまでこれたのだ。
他の連中にこんな実力足らずのものたちであそこまで進めるわけがない。
そうかそうか。俺はスカウトする相手を間違えたのだ。
やれやれ。無能をキャリーしながら格上のクエストに挑戦するなんてそもそも無謀な話だったのだ。
俺に足りなかったのは実力ではない、強力な仲間だ。
クエストが終わったらすぐさま俺たちをAランクに戻してもらい、また仲間を集めて返り咲こう。ようやく道が見えてきたぜ。
俺様の華麗な敵に見つからない戦法でじわじわと進んでいくこと第6層。
まさかの巨大モンスターとの戦闘が始まってしまい、これ以上隠れるのが不可能になってしまった。
「く、くそ!」
「できるんでしょ?さ、やってみなさいよ」
せっかく俺様が正しい結論を導き出したというのに、こいつらは静観決め込むつもりでいやがる。
「あんたたちなんかに頼らなくてもあたしらでなんとかできるわよね!カムイ様」
「そうですわ。私たちはそうやってずっと戦ってきたんですもの」
「あ、ああ……」
違う。今の俺に必要なのはお前たちではない。
アンルシアたちのような戦える屈強な仲間たちだ。
こいつらといくら頑張っても先がない。
巨大モンスターグロンジオは蛇と鰐を合わせたようなごつい肉体をもちながらふわふわと空に浮かぶ怪物だ。
あの馬鹿でかい顎で噛み砕かれたらどうなるかわかったもんじゃない。
どうする。適当に戦うフリでもして逃げるか。
いやそれだとまたあいつらにピーチクパーチク喚かれるしな……。
「よし俺が切る。ソアラは魔法で攻撃するんだ」
「おっけー【上級火炎】!!」
ソアラから放たれた火球がグロンジオの目玉を焼いた。
視界を半分断たれた大物が空中で暴れ回りながら尻尾を壁に叩きつける。
「こっちだ化け物!」
誘き寄せた俺が剣で奴の鱗を弾いていく。
作戦は決まった。あいつらの元にまでこの怪物を飛ばしていく。
そうすればあいつらも反撃せざるを得ないだろう。
今は手柄を立ててやる。こいつらだけではこの化け物に敵いそうもないからな。
罵倒も侮辱も好きなだけするがいい。
それにこいつらが8層以降で泣きを見ることになればそれはそれで美味しい。
まさに一石二鳥の作戦。どうよこれ。
「危ない!」
剣を取ったアンルシアの前に乗り出したのは新生ミシロだった。
彼女は鋭く変化した龍の爪を化け物に突き立てると、顔から順番に引き裂いていった。
「えっ?」
身体を真っ二つにされたグロンジオは溶けるように地面に沈んでいった。
「おおお」
「やるじゃんミシロちゃん!」
「え、えへへ……やりました」
ミシロは深紅の乙女どもに囲まれてきゃっきゃうふふしてやがった。
ちょっと待て。
グロンジオの体表はそんな軽々とスライスできる代物ではないぞ。
現に俺の剣でも弾くのがやっとだったというのに……。
「ふ、ふん。まあよくやったと認めてやろう。俺が戦うまでもなかったということだな」
「はぁ?何言ってんのあんた。よくやったのはミシロちゃんだから。この子がいなかったら終わってたのあんたらだから」
「なんですって!」
「まぁ落ち着けソアラ。言わせておけ、どうせすぐに地獄を見ることになる」
ふん。ご都合主義的展開で龍に転生したからって調子に乗りやがって。
大体そんなすごい力に恵まれたのも俺が囮役を命じてやったからだというのに。
俺としては絶対嫌だが、もしあの場面で俺が捨て身の犠牲を買っていれば今頃龍になっていたのはこの俺だったかもしれないのだぞ。
偶然とはいえ、力を手に入れた人間というのはこうも他人に対して傲慢になれるものなのか。おおこわいこわい。
その鼻っぱしらをまとめてへし折ってやる。
とかなんとかしてるとようやくその問題の第8層まで到着した。
俺たちがたどり着けた最高到達地点がここだ。
あの忌々しい龍さえいなければ最下層までいけたというのに。
もちろん今回もご丁寧にその龍ことクリムゾンドラゴンは下層への入り口を塞ぐようにして鎮座してやがった。
「随分と時間がかかったな」
「仕方ないんじゃなーい?誰かさんが戦いは避けるものだっとか言ってほんと一歩一歩ゆっくり〜な単位で歩いてたんだから」
「全くね。動かなきゃそりゃ殺られないでしょーけど。魔除け魔法とか使えないのかしらね」
「やめたげなよぉ〜だってぇ魔除け魔法って自分より弱い魔物しか避けられないんだよ?そんなやつこのダンジョンにいないって〜」
「あっごめんごめん配慮できなくて」
はいはい。好きなだけほざいてろ女ども!
全てはこの一戦で決まるんだからな!
《汝らに問おう。汝らは資格者であるか》
「前にも言ったわ。いい加減覚えとけ!どうせ戦うんだろうが!」
《いい度胸だ。さぁ証明してみせろ》
ようやくここまできたぜ。
再会すること実にえー何日だ?
まぁいい。数年くらい待った気がするぜ。
俺はまず何もしない。
何かするだけ無駄なのだ。魔法無効空間に強制吹き飛ばし。
それにてジ・エンドだ。
他の誰が相手であろうと変わらない。
打ちのめされるがいい……!
「【神聖領域】」
アンルシアが光の魔法陣を展開させると、番人クリムゾンドラゴンは一瞬怯んだ。
その隙にと深紅の乙女どもが氷魔法と炎魔法を合成させ、アンルシアが剣にそれらを纏わせて龍の鱗を引き裂いた。
《ぐおおおっ!》
あ、あれ?
こんな展開シナリオにないぞ?
ていうかなに手を抜いてんだドラゴン。
さっさとその例の【魔法無効空間】〜とやらを使え。
しかしドラゴンの反撃さえ間に合わず、いつの間にかかけられていた補助魔法によって乙女たちの怒涛の高速連撃が炸裂していき、あっという間にドラゴンを地に伏せさせた。
《よ、よくぞやった……汝らは強い……この先を通る資格ありだ》
そうしてあれほど強かったドラゴンは、全ての役目を果たしたかのように満足げな顔で消滅していった。
「ふぅ。なかなか強敵だったな」
「ですね。まぁ足止めにはなりませんでしたけど」
「当たり前じゃんか。だってまだ8層しかいってないんだよ?14層まであるのにこんなところで大ボスが出てくるわけないじゃん」
「それもそうね」
な、何がどうなってんだ……。
そういえば、ここまで来る途中俺たちはあの変な息苦しい威圧感を感じていたと言うのに、こいつらにはそれがまるで見受けられない。
と、そこまで考えたところで俺にある一つの可能性が浮かび上がってくる。
まさかこいつら……最初からグルだったのか?
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