追放side カムイの視点 ブーメラン
ここからまたまた少しだけ
みんな大好きカムイの視点で物語が進みます。
チャオみんな。俺様はカムイ。
超Aランクパーティー『黄昏の獣王団』の団長にして全Aランカーたちの頂点に君臨するトップ・オブ・トップの……
「何さっきから一人でブツブツ言ってんの?キモっ!」
ぶちっ。
こうして俺様のありがた〜い偉大なる話を遮るブス女は、不覚にも俺たちと一緒に最難関ダンジョン『古龍の洞窟』に挑戦するAランクパーティー『深紅の薔薇』所属のクラリスだ。
金髪、カール頭、薔薇の髪飾り、貧乳でメスガキ。
というのもこいつはチーム最年少の16歳なのだ。
世間知らずでけつの青いガキの分際で年配者で、なおかつ腕前も上であるところの俺様に対してもこの舐め腐ったような態度だ。
いつもなら軽く『お仕置き』と称してエッチな目に遭わせて黙らせてやれるところなんだが、今はまだしない。
何せこいつらは俺に向かって「こんなダンジョンまじチョロいんですけど〜苦戦するなんてありえなーいきゃははは!」などと抜かして煽ってきた連中だ。
そいつらの言葉がひっくり返る瞬間なんて、自分たちが追い詰められたときだけだ。
ここはかなりモンスターが強い。
Aランクパーティーの中でも最強であり、しかもあのお荷物を追い出して完全に死角のなくなった言うならば黄昏の獣王団・究極体にもなる強さにまで昇華した俺たちをしてまるで歯が立たないほどだ。
幸い今のところこいつらには襲いかかってきていないが、じきにわかる。
こいつらがでかい口を叩いてプロであるところの俺たちを、自身の足りない知識で知ったかしてみくびっていたことを。
やれすぐに「魔法がきかなぁい〜カムイ様助けてぇ」となるはずだ。
ふふふ。早くエンカウントしろよ。
そんでもってこいつらに地獄を拝ませてやれ。
「しかしなかなかモンスター出てこねえなあ〜やはりこの俺様に恐れをなして逃げていったか……ふっ」
「はぁ?何バカな事言ってんの?頭大丈夫?」
「あのなぁ……さっきから黙って聞いてりゃ随分な物言いじゃねーか?!俺たちを誰だと思ってそんな口の利き方してんだ?俺たちはな――」
「〝元〟AランクパーティーだったCランクパーティーのカムイとその仲間たち。はい反論は?」
「くっ……んなもんねぇよ……!」
全く。ちょっとでも何かあるとすぐそうやって難癖というかやっかみをつけてきやがる。
いくら俺たちがランクだけ落ちようと、肝心のその強さは変わらないというのに。どいつもこいつも鬼の首とったかのような言動してきやがる。
「私らここくる前に余計なモンスターと戦闘しないように【魔除け】の魔法使ってきてんの。それくらい常識でしょ?」
なるほど。それで魔物という魔物が俺たちの時と違って、一切出てこなかったわけだ。
しかし。そんな不正は許されない。
「それじゃあお前たちが8層以降辿り着いても認められねぇなぁ〜?俺たちは命がけで連中とくんずぼぐれつの死闘を経験しての『第8層攻略』だぜ??」
「じゃ、どうすればいいってわけ?」
「簡単さ。今から手頃なドラゴンとか魔物と戦ってみろ。そしたら認めてやるぞ」
「はあ??」
「なんだ?それとも戦える力が無いからそんな魔除けなんてクソザコ魔法使ってんのか?はいはい弱者乙乙。小細工しても無駄だから隠せてないから」
「ねーちょっとこいつマジでキモいんだけどアンルシア!無理無理マジで意味がわかんない」
「……仕方ない。お望み通りにしてやろう。後に尾を引いても面倒だ」
「ふふふ。相変わらずお前だけは話がわかるやつだなアンルシア。なんなら俺のパーティーの4人目にこないか??」
しかしアンルシアの奴は俺様の勧誘をガン無視して解呪魔法を使って魔除けの魔法を解いていた。
そういうそっけない態度するかなぁ〜?
一言でもいいから何か返事でもしておけよ。
そんなだからお前はいつまで経ってもいい歳して独身で女としかパーティー組めねぇんだよ。
まあいい。すぐにこいつらの鼻っ柱はへし折られる。
やがて遠方からそれまでは影も形もなかったいつものメタルゴブリンのおっさん(45体)と、先日迷惑かけてくれた汚れ物のマッドドラゴン(1体)と、メタルスライム(5体)が怒涛の勢いでやってきやがった。
「キタキタキターっ!はいきましたっ!」
古龍の洞窟最大の特徴。それはとんでもない硬さを持ったメタル化モンスターと呪文も物理もロクに通らないドラゴン族が数の暴力で押し寄せてくるところにある。
しかも倒すのに手間取れば取るほどこいつらはどんどん数を増やしていき、やがてジリ貧に追い込まれてしまうというわけだ。
こんなもの初見で、しかも魔法使い統一パのこいつらが敵うわけがない。ほれほれとっととそのデカ過ぎる帽子地面に擦り付けてプリケツこっちに向けて土下座の準備しとけ〜?
「【水魔法】――【水竜波紋】」
クラリスが魔法陣を展開させて直後、そこから生み出された水の竜が周囲に円形の波動を解き放ち、水から生まれた刃によってゴブリンどもの肉が切り裂かれていった。
「……へっ??」
予想と大きく異なる世界を目撃し、こんな変な裏声をあげてしまう。
「【召喚魔法】――【漆黒の巨人】」
そしてリーダー・アンルシアによって呼び出された筋骨隆々の魔神――バハムートは残ったメタルモンスターの群れをその拳でひたすら殴り砕いていき、最後に泥まみれのドラゴンの首を跳ね飛ばし、周囲に血をドバーッと撒き散らせた。
もうダンジョン中、死骸まみれや。
「さっ、これで満足?」
一連の戦闘行動を終え、彼女は再び魔除けの魔法を発動させた。
……そもそも冷静になって考えてみれば、魔除けの魔法だって本来は術者より『弱い』魔物を避けるために使うお守りだ。
術者より『強い』魔物にはなんのこけおどしにもならず、普通に突破されて終わってしまう。
ということは彼女たちの強さが、そのままこのダンジョンの猛者どもを上回っているということに……。
「い、いやいやいや。いくらなんでもそんな事あり得ないから。無理だから……」
しょ、所詮第一層付近だから調子に乗れているだけだ……。
第二層までは超えられま……
「第三層といっても全然大した事ないわね」
「そうね。こんなところで足止め食らうパーティーなんているのかしら?ねぇ?」
しきりにこいつらは俺たちを見てにやにやと薄汚い笑いを浮かべてきやがった。
う、嘘だろ……!
俺たちがあんなに苦戦して隠れてまで進んだ二層よりも先を、これほどあっさりと踏破してしまうなんて。
中には魔除けの魔法が効かないモンスターも襲ってきたが、こいつらは先ほどの光景と同じく淡々と流れ作業のように返り討ちにしていった。
「で?アンタ確か言ったわよね。『お前らだけじゃ絶対に2層まで辿り着けない』って。自分たちだからこそ8層まで進めたんだってさ。えらっそーに」
「はて?そんな事言ったか?」
するとマリーは杖を洞窟の天井に向けると、そこには他ならぬ俺の姿が映り込んでいた。
『はぁ?!お前自分が何言ってるのかわかってんのか!?あそこはお前みたいな並の人間が到底太刀打ちできないような化け物の巣窟なんだぞ!?お前らだけじゃ絶対に2層まで辿り着けないね。俺たちだからこそ8層までいけたんであって』
そこまで過去の俺が言ったあたりで杖の光は消え、マリーはドヤ顔で立ち尽くしていた。
「はい。……まさか捏造ダーとか犯罪ダーとか罠ダーなんて言わないわよね??良い大人なんだから自分の言葉には自分で責任をとりまちょうねぇ〜」
「く……ぐぐぐくそぉ!」
あまりの悔しさにそこを動くことができない。
なんなんだこいつら。なんなんだ。
それがここまで一緒に来てやった同業者に対する態度なのか。
Cに落ちた途端、手のひらを返した上にこのように露骨な態度の違い。
これは差別といってもいいんじゃないだろうか。
自分たちが強者だと錯覚している連中は本当に恐ろしい。
強過ぎる故に自分の行動が誰かを傷つけているのだとまるで理解していない。
だ、だが涼しい顔をしていられるのも今のうちだ……!
8層にはお前たちがまだ見ぬ、途方もない強敵が潜んでいる上道中にはまだまだ強敵が冒険者を求めてゴロゴロ蠢いているんだ。
その時こそが本当の終わりだ……!!
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