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切り札

 う、嘘だ。だってさっき完璧に封印されたはず。

 封印系が効果的面なのは魔王の時から周知の事実だ。

 そして今回施した封印はその時の5000倍もするのだ。

 向こう10年はおろか――そのままずっと封印されていてもおかしくないはず。


「ね?フラグ建てるとロクなことねーんだってほんとにもう。なんなの?フリか?フリなのか?」


 もうほとんど身が残らないほどぐちゃぐちゃになりながらも、未だ彼女は流暢に喋り続けていた。

 不死身たる彼女はすぐに自らの肉体を再生させて王の前に参上した。


「女……さっきから妙だと思っていたが、貴様不死身か」


「あったりぃー!!……つーことは分かるな?殴る蹴るであたしと決着をつけるのはほぼ不可能ってこった。さぁそれでもやりますか?あたしはコンティニューしてでも大歓迎でございますよ」


「ならば貴様が死ぬまで殴り続けるだけだ」


 満面の笑みを浮かべた暴君によって蘇ったばかりの彼女の半身は砕かれた。


「はい残機(ライフ)マイナス1」


 再生する端から次々と王の一撃を受けて、砕け散るのと再生するのをひたすら繰り返していた。


 たしかにこれでは永遠に決着なんてつかない。

 もちろん彼女も反撃を試みるのだが、アルリムもアルリムで桁違いに硬くタフなのでまともなダメージが入らない。


 両者一進一退の目まぐるしい攻防が続いていた。


 決着のつきそうにない勝負――それに対しても裸の王様は笑顔で殴り続けていた。


 自分の知らない世界を楽しんでいるかのように。


 二人の世界に入り込める隙間がない。

 援護する暇さえ無い――。


 今僕たちはどうすれば良い。

 このまま逃げてしまえればみんなの安全は確保できるが、目の前で戦っている人間がいるというのに、それはあまりにも虫が良すぎる。


 かといて下手に手を出せるものなのか。

 今不死身である彼女だからこそ怪物たる王相手にもそこそこの善戦をしているが、生命一個の普通の人間に過ぎない僕などが何かできるだろうか。


 しかしそうこうしているうちにどうやら均衡が崩れ始めてきたようで、次第にギルドマスターの攻撃が王に届き得るようになっていった。

 反対に王はかなり体力を消耗しているようで、砕く力も徐々に弱くなっていっていった。


「小賢しい真似を……」


「にゃははは!あたしら凡人が気高い王様に一矢報いるには小細工もやむを得ないでしょーよ!!」


 どうやら悪戯好きのクラウスさんは自身の肉体にも何かを仕込んでいたようで、王は殴りつける度に力を失っているみたいだった。


 そうでなくとも無尽蔵に復活してくるゾンビみたいな人間が相手なのだ。精神的にも肉体的にも削られていって当然であろう。


「まよくやったよ王様。なんせ9999回もあたしをぶっ殺してくれたんだからさ。10000回しか死ねないゲームだったら今頃あんたのリーチだよ」


「ほぅ。ではそうさせてもらおうか」


 王は左手を突き出して新たに能力を発動させた。


「【裸の王様(オーバーロード)】――【王の遊戯(キングス・ゲーム)】」


 世界が一気に歪んでいったが、クラウスさん――そして僕たちの身体にはなんの変化も起きていなかった。

 どうやら景色だけがねじくれ曲ってしまっているようだが……。


「世界最古の王の名において命ずる――【ルール追加】、【対象:余と相対するもの全て】。【ルール内容:生命は一人10000まで】」


 王がそう宣言した瞬間、ねじ曲がった世界が元に戻っていき、再び戦いが始まった。


 残っていた力で王がクラウスさんの右腕を握りしめて引きちぎると、無くなった腕はそのまま生えてこなかった。


「ありゃ?」


「言ったであろうそうさせてもらうと。女、貴様の生命は残り一つ。もう貴様は不死身でも何でもない。故に再生もできない。これからはそのかけがえのない尊き生命を大切にするんだな」


「そんな……クラウスさんの不死身を無理やり書き換えるなんて……そんなこと……!」


「世界の法則を変えられるのは余だ。何故なら余こそが世界と等しい王だからだ。そして貴様の命が一つしか無くなった今――余は更なるハメ技で貴様を殺す。【王の箱庭(キングダム)】」


 まずい――またあの時を止めてくるやつだ!

 意識を極限まで強く保ってみたが、やはり動けなくなってその場で固まってしまった。

 しかし今回だけは微妙に動けたので、なんとか横を向いて彼らの戦いを見守ることができた。


「……見ろ下民よ。いと強きこの女であっても余の止めた時を認識することはできないらしい。お前と余だけが大なり小なりもこの世界に関与できる存在であるらしいな」


 残念だ――

 と言いながら彼は何度も何度もクラウスさんの肉体を殴りつけた。

 防御も回避もできない一撃をあのラッシュで受けたのだ。

 更にご自慢の不死身の能力まで禁止されてしまった。

 これで彼女が生き残れる確率は万に一つも無くなってしまった。


 気の済むまでクラウスさんを殴り飛ばした後、また止まった時の中で王がこちらに危害を加えてきた。


「この女以外にも何か切り札を隠し持っていそうだな。だがそうはさせんぞ下民よ――いや、下民に似つかわしくない硬度を誇る化け物め。お前に何かされる前に賢い余は一手打っておくことにしよう。この女と共に消えるが良い」


 僕の方にも王の拳による連続攻撃が炸裂し、いよいよ僕もこの世の終わりを覚悟した。

 時間停止が解除された後僕とクラウスさんが殴り飛ばされ、クラウスさんの方は残る命を全て使い切ってしまったため、真っ白な灰になって消えてしまった。


「そ、そんな……よくも、よくもクラウスさんを……!」


「何を悲しむ必要がある下民よ。所詮そいつは捨て駒に過ぎんのだぞ」


「黙れ……!人の命を好き放題弄ぶ下衆野郎め!!僕はお前を許さないぞ!」


「これは傑作だな。下民に王が許しを乞う必要があるか?いや逆に問おう。お前如きにこの王を許す資格があるとでも思っているのか?」


 暴君は怒りを露わにしながら天空から剣や武器などを出現させた。


「思い上がるなよ、愚かなる下等種が――【王の宴(パレード)剣園の舞(ソーディアン)】」


 降り注ぐ剣の雨霰が、避けようと動く僕の肉体を貫いていく。

 これらも防御を貫通する性能を持っているらしい。


 だが、それでも戦うつもりで来た。

 クラウスさんの死を無駄にするわけにはいかない。

 彼女のおかげで今あいつは体力がほとんど残っていないはず。


 ありったけの魔力を全てこの一撃に込める――!


「【究極魔法】――【隕石(メテオ)】」

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