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王との遭遇

「どうしてギルドマスターさんはあんなに焦っていたんでしょうか」


「ああ。ヤリの森なんて本当野うさぎや小さなイモリがいる程度で目立った危険性なんて無いのだがな……」


「まあその辺は『行けば分かる』みたいな人だからねあの人は……」


「ところでロシュア様、クラウスさんとはどこで出会ったんですか?」


「えっ、あ、そのお風呂場に突然現れてね……」


 あの人の神出鬼没ぶりは割とどうにもならないところがある。

 ターシャさんがさっきからじっと僕の方を見つめてくるけどなんだろうか。


「まさかお二人裸で過ごしたんですか!?」


「え、いやうん……まあお風呂だし」


「いけませんよロシュア様!!仲間以外の人間の!それも女性の裸を見るなんて!!」


「み、見てません見てません!神に誓って見てません!」


「ほんとぉーに?」


「ほ、本当ですよ……」


 ちらっとは見たかもしれないが、不可抗力の域を出ることはない。

 それでもターシャさんがジト目で見つめてくるから冷や汗が止まらない。


「まぁいいです。信じましょう」


「ほっ……」


 なんか悪いことしていないのに焦ってしまう。

 する機会なんてまずないと思うけど、彼女の前で浮気とか絶対できなさそう。

 浮気相手ごと八つ裂きにされてしまいそうな雰囲気だ。


「みなさーんヤリの森に到着しましたーっ」


「ご苦労様シロニアちゃん」


 ひとっ走りであっという間に着いてしまった。

 ヤリの森はとても穏やかな雰囲気に包まれた静寂な森だ。

 森とはいっても、面積は小さく真ん中には綺麗な泉がある。

 泉だけで森全体の3分の1ほどあるので、数ある森の中でもかなり小さい。


 やはりというか、特に目立つような物はなかった。


「いいところですね〜。のんびり休むにはぴったりです」


「相変わらず平和そのものだなこの森は……」


「リーネさんは来たことあるの?」


「ああ。といっても10年くらい前だが……あれからちっとも変わってないな」


 確かにエルフさんがひょっこり居てもなんらおかしくない雰囲気だ。

 木陰から差し込む日差しが泉の水面に反射してキラキラと輝いている。

 とりあえず調査なのでこの泉も詳しく調べてみるか。


「【感知魔法】」


 周囲や泉の底まで探ってみたが、目立った生物の反応は感じ取れなかった。

 ごく小さなものは魚やウサギのだった。

 うーん。これでは調査のし様がないなあ。


「まぁ一応周りも調べてみよう。私たちはあっちを探すから、ロシュアは泉の周辺でも回ってみてくれ」


「うん」


 何もないとは思うけど。


 なんて思って歩いていたら人のようなものがうつ伏せで横たわっているのを確認した。

 しかも息をしている様子がない。まさか、死体か?


「だ、大丈夫ですか!?」


 よくみると筋肉質な男性そうで、衣服を身につけていなかった。

 よくよく全裸に縁がある僕だが、もしかしたら追い剥ぎにあったのかもしれない。

 さっと背中に触れてみるとまだ温もりがある。

 どうやら死んではいないようだ。


 揺らして反応がないかを確かめてみた。

 すると突然男は勢いよく起き上がって立った。


「あ、あの……」


「ははは!!偉大なる余が偉大なる自然と一体化しようと試みたところ、うっかり眠りについてしまったようだーっ!!ははは!」


 いきなり立ち上がってこんな事を大声で言われたら誰だって硬直してしまうと思う。

 その男は下半身に頼りなさげについている葉っぱ一枚を除いては本当に何も身につけていなかった。

 とりあえず何事もないようでなによりだったが、起き上がってからの方が問題そうであり、聞きたいことが山ほどある。


 ということはこの人はここまでその格好でやってきたということだろうか。

 い、いやぁよく憲兵さんのご厄介にならなかったものだ。

 それとも何かに巻き込まれてこうなってしまったのだろうか。


「あ、あの大丈夫ですか……?これ水ですけど」


 さっと全裸の男に持っていた水筒を差し出してみる。

 男は首だけすごい勢いでこちらに向いてきた。怖っ。


「むむ。そこの下民は余に水を献上しているのか?」


「え、ええはい……」


「ははははは!下民ながら余を王とみて即座に貢ぎ物を渡してきたか!なかなかいい心がけだ!尤もこの世界の万物は全て余の所有物であるので、持ち主に返すというのは当たり前のことだが、どうもそれを理解できておらぬ輩の多い事!人としての義務を果たしておるという点でお前は余と話すに値するぞ。光栄に思え」


「は、はぁ……」


 やばい。この人なんかやばい人だ。

 関わったら色々大変なことになりそうなタイプだ。

 それにしても全裸ですごいまくしたてるなこの人。

 羞恥心とかそういうものはないんだろうか。

 しかし気になるのはさっきサーチで探した時は引っかからなかったことだ。

 普通どんな人間でも多少なりに生体反応を放っているはずなので、それが小魚やウサギに劣ることなんて普通ならありえない。

 余程生命力が弱いのか……と思いきやこんなにもお元気でいらっしゃることだし……。


「どうしたんですかーロシュア様……ってきゃあああ!!なにその人!!裸じゃないですか!」


 そう言いながらもターシャさんは指の隙間からチラチラと彼の肉体を見つめていた。

 よく鍛えてありそうだし、同じ男としても尊敬できるほどの肉体だ。

 これほどの肉体はカムイの時以来だ。


「あーこの人は……そこで倒れて……いや寝てた人」


「ほう。下民、それはお前のつがいか?複数連れておるようだな」


「つ、つがいって……彼女たちは僕のパーティーメンバーです」


「パーティー?臣下のことか?」


「んーまあ仲間であり、同志です」


「なるほど。中々いい女たちだ。余が見るに値する女は久しぶりであるぞ。よくぞここまで極上の品を揃えた。褒めて遣わす」


「……別にあなたのために揃えたわけじゃないんですけど……ってどうしたのジャーク」


 元魔王様だけは裸の男を見つめてガクガクと震えていた。

 顔面は蒼白になり、額からは汗を吹き出している。

 どう見ても普通の反応ではない。


「な、……なぜあいつがここに……!」


「何か知ってるの?」


「あ、あいつは……あいつはアルリム……世界最古の王にして、ボクを封印した人間代表だった男だ!」


「えっ!?」


 それはつまり、目の前の男が魔王封印に使われた英雄であったということだ。

 こ、この人が……?

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