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お風呂タイム②

「お背中流しますね〜」


「や、やめてよ。自分でやるから」


「うふふ照れちゃって〜可愛い♡」


 僕は彼女の気の向くままなすがままに背中を洗い流されてしまった。

 し、しかもあろうことか身体を密着させて……!

 石鹸の泡で塗りたくられた彼女の身体がタオルのように僕の背中に擦れ、這われていく。

 むちむちと餅のように柔らかい塊が触れ、ヌルヌルの泡が絡み付いてますます擦り合わせやすくなってしまっている。


 こ、このままでは危険だ。

 早く離れて心臓を落ち着かせないと……。


「どうしたロシュア。具合でも悪いのか?」


「はひっ!!リーネさんまでっ……」


 いきなり今度は目の前にリーネさんの身体が……!

 とうとう前を向くこともできず目を瞑っていると、彼女は正面から僕の頭に手を触れていた。洗ってくれているみたいだ。

 わしゃわしゃと彼女のきめ細かい指が頭皮をなぞっていく。

 そ、そうだよ。彼女たちがやっていることは飽くまでも洗浄。

 何もそういう気分になる必要はない。

 それこそ子供が親とお風呂に入るみたいな感覚でいればいい。

 変に緊張したり意識する必要なんてないんだ。


 しかし頭に泡がついているせいで、普通に目を開けて前を見ることができない。

 さっきまで触れていたはずのものが突然消え、また目の前が真っ暗なこともあって僕は激しく焦った。


「な、なんだ……みんなどこにいるんだ?」


 むにゅっ。

 わけもわからず手当たり次第動いていると、目の前に何やら良い匂いのするふかふかとした肌が……


「ってうわあああっ!す、すみませんリーネさ――て痛い痛い目が痛い!!」


 何事かと思ってうっかり目を開けてしまったら、全ての泡などが目に流れ込んできた。痛い痛い。


「なんだキミも胸に顔を挟まれたいというタイプの人間か?ほれほれーだったら好きなだけ挟まれるが良い」


「むぎゅううううぐぐぐ」


「あっ、こら!何してんのよ!ロシュア様〜そんな大安売りの汚らわしいおっぱいよりも、まだ誰にも触れられたことのない純潔で高尚なおっぱいに挟まれてみるのはいかがですかぁ?」


「ど、どっちもダメだよ……!」


 早く脱出したいのに泡で滑ってうまくいかない。


「ねえねえお前。シロニアが言ってたけど、これでどうやって頭や身体を洗うの?」


「えっ?あ、ごめんごめん。分かる範囲ですぐに教えるね」


 まずは泡を立ててからタオルを濡らす。

 そしてそれで身体を擦って赤を落とせば完了だ。

 特に何も難しいことはない。


「泡がいっぱい……!綺麗……!」


「では誠に不躾なお願いではございますが、マスター。どうかこの私めを洗ってはいただけないでしょうか」


「あ、うんわかったよシロニア」


 彼女の馬であった時の生活状況は最悪だった。

 ろくにお風呂にも入れてもらえず、手入れもされずと良いところなしだったのだ。

 精一杯彼女に綺麗で気持ちのいい思いをさせてあげなくては。


「うおおお。なんかいい感じですよマスター!」


「さっぱりしたね」


 馬の毛皮なんてどうやって洗うのが正解かよくわからなかったが、綺麗になったならよかった。

 ぶるぶると濡れた髪の水気を吹き飛ばすと、彼女は僕にこう言った。


「ではマスター!お体の方も!」


「あ、ああ……う、うん」


 やはりそこもいるのか。

 しかし彼女の肉体は人間の女の子そのものであり、触るのは色々と倫理観とかあれやこれがうんたらかんたらしそうで怖かったが、逃げるわけにもいかずそのまま腹を決めてシロニアさんをくまなく洗っていった。


 流石に胸の付近とか大事な場所は全て本人に洗わせたいけどね。

 お湯をかけ流すとまあ当然彼女も素っ裸なので、全力で目を背けたが。


「今度の湯は広いからリーネさんも一緒に入れますよ。まあ旦那様の隣にいられるのはぜーんぶ正妻ただ一人だけよ」


「まだ生きてたんだ……そんな設定」


「好きにしたまえ。私は〝火傷〟しない程度に湯浴みしていくよ。ここにいたら〝熱くて〟敵わないかもしれないからな」


「リーネさんまで……」


 その後リーネさんは風呂から上がり、サラも魔王様も――そしてシロニアさえも居ない状態になってしまった。


「二人きりに……なれましたね♡」


「ひいい」


 何をされるかわからない。貞操の危機を感じる。

 しかし彼女はそんな思わせぶりな態度とは裏腹に、なにやら真面目な話がしたかったようだ。


 ここへきて大勢の仲間が増え、さらに様々な出来事があった事を二人で仲良く語り合っていた。


「ほんとすごいですよね。ロシュア様についていったからこそ、ここまで色んなことを乗り越えられた……少なくとも私はそう思っています」


「そうかなあ」


 まあここ最近になってから楽しい事だらけなのは認める。

 前まで気がつかなかったいろんなところにも気が回るようになる。


「ロシュア様……不束者の私ですが、これからも一緒に冒険していきましょうね」


「うん。こちらこそだよターシャさん」


 体からは極力目を逸らしつつ、僕は彼女の手を握った。

 ふと聖女様の顔を見ると息が荒く真っ赤になっており、なにやら情感たっぷりなお顔と目つきでこちらを見つめていた。


 こ、この雰囲気はやばいのでは……?


「ロシュア様!今ならお互い裸ですし何やってもいいですよね!?」


「よせ!落ち着け!考えるんだ!!」


 しかし力を込めて振り解いて逃げようとする僕にも、タガの外れた聖女様はさらにその上をいく怪力で僕を押さえつけ、とうとう逃げられなくなってしまった。


「さぁ覚悟してくださいね……♡」


「ひ、ひいい」


 なんかターシャさんが怖い。

 可愛い女性というより、牙を持って血に飢えた野獣みたいな姿に見えるんだもの。


 身の危険を感じた僕はなんとか【転移魔法】を使って風呂場から逃げ出し、服を着替えて自室に隠れ込んだ。


 ふう……。熱かった身体が夜風に当たって気持ちいい。

 冷や汗もすーっと引いてきたぞ。

 もうこのまま寝てしまうか……。


「おやすみ。また明日……」

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