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クエストクリアと衝撃の再会

「着きましたよーっ皆さん!!王都でーす!」


「おお、おお……なんだあっという間に着いてしまったな。いやすごいなお前さんの馬は」


「えへへ。シロニアはみんなに認められた名馬なのですよっ!」


「しかしまさか本当にこんなに大きなコアを積んで行きと帰りで変わらない時間を叩き出すとは……すごいぞーシロニア」


「もっと撫でてほしいですっ」


 僕も正直驚いた。

 というか行きより若干早いかもしれない。

 コアをまた【浮遊魔法(フロート)】で浮かせて抱え、ギルドの入り口へ入っていく。


「ロシュア様!手伝いますよ!!……って重!!な、なんですかこれ」


「ああいいんだよターシャさん。別に助けがいらないわけじゃなくてさ、これ本当に重いから」


「まぁあんなに大きなワームのコアだからな。ロシュア以外には持てなかろう」


 まず受付のお姉さんに今回のクエスト分、宝石ワーム100匹の納品を果たした。


「おっけーです!これでロシュアさんたち『虹の翼』はクエストクリアとなります!」


「ありがとうございます……あ、それとこちらにおわすドワーフのオズワルドさんからちょっとしたお土産がありまして……」


「はい。なんでしょうか」


「あそこのワームのコアなんですけど……」


「はいコアですね……えっ?え?え??なんですかあれーっ!!」


 入り口を半分以上塞いでしまってる巨大生物のコアを見て、その場の全員が息を呑んでいた。


「あ、あれがコアだっていうんですか?し、しかも宝石ワームの?」


「はい……」


 あまりのショックに受付さんの意識が飛びそうになっていたが、まあ無理もない。

 というか今思えばよくあんなの引き抜けたもんだ。

 その騒然とした様子を察してか、なんとギルドマスタークラウスさんまで顔を出しにきた。


「あーっひゃっひゃひゃ!あー面白。キミはホント見ていて退屈しないなぁ」


「ククク、クラウスさん!?なんでここに」


「なんでってあたしゃここのギルドマスターだよい」


「い、いやまあそうですけど……」


 ふとギルドにあったクラウスさんの荘厳な像と本人を見比べて、あまりにも姿が違うことに気がついた。


「あの……クラウスさん」


「ん?なんじゃね?」


「あそこにある銅像となんかえらい印象違うんですけど……」


「盛った方がかっこいいやん?」


 そ、そんな理由で?!


「というのはまぁ半分神話だけど」


「実話とかじゃなくて!?」


「あれはおーむかしにあたしが【神装】した時のカッコだね。まぁこんな可愛らしいムチムチな乙女の銅像にしたら迷える冒険者の男の子たちの性癖が歪みかねないからね。箔も付かないし、ゴツい方が魔除けになるしあーいうふうに作らせたのよん」


「そうだったんですね……」


 ムチムチって……自覚あったのか。

 しかし悪戯好きなこの人のことだ。ああいうゴツいのを想像していた初見プレイヤーを僕の時みたく驚かせるために敢えてそうしてる気がしないでもない。


「それよりもあのバカでかいのはコアだね?それもただの宝石ワームじゃない」


「え、ええ。なんか壁くらいの大きさがあって……」


「ありゃ宝石ワームの始祖みたいな大物、キングワームのコアだ。ああいうひとつの生物種の頂点に君臨するよーな大物種を時にあたしらギルドは『王』と呼んでいるのさ。それ一体で完結できるし、そこから無数に子孫を残せるという始まりと終わりを司るやべーやつだ。しっかしまだ生きてたとはなああの蟲っころ」


「もしかしてあのでかいやつと会ったことあるんですか?」


「うん。200年くらい前にね、かけっこして負けたから腹いせにボコったの。お腹あたりをぼこんとね」


「…………」


 ワームさんが苦しそうにしてたのって……。

 もしかしてその時の古傷が痛んだからでは……?

 い、いや流石に考えすぎか。200年も経ってるしな、うん。

 中にオズワルドさんが居て、それが体内をうろちょろするから苦しんでただけということにしよう。


 しかしホント、不老不死のギルドマスターともなるとちょっとした思い出話のスケールが常人とは全然違うなあ。

 あの頑丈で巨大なワームの図体を拳で殴りつけるなんて……。

 なんか近所の公園行ってくる感覚で戦争とか行ってそうなんだもん。


「とはいえロシュアくん。これはすっごい偉業だよホントに。まあまずあのデカブツの体内に入るのも中々クレイジー過ぎる所業だが、かといて腹を掻っ捌いて取り出すのもコア付近はやったら硬くて困難を極めることになる。しかもコア自体もアホみたいにでかいから普通は引き剥がすだけでも不可能に近いのに、それをきちんと持って帰っちゃうんだもん。これは歴史的発見としてギルドに大きな功績を残したと言っても過言ではないよ」


「そ、そうですかね。クラウスさんなら素手で腹を引きちぎった後片手でコア抱えて帰宅しそうですけど」


「キミ、あたしをどんなバケモンだと思ってるんだい?いくらなんでもそこまでの真似はできないよ乙女だもん」


 乙女の定義が根幹から揺らぎかねない発言やめてもらって良いですかね。

 それと乙女の意味をもう一度辞書か何かで読んでいただくことを推奨します。


「まぁ真面目にあたしゃ魔法の才能てんでないし、あんなデカブツを浮かばせずに持ち帰るなんてやっぱり無理だから素直に喜んでいいんだよ。いよっ!おめでとう!すごいぞ!!……って何その疑心に満ちた目!!」


 全く……彼女は神かなにかと比較して『魔法の才能がない』などと仰っておられるのだろうか……。

 しかしコア奪還は本当に簡単なことではなかったので、それができたことはなんか達成感あるし良いか。


「この功績を讃えてキミのパーティーを一気にランクAまで昇格させてあげてもいいんだよ?ギルドマスター特権で今ならなんでもできるからねぇー」


「そうなんですか?」


「あ、でもあたしを抱くってのは無しね」


「…………誰もそんなこと頼みませんよ」


「いやぁ〜それを聞いて安心したにゃ〜。時々冒険者の中にはあたしのおっぱいを枕に眠らせろ!とか太ももだけくれ!とかクラウスたんの処女が欲しいにゃんとか言ってくるキモオタどもがいるからね〜あはは」


「そこ笑って済ませていい事案なんですか?」


「思うだけで実行しなけりゃ大概セーフよ」


「めちゃくちゃですね……」


「それで?どうするんだい」


「じゃあこのドワーフのオズワルドさんにコアの売ったお金を6割ほど支払って欲しいのと、あと何か良い仕事をギルドさんの方で提供してあげてください」


「えっ?」


 オズワルドさんとクラウスさんが同時に振り向いてきた。


「本当にいいの?そんなことで」


「元々コアの捕獲はオズワルドさんが始めていたことなので。それにオズワルドさんはまだまだ一線級で活躍できる逸材だと思うので、報酬の良いお仕事を探してあげれば……」


「なるほどね。確かに腕は良さそうだ」


「兄ちゃん……何もそこまでしてくれなくったって……」


「でもこれでもうお金に困る生活をしなくても済むじゃないですか」


「悪いな兄ちゃん……また貸しが一つできちまったな」


 そしてコアと共にオズワルドさんをクラウスさんにひとまず見てもらって、僕たちはクエストクリアの報酬を受け取りに別カウンターに向かった。



 その時、そこにはよく見慣れた――いや。

 忘れたくても忘れらない、出会うはずのない人物たちが真っ赤な帽子の女性の背後を歩いていた。


「う、嘘……カムイ……?それにソアラにルーナまで……!」


 それはかつて僕が在籍していた――

 そして僕が追放された『黄昏の獣王団』の仲間たちの姿であった。

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