追放side カムイの視点 集会を開いてみました編
「くそ……おい!いつまで俺たちは皿洗いとか接客とかせにゃいかんのだ!!」
「そりゃ借金が片付くまででしょ」
「それがどのくらいあるのかと聞いてるのだクソ店主!もう俺たちずっと働いてるぞ!もう十分だろう!!」
「はぁ?まだまだ10%も返済できてないよ。ほら手を止めない」
やあみんな。俺の名はカムイ。
現在何らかの間違いでCランクパーティーというこの上ない汚名を与えられた上に、このパワハラブラック労働環境の実態を諸君らに提供している善良な冒険者である。
この忌々しい豚は俺たちが無銭飲食したとかで、これから支払う予定だった金全部まとめて借金にして、俺たちを無銭労働で死ぬまでコキ使おうという邪悪な企みをしている。
この現状をギルドに訴えれば即この店を取り潰すこともできたろうに、今の俺たちはランクC。誰一人言うことを聞いてくれるものはいないだろう。
それもこれも全てはあのクソ王のヒステリックな発狂一回でこのザマになってしまった。
あいつさえいなければ全てが丸く収まっていたというのに。
そもそもの発端はうちのパーティーに数日前在籍していたゴミ、ロシュアとかいう荷物持ちのせいだ。
あいつがパーティーから金を奪って使いまわした挙句ふてぶてしい態度で「俺、このパーティー抜けるから」などと勝手を言ってからだ。俺たちがこんな思いをする羽目になった全ての始まりは。
なんというやつだ。外道が服を着て歩いてるとはまさに奴のためにあるような言葉。
拾ってやった恩を忘れ、いや――その恩を仇で返すという不始末を働いた上にここまで尾を引く奴が遺した負のエネルギー。
全く。俺たちが何をしたというのだ。
神よ。これが試練だと言うのなら、貴方は余りにも残酷だ。
やはり貴様はゲイのサディストであったか。
世の無常をいくら嘆いても仕方ないので、ある程度金が手に入ったら俺たちはここからとんずらこくつもりである。
何せ3人で働いているのだ。
少しくらい給料ちょろまかしてもバレやしない。
「でルーナ、ソアラ。いくら貯まったよ」
「そ、それが……」
「たったの3500ジール!?これじゃあ3日も生活できねえぜ!!ふざけんな!!」
「あたし悪くないもーん。悪いのはグダついてたルーナだし」
「全く……勘弁してくれよ。今俺たちとんでもない崖っぷちに立ってるって自覚がないのか君は」
「申し訳ありません……ですが、なんとかお金になりそうな方法がありますよ」
「ほう?なんだそれは」
こういう時、ルーナの賢い意見は役に立つ。
インテリ理系女子をパーティーに入れておいて正解だったぜ。
俺とバカ女の二人ではどうしてもどん詰まりになってしまうからな。
別に俺はバカではないが、ルーナは地で天才をいく俺さえ思いつかないような聡明なアイデアを出す時がある。
ふっ……さながら俺がチームの太陽ならルーナは月ってところだな。
「覚えてませんか?かつて私たちが合同でクエストを攻略していったAランクパーティーのみなさんを」
「ああ。覚えてるとも」
俺たちは超のつくエリート集団だったもんで、ギルドに顔出せばあいつもこいつも振り向く有名人だった。
なかでも俺たちと志を同じくする超A級なパーティーとは、よくクエストで一緒になって合同で難関クエストの攻略などしていた。
『白銀の蛇竜団』、『深紅の薔薇』そして『無明の旅団』のAランク上位の3パーティーとは特に交流があった。
こいつらは俺たちには及ばないが、それに勝るとも劣らないスペックを誇るエリート連中だ。
しかし。
「今の俺たちはランクCだぜ?何かの間違いとはいえ、そんな連中がやってくるとは思えねーけどな」
「ですが、最近交流していないこともあり、彼らは私たちが今どんな状態なのか知りません。そこで彼らを呼び集めてなんとかお金を頂戴するのです。彼らは私たちに多大な借りがあります。それを今ここで徴収すると共に、ついでに有能なメンバーを〝スカウト〟という形で引き抜いてパーティーを形だけでも結成できれば一石二鳥です」
「おおお。なんでそれに気が付かなかったんだろう!やはりお前は天才だなルーナ!」
「ルーナかしこーい!」
「当然ですっ」
「よーしじゃあ早速大集会の開始だ〜!!題して超Aランクエリートパーティー連合によるオフ集会だ!!主催はこの黄昏の獣王団リーダーのカムイ様だ!!さっそくビラを配っていけ!!」
「おーっ!!」
来るべき日は近い。
ルーナたちに任せて会場の予約も完了した。
奴ら俺のことを覚えていてくれたようで、ルーナからは「必ずオフ会行きます!」と言ってくれたそうだ。
んふふふ。いいぞ全てが順調に進み出してきた。
ここで俺たちは再び黄昏時にあの輝かしかった栄華を取り戻すのだ!!はーっはっはっ!!
◇ ◇ ◇
「ういいいぃっす。どんもーカムイでーす。ま、今日はオフ会当日ですけども……」
俺は高級そうな席を立ち上がって宣言した。
「参加者は……誰一人、来ませんでした」
事前予約まで済ませて盛大に『Aランクパーティー大集会!!』などと垂れ幕まで自作したというのに、貸切の会場には俺たち以外は誰もいない、何一つない空虚な雰囲気が漂っていた。
「いや、なんでだよ!!」
せっかく準備した皿を地面に勢いよく叩きつけ、俺は怒りに身を任せてソアラの胸を揉んだ。
「あぁんっ」
「なんで誰もこねぇんだよおおおおっ!!!」
続きが気になる方、
面白いと思っていただけた方は
☆☆☆☆☆で応援お願いします!
ブクマ、感想、レビューなども
いただけると嬉しいです。