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コアの回収

「ほんじゃまひとつ仲良くやってこうや兄ちゃん。ところでよ兄ちゃんはどうしてここに?」


「王都からクエストを受注してですね、宝石ワーム100匹捕獲するってやつです」


「100ぅ!?そりゃ難儀だなぁ。で捕まえられたのかい?」


「ええ。頼れる仲間がいるもので」


「ほーっ。あいつら素早いからな。素早いし硬いしで稼ぎにはむかねぇ連中さ。このトシになってくると腰いわしていけねぇ」


「オズワルドさんはクエストとか受けないんですか?すごくやり手そうですけど」


「いやぁーとてもじゃねぇがカラダがついてけねぇよ。それに俺ぁずっと一人だからよ。一人でやれるクエストなんざ知れてるしな」


 そうは言うものの、オズワルドさんは随分と身軽な動きでとても早くゴツゴツとした体内を歩き回っていた。

 ソロ冒険者としてもB以上は堅い実力者だろう。

 未知なるものに臆せぬ勇気と度胸も兼ね備えている。

 何かいい働き口はないものだろうか。


「おっ。多分この辺だな。なんかキラキラと明滅してるやつがあったらそれがコアで間違いねえ。俺はあっちさがすから兄ちゃんはこっちを頼む」


「はい」


 そこは狭い食道を抜けた先にある、ワームの胃袋のような広々とした空間だった。

 ワームの構造的にこの先はもう大腸か第二腹部になるのでコアがあるとしたらこの辺ということになるのだろう。

 しかしこうも広いとコアの在り処なんて……


「――ってあ、あの!!オズワルドさん!!」


「おう。なんでえどうした」


「う、上!上見てください!」


「上ぇ?俺は常に上を向いて人生歩いて……ってなんじゃこりゃああああっ!!」


 僕たちが天井を見上げて驚いていたのは、そこにとてつもない大きさを誇るぶら下がった球体があったからだ。


 フラッシュで照らして見なければ気付かなかったかもしれない。

 うっすらとだが、ドクドクと小さな光の点滅を繰り返しているのであれがワームのコアであろう。

 だが、大きい。大きすぎる。


「お、おいおい……デカブツはコアまでデカブツなのかよ……」


「あんなのどうやって持って帰ればいいんでしょうか……」


「うーん……兄ちゃんあそこまで飛んでいけるか?なーんて無理だよな」


「いけなくもないですけど……」


「えっ?」


 風魔法を色々工夫してやれば……。


「【浮遊魔法(フロート)】」


 ふわっと足から身体が浮かび上がり、だんだん上昇を続けていった。

 ちょっと停止して空の上を歩いてみる。


「うわっとっとっととと!ふーっ」


 危ない危ない。

 やはり空中移動は難しいな。

 慣れるのにやや時間がかかったが、5分もすれば自由自在に移動できるようになっていた。

 空を歩くってなんだか楽しいな。

 翼を持つ生物たちはこんな気持ちだったのか。

 うっかりすると何をしに行ったか忘れてしまうほど熱中してしまっていた。いけないいけない。

 目的はコアだ。


「さーて……これどうするかなぁ……」


 近づいてみるとそのとんでもない規模がよくわかる。

 普通コアといったら人間よりも数段小さいものだ。

 小さいが、魔力や生命力の密度が凄まじくコアを破壊されると大抵の生物は機能停止してしまう。

 しかしこの超巨大ミミズはでかい分コアもバカデカく、落ちてきたら家一軒は軽く押しつぶせそうなほど果てしない大きさを誇っていた。

 回収ったって……切り落とす?

 いやいやそんなことしたらおじさんごと砕け散ってしまう。

 でも掴むにしても大きすぎてそれさえままならない。

 そもそもこれ引き抜けるのか……?


「んぎぎぎぎっ」


 とりあえずコアの出っ張った掴めそうな部分を掴み、勢いよく引っ張ってみる。

 コアはゆっくりとだがじわじわと迫ってきており、一応力押しでもいけることはいけるみたいだった。


 だがコアに手をかけたことで、ワームが動き出したのか周囲の景色がぐわんぐんん揺れていった。


「うわわわ、わわわ!」


「デカブツが起きやがったか……兄ちゃんやい!早いとこブチッとやっちまってくれ!そうすればもう動かねえはずだ」


 いやいやブチッとやるといったって、これでも結構な力を込めてやっているつもりなのだ。

 しかしコアは中々落ちてこない。

 一応補助魔法をかけているのでうっかり落ちてきても受け止められそうではあるが。


 やがて上の部分がぷちっと音を立てて剥がれ落ち、ものすごく重い球体が肩の上に乗りかかってきた。


「ぐおおお……!」


「頑張れ兄ちゃん!頑張れ!!」


 応援されても……!

 ていうかこれ持って帰るの絶対無理でしょ。

 入る……のか?アイテムボックス。

 ゆっくりと巨大な球を抱えて地に降り立ち、なんとかそれを地面に置いた。

 コアを引き抜かれたことで、ワームも生命活動を停止したのか、周囲に響いていた激しい鳴動は止んだ。


「よぉしでかした兄ちゃん!」


「いやあの……オズワルドさん。これどうやって持ち帰るつもりですか?」


「うーむ……とりあえず兄ちゃんが持っててくれ」


「え、ええ……」


 結構重いし場所取るぞこれ。

 仕方なくコアを再び抱えていると、オズワルドさんがワームの腹を器具でこじ開けていった。


「よし……デカブツがくたばったことで腹の中から出口を作れるようになったぜ。兄ちゃん先行ってるぜ」


「あっ、待ってくださいよ」


 そのまま出るには狭いので、コアを通れるようにワームの腹部をくり抜いていった。


 外では仲間たちが出迎えてくれた。


「あぁロシュア様!!おかえりなさい!!」


「た、ただいまみんな」


「びっくりしたぞ。ワームが暴れ出したと思ったらいきなり止まって腹の中からドワーフが出てきたのだからな。てっきりキミがドワーフになったのかと思ったよ」


「ははは……あの人はオズワルドさん。このワームのコアを狙ってきた同業者……かな?」


「ん……?コアってまさか」


「はい」


 ドスンと外にバカでかいコアの塊を置いた。


「うわああああああっ!!な、なんだこの気味の悪い塊は!!」


「これがワームのコアなんだって」


「で、……でっかいですね……うわぁ……」


《そ、そんなもんどうやって持って帰るつもりじゃご主人様よ》


「うーん……とりあえず馬車の後ろにくっつけて引きずっていこうかな……いややっぱり上に乗せてみようか」


 馬車の前に立ち、コアに向かって【浮遊魔法】をかけた。

 コアはふわふわと浮かび上がり、馬車の屋根にズシンと乗った。

 一応沈んでなかったので、中の部屋が大変なことになってはいないだろう。


「それじゃいきますか……えっとオズワルドさんも」


「あぁ。じゃあお邪魔させてもらうとするか」


 僕たちのパーティー虹の翼とオズワルドさんを乗せて、コア乗せ馬車は王都ギルドまで進み出した。

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