王都冒険紀行 Cランククエストに挑戦!!
「それでこれからどうしますか?」
「そうだね……せっかく王都まで来たんだし、何かクエストでもやっていこうか」
「やったぁ!王都での初クエストですね〜!」
みんなのテンションが上がるのもわかる。
ここには古今東西ありとあらゆる依頼が集まっているのだ。
その数100――いや1000を軽く超えるほどだ。
各地から依頼がひっきりなしに往来し、冒険者たちは引く手数多の需要と供給の海に溺れることになる。
受付さんに話して扱っているクエスト一覧に目を通した。
本当に辞書一冊分ほどの分量で大量のページにクエストというクエストが刻まれている。
「うーんどれがいいかなぁ」
パーティー全体のバランスやアクセスなど色々条件を考えると……比較的今の面子でも安全そうなのは『宝石ワーム100匹捕獲』だろうか。
難易度はCと現在のパーティーランクに対してはやや高めだが、余り低い難易度のものをクリアしても評価は著しく変わらない。
多少の無茶はしても大丈夫だ。
だって既に魔王クラスの相手と戦うほどの無茶を乗り越えてきたんだもの。
難易度Cで宝石ワームは素早いが敵意は存在しない逃げるだけの種族であり、ダンジョンにもワームしか出現しないので危険性は皆無だ。
ただ単に探索して捕まえるのが非常に大変というだけだ。
というのもこのダンジョン『宝蟲の回廊』はそこら中が宝石のオブジェクトで埋め尽くされており、一見するとワームとの見分けがまるでつかないのだ。
ならばとサーチで探ってみても、ワームたちは土の中で眠っている間は生体反応を示さず、その辺の石ころとなんら変わらない状態になってしまうのだ。
見つけるのも一苦労だし、仮にもし運良く見つけられたとしてもワームは目を覚ますと同時に凄まじい速度で地中に潜って逃げようとするため、速攻で捕まえなくてはならない。
が、ワームの体表はとても硬く傷はつけられないのでモリかなんかでブッ刺して捕獲することもできない。
魔法攻撃も高い耐性を持つためいまいち効き目がない。
つまり素手で獲るしか有効な方法はない。
網なんか用意してもものすごい速さで突進され千切られて逃げられるだけだ。
手で止めておくにも、その間もこの世の終わりが迫った動物のようにクネクネと素早く動くのですぐにアイテムボックスに叩き込む必要がある。
これがランクCに相当する所以だ。
中上級者向けのBほどではないが、初心者向けのF〜Dでもないというわけだ。
「よーしじゃあこれに……」
「ねえねえロシュア様。ダリアさんが言っていたこのクエストは受けないんですか?」
横から顔を出していたターシャさんが指さしたのは『推定難易度S級のクエスト 古龍の洞窟に巣食う魔神の討伐』だった。
「い、いや……これは流石に無理でしょ」
「そうですか〜?だって私たちすごく強いし、ロシュア様もいるし!あとこれ私たちのパーティーランクは問わないって書いてありますよ〜」
ここで初めて知ったことだが、実はS級クエスト挑戦にランク制限はない(推定・非推定を含む)。
FだろうとSだろうと、ライセンスを持つ冒険者なら誰だってSクエストに挑戦できる。
ただ挑戦ができるというだけで、クリアどころか命の保証は全くない。
公式が打ち出しているランクの最高がSなので、推定でこのレベルになると第一層からもう普通じゃない強さの怪物がわんさか溢れてくるようになる。
しかも、階層を跨ぐ度に強さは尋常じゃないほど増していく。
とてもじゃないが、今の僕たちでは返り討ちに遭うのが関の山だろう。それに。
「安易に挑戦してまたダメだったら、国王様は今度こそその怒りを爆発させてしまうだろう。色々やってみて実力をつけてから慎重に挑もう」
「むー。わかりました」
「まぁロシュアの言い分にも一理ある。一度クエストを受ければそう簡単に引き返せないだろう。たった一度の撤退や失敗が、怒れる国王をどう突き動かすのか分からないのも事実だ」
《じゃが妾にはわかるぞ。今のご主人様なら一人でも余裕で達成できそうじゃぞ》
「そうなの?」
《古龍とは言うものの言ってしまえば、大昔にトカゲだった連中がたまたま生き残ったのを良いことに偉そうに龍を名乗っておるだけじゃ。妾の足元にも及ばんよ》
すごい言い分だが、こんなことが言えるのもサラが正真正銘炎の精霊だからであろう。
「うーん……まぁでももう少し様子をみていこう。まずはこの『宝石ワーム捕獲』からだ」
受付さんにこのクエストを受諾する処理を済ませて、地図を受け取った僕たちはシロニアちゃんの待つ馬車に乗って目的ダンジョン・宝蟲の回廊まで向かっていった。
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