収束
「はうう……ごめんなさいですマスター……」
「いや良いんだよシロニア。助けに来てくれたんだよねありがとう」
割れた窓ガラスを集めるのを手伝ってくれる四賢人様がなんだかとてもお茶目な絵面に見えて仕方なかった。
弁償……いくらぐらいになるんだろうか。
「あひゃっひゃひゃ!あーおっかし。いーよいーよ。なんの説明もなしにドンパチ仕掛けたこっちにも責任あるし。費用は全額負担するよルビーが」
「何っ。我なのか」
「他に誰がいんのよ!レッドはリーダーの色みんなのまとめ役相談役って相場が決まってんじゃないの。いいでしょー賢者の貯金なんて減るもんじゃなしに」
「……いやお金は減ってるんじゃないですか?」
「大丈夫大丈夫。もうね四賢人といえば人生60回やり直してもお釣りが来るほどの金もらってんだから」
「そ、そんなにですか!?」
「しかもこいつら普段は霞食って生きてるレベルでほっとんど消費せずにいられるからね。多少窓ガラスぶち破ろうが、半分城ぶっ壊そうが痛くも痒くもないってわけよ」
「はは。酷い説明もあったものだな」
四賢人様たちは不遜なギルドマスターの態度にも怒る事なく、むしろ笑って過ごしていた。
……本当何モンなんだクラウスさん。
切りつけられたはずの傷が治っているのに、件の魔王様は寝転んだままだった。
どうやら久しぶりに力を全開にした反動で疲れ切ってしまっていたらしい。
すやすやと穏やかな寝息を立てて眠る彼女の姿を見ると、とても世界を滅ぼすような魔王には見えなかった。
「けど……本当に良いんですか。勝手に封印のやり方まで変更した上にその……元魔王を連れ回すなんて許可してもらって」
「うん。その方が安全だって上にはあたしが伝えておくから。なんか文句抜かしてきたら黙らせるから安心しとけ〜」
強い。
なんかこの人が一人いれば全てが収まりそうな安心感がある。
《ふっ……妾にはわかっておったぞ小娘。こやつの考えることはいっつもこっちの裏をかくような汚い策略ばかりじゃからのう》
「おやおや随分な物言いじゃないか炎の精霊よ。昔は仲良くしてくれたじゃないか」
《ほざけ。もう主の顔は見たくもなかったわ》
「サラと知り合いなんですか?」
「無駄に長生きしてるからねお互い。不死の秘薬をダンジョンで手に入れてから他の精霊とも仲良しこよししてるのよん」
なるほど。忘れてたけどこの人そういえば不老不死だった。
「それで……もうこれだけで良いんですか?封印のこととか……」
「ああ。うん。まぁ誰が封印を解いたとかそこらへんは詳しく調べていくからさ。今君たちが気にする事はないよ。とりあえずその件はここで処理しとくから、何か分かり次第また連絡するね」
「は、はいわかりました」
なんか色々釈然としなかったが、ギルドマスターや四賢人が認めてくれたので良しとするか。
「じゃあ行こうかみんな」
「はいっ!」
そして僕たちはその部屋を出ていった。
◇ ◇ ◇
「よかったのかクラウス。彼には魔王と結託したという嫌疑が王国からかけられていることを伝えなくて」
「うん。それについてはこっちが色々見定めた上であちらに伝えることにするよ。裁判沙汰になるのは確実だろうけどね。あたしらはあたしらでなんとかその時に備えよう」
「あの青年の件は我に任せてくれないか。彼には風を感じるのだ。新しい風を吹かせてくれそうな……そんな予感がする」
「へぇ。珍しいね。風のサーガ様がそこまで他人に興味をお示しになるなんてさ。まぁ良いと思うよ。あたしも気にはなってるんだ。……彼らならこの腐った国を変えられるかもしれない……ってね」
クラウスは虚な表情で窓を眺めていた。
彼らの秘密裏の話し合いを、ロシュアたちは知るよしもなかった……。
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