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王都のギルドマスター

「お、おじゃまします」


 ものすごい緊張感と重圧で息が詰まりそうになる。

 王都の大ギルドを管理するギルドマスターなんて超超超大物じゃないか……!

 しかもクラウスさんは現在も不老不死の秘薬を飲んでギルド黎明期からずっと現役でギルドマスターをやってるらしいじゃないか。

 そんな生きる伝説を体現したような人が現れるなんて……。


 部屋は複数人での話し合いを想定しているからか、とても広かった。

 真ん中にはドンと巨大な円卓が設置されており、蝋燭が立ち並ぶ豪華なものだった。

 しかし部屋には僕ら以外人っ子一人いなかった。


 おかしいな。受付さんは「そちらにいらっしゃる」と言ったはずなんだが……。

 それともいらっしゃるとは今から行くの方の意味だったのか?

 うーん言葉って難しいな……。


「わっ!!」


「うひゃあああわあらぁああ!!」


 そんな事に思案を巡らせていると、突然背後からとても通る大きな声が聞こえてきた。

 心臓が口から飛び出しそうになる。

 頭にあったもの、今全部ぱーっと無くなった。

 激しい緊張にあって僕の精神はボロボロなのだ。

 不意打ちの叫び声なんかクリティカルヒットするに決まってるじゃないか。


「あひゃっひゃひゃ!ねえねえびっくりした?びっくりした?」


「はぁ……はぁ……な、な、何するんですか……ほほ本当に……」


 もう少しで死ぬところだった。

 なんて人だ。


 その人は猫みたいに飄々と掴み所のない振る舞いをしながらニヤニヤと悪魔的な微笑みを浮かべていた。

 そして明らかに女性であった。

 ターシャさんに勝るとも劣らない大きくて、男なら誰しも振り返ってしまうほどの巨乳だった。

 また、その巨峰に目を奪われがちだが、ルックスもかなりのものであり身長は高く、大きな水晶色に輝く瞳、整った顔立ちにやや紫がかった美しい唇をしており、肌は透き通るように美白だった。

 ただ、絶世の美女というよりは少し幼さを感じるような――やや童顔な印象を受けた。

 大きな胸と相反するほどウエストは細く、キュッとくびれて引き締まっていた。

 服装は上は豪華なマントを羽織っているものだが、首から下はヘソ出しレオタードという破廉恥極まりない格好だった。

 手足もすらりと長くスタイルは抜群に良かった。

 その神に愛されし造形から察するに、彼女は特別な人間であろう。どう見ても汎用モブとは逸脱した雰囲気を放っていた。


「驚かせてごめ〜ん。あたしはクラウス。ここのギルドマスターやってまーす。歳は永遠の17歳でーす。よろぴくね」


「よ、よよろしくお願いします。僕はロシュアです」


「あはは〜そんなに固くならなくていいよ〜」


 やはりギルドマスターだったか。

 肩の星や腕章からも派手に存在をアピールしていた。

 しかしまさか初代ギルドマスターが女性だったとは……。

 それもこんな遊び心満載の人とは。

 クラウス、ギルドマスターと聞いてほぼ全ての人間が金髪で厳かな筋肉質でイケメンの長身男性を連想させるだろう。

 まあ金髪の部分だけはあっていたけども。

 不死故かとてつもなく長い髪の毛を揺らしながら、彼女は僕の手を握って振り回していた。


「ほほぅ〜中々の修羅場をくぐり抜けてきたようだね。それに君は相当優秀な変態(まほうつかい)だよ」


「そ、それはお褒めに預かり光栄です……?」


 待って今この人「変態」て書いて「まほうつかい」てルビ降らなかったか。


「魔法使いなんてみんな変態だよ〜。王都を守護する四賢人なんてとち狂ってるからね〜あはは」


「は、ははは……」


 四賢人とは世界最古の賢者である四人で、その栄誉ある称号を賜れる人間は選ばれし賢者の中でも非常に少ない。

 その四賢人を「変態」呼ばわりできるなんて……流石は初代ギルドマスター。


「さてさてそれじゃあここに座ってぇ〜。大丈夫座った瞬間拘束する罠とか仕掛けられてないから」


「は、はい」


 いやどんな仕掛けを想定してると思ってるんだ。

 座り心地の良い椅子に全員が集結すると、ギルドマスターは早速本題に入り始めた。


「えーとまずは……んーにゃ。君が魔王を封印したってことでおK?」


「お、おけ……?」


「良いかってことよん」


「あ、はい……その認識で間違いありません」


「ほーほーなるほどなるほど。ほんじゃそこに居る子は成れの果てってことで認識よろしいか?」


 彼女が指さしたのは小さくなった魔王様だった。

 彼女は全てを把握しているとみて間違いない。

 下手に誤魔化さず真実のみを語るとしよう。


「はい……。すみません。僕の独断で勝手に魔王を力のみ封印するという形で手を打ちました。本来なら全部封印すべきだったのですが……」


「まぁあたしらは現場の判断にある程度任せる方針でやってるかるさ。別にその事で君を責めたりはしないよ。うん。それに君たち以外であの魔王に立ち向かう事ができたパーティーはいなかったからね。そこは評価してるのさ」


 クラウスさんは腕を組んでのけぞった。


「ただ。こちらとしてはやはり魔王をそのまま野放しにしておくわけにはいかないのですよ。そこでその魔王の成れの果てをこちらに引き渡してもらえないだろうか」


「えっ」


「まあ提案っていうか、決定なんだよねこれが」


 僕は迷った。

 それはつまり彼女の一存が全てギルドに委ねられるということになる。

 どうなるのか分からない。そしたら安全を保証することもできない。


「ひ、引き渡したらこの子はどうなるんですか……?」


「そうだねー。ま当分日の目は拝めないかなー。研究者たちに腕も残らず分解されて、しばらく研究対象として地下深くで眠ってもらうかもね」


 クラウスさんの意地悪そうな物言いに魔王は震えた。

 やはり引き渡すわけにはいかない。

 ギルドを信頼していないのではないが、そんな非人道的な真似たとえ魔王相手にもさせてはいけない。


「すみません……悪いんですけどそれはできません」


「まぁそういうとは思ったよ。……けどね。今力を封印してるじゃない君」


 クラウスさんは席を立ち上がってこちらに歩いて来た。


「いつかは魔王の成れの果てに力を返してあげよう。そんなこと考えてるんじゃないかい?」


「……!」


「心を入れ替えた魔王なら大丈夫。絶対裏切ったりしないってそう思ってるんだろう?でもね。人間でさえ力を与えられるとそれまで固く決心していた事が急に揺らぎ出すことだってあるのさ。誰がそのことを責められようか。――生物はね、力には抗えないものなのさ」


 そして彼女はとうとう僕の頬にまで接近してきた。


「少しでも人間に害をもたらす可能性がある生き物を放っておくわけにはいかない。わかるね?」


「だからって――人体実験みたいな酷いこと……!」


「それは違うよ。人類の発展と進歩のため、それから今後魔王出現みたいな事態が発生してもいいように備えるのさ。君だって命を奪ってここまで生きてきただろう?人類もそうやって進歩を繰り返してきたじゃないか。それと同じだよ」


 たしかにそうだ。

 だけどそれは方法がそれしかなかったからであって、みすみす助かるはずの命を犠牲にしていいわけがない。

 もっとなにか方法があるはずだ。


「まぁ君とは相容れない。そう思っていたよ。うん君が魔王の成れの果てを庇うことも知っていた」


 近づいていた彼女は再び離れて魔法陣から剣を出現させた。


「ま、交渉決裂ということで――実力行使のお時間といこうか」


「やはりこうなるのか……!」


 こうしてギルドマスターと僕たちは戦いを始める事になった。

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