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いざ、王都へ!②

「ふわぁ〜……なんだか眠くなってきたなぁ」


 即席で作ったとはいえベッドは中々の寝心地だった。

 ついうとうとしてしまう。

 このまま惰眠を貪るのもありか……。

 到着まで時間ありそうだし寝るか。うん。


「おやすみなさーい……と」


 そうして目を瞑った瞬間、突然窓の景色が止まったように感じた。

 というか止まっていた。


「着きましたよ皆さん〜王都でーす!」


「えええ!?う、うそ!」


 外を見ると本当にご立派な城壁があり、王都と見て間違い無い景色だった。

 嘘だろ。まだ日が上ったままだぞ。

 体感ここまでで2時間――いや1時間半もかかってないくらいだぞ。


「ふーっ。良い仕事しましたよ私!」


 シロニアちゃんが額の汗を拭って馬車を停車させていた。

 たしかにここまで本当にご苦労様でしたとしか言いようがない。

 ――が、いくらなんでも速すぎやしませんかね……。

 ここまで相当な距離があったはずなのに、なんか全然そんな感じがしない。

 ともかく全員を呼び出して下へ降りると、馬車と並走しながら王都に歩いて行った。


「わーっ……すごい人だかりです……ここが華の都王都なんですね」


「本当にな……。それに龍人種やリザードマンに空飛ぶフェンリル。ナイトゴーレムにゴブリンウォーリアなど亜人もわんさかだ。とんでもない数だぞ」


 王都は巨大な城壁に囲まれた都市国家だ。

 中はとてつもなく広く、多種多様な人種に富み、そのお店や施設も両手足の指でも数えきれないほど豊富であった。

 「人に会いたきゃ王都に行け」「王都に店を構えてようやく一人前」なんて言葉があるくらい、この大陸では最も有名な王国領だった。

 さらに中央には紙幣や硬貨の名前にもなっているジール国王がおわすお城が聳え立っており、宮殿内は世界最高の値段を誇る超高級な家具や内装となっていることで専ら有名となっていた。


 国王の一族には世界で一番最初にギルドを初めて世に普及させたという逸話があるくらいだ。

 特にそういった冒険者たちのあれこれには力を入れている大都市といえよう。


 その証拠に右も左も冒険者のためにあるような店々ばかりだった。

 さらに毎日変わる品揃えの露天商まであるらしく、今回は異国から取り寄せたという様々な珍しい商品を陳列して客の興味を惹きつけていた。


 その大盛況っぷりに今日が初王都デビューとなるターシャさんたちは興奮を隠せない様子だった。

 僕も気を抜くと目移りしてしまいそうなほどの魅力的な品々だった。


「わあ〜素敵です〜あのお洋服や笛なんか見てみたいですね〜」


「あ、ああ……それになんだあの心ときめくイーシタン風なショップは……!ぜ、是非とも馳せ参じたいものだ……ぐふふ」


「みんな気持ちはわかるけど、まずはギルドに行かなくちゃ」


 本部であるギルドはここが冒険者ギルド発祥の地として、初代ギルドマスタークラウスさんの像が建てられており(驚くことに存命中)、明らかに他のギルドとは何もかも異なる特別な雰囲気が漂っていた。

 全てのギルドを取りまとめる総本山であるだけに、建物は尋常じゃないほど広く、一度はぐれたら二度と会えなくなりそうなほどの規模を誇っていた。

 あちらこちらでおおよそ100人以上の受付嬢やスタッフがあちこちに存在しており、冒険者までそれとほぼ同じ数フロアに詰まっていたので、人の海で溢れてしまっていた。

 が、それでもなお狭さを感じさせず――むしろまだ空間が有り余っているようだった。恐るべしギルド本部。


「本日はようこそおいでくださいました。こちら王立ギルド本部でございます」


 像を超えた入り口付近に立っていたのは、本家ギルドの職員であることを示すためのバッジを身につけたお姉さんだった。

 こちらは人間だったが、それぞれ種族別に分かれている受付もあり、広く深く訪れる冒険者たちに対応しているようだった。


 流石本部。


「ええとすみません……。僕はFランク冒険者のロシュアと申します。ガーベラさんの支部でちょっとしたお手伝いとかさせていただいてる者なんですけど……例の件についてこちらでお話があると伺って来たのですが……」


 机の上に僕たち全員分のライセンスを提示して、受付に見せた。


「かしこまりました。ただ今確認しに参ります。少々お時間を頂戴致します」


 本部ともなると所作もいちいち丁寧だ。

 聞き取りやすい声、発音、そしてこの接客態度。

 どれをとっても超一流。

 言ったら悪いがちょっと荒れてるガーベラさんとは天と地ほど差がある。まぁああいうのが本来は普通で、こっちの方が丁寧過ぎて若干おかしいんだけれども。


 やがて本当に少々の所要時間で受付のお姉さんが戻ってきた。

 彼女は笑顔でライセンスを返却してくれた。


「お待たせ致しました。あなた方がロシュア様御一行で間違いないと確認が取れましたので、どうぞあちらの方でお待ちください」


 お姉さんが合図すると、それまではなかった空間からエレベーターが出現し、その中へ入るよう促された。


「ギルドマスターもそちらにいらっしゃるようですので、詳しい話はそちらでお伺いいただきますようお願いします」


 そしてエレベーターは下の方にまで降りていった。


 え?ギルドマスターがくるの??

 しかも王都ギルドの!?

 えええええっ!!

 どど、どどうしようどうしよう。

 身だしなみとか整えてないしなぁ。こんなみすぼらしい格好で大丈夫だろうか。機嫌悪くしないだろうか。


 手遅れだが、それでも色々と念入りにできるだけの準備を整え、やがて職員の案内する紅く荘厳な扉の前まで連れてこられた。


 こ、この向こうにお偉いさんがたが……。

 久しく味わっていなかった緊張が全身を走り、汗で服を湿らせる。

 できるなら安全に……穏便で平和的に話し合いたいものだ。

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