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新章突入 いざ、王都へ!

「ふわぁあ……なんかお腹の方が違和感あるなぁ…………てわあぁあ!!タ、ターシャさん!?」


「む?ふぁほひょうほはいはす(おはようございます)」


 我が聖女様は朝っぱらから驚きをくれる。

 布団をどけてみるとそこには下着姿のターシャさんが必死に僕のおへそ部分に口をつけてチューチュー吸っていた。

 満足そうに繰り返すその行為に何の意味があるのか問うてみたところ、こんな答えが返ってきた。


「正妻として朝は旦那様の身体をしゃぶり尽くすのは当然の義務ですよぉ」


「そ、そうなんだ……いやそんな義務知らなかったけれども……」


 ターシャさんは随分と僕の知らない世界の常識をご存知のようだ。

 へそのあたりがくすぐったくて仕方なかったが、段々と彼女のお口が下の方に向かっていくので僕は焦って止めた。


「わわわ、ちょっとちょっとちょっと!」


「ん?なんですかロシュア様」


「朝からそこはまずいですって!やめてくださいよ!」


「むしろ朝だからですよ。私本で読んだことありますよ!男性は朝も夜も問わずに怪物になるって」


「あってるっちゃあるってるような……」


 どんな書き方してるんだその本。

 それでは誤解が生じるじゃないか。


「荒れ狂うケモノに支配されないために男性は自ら自己処理をするんだとか……私気になります!気になりすぎます!!」


「だ、だからってそんな!……と、とにかくストッ……プ……」


「どうしたんですか?」


 うぐ……なんだ。

 執拗に舐められ続けたからか、お腹の底が痛……。

 だめだ。お腹が痛い!

 額からはたっぷりと汗が滲み出してきた。

 余りの痛みにターシャさんの細腕を握りつぶしてしまいそうになる。

 苦痛に歪む僕の顔を見て彼女はとても心配そうな目つきで僕を見た。


「だ、大丈夫ですかロシュア様!!苦しいんですか?待っててください今人工呼吸を――」


「い、いや……お、お腹が痛い……!ちょ、ちょっとトイレに……!!」


「えっあ、お腹でしたらきゃっ!!あっなんて力強くて男らしい突き飛ばし……♡」


 半分うっとり顔を浮かべてる彼女を尻目にトイレへ直行する。

 痛みの根源を全て吐き出し、ようやくほっと一息つくことができた。


「ふうぅ…………一体なんだったんだろうか」


 昨日食べたものが当たったのか?

 そんな危ないものは――


 ふと厨房の方に目を向けてみると、そこには無数の「食べられません」と書かれた袋や「注 食用ではありません!」と記載されている破片の残骸が大量に転がっていた。


 お……おいおい。まさかあの乾燥剤とかまとめてぶち込んだんじゃあるまいな……昨日のケーキに……。


「えっ?あぁその白い粉ならみんなで入れてみたぞ。なんて書いてあるか分からなかったのだが、多分砂糖とか何かだろう?」


「……さいでしたか」


 なるほど。エルフ、炎の精霊、魔王の人外三種の神器娘たちには人間の文字は読めていなかったのか。

 それならとんでもないものを混入させてしまっていたとしても何ら不思議ではない……というか、誰か止めよ?

 身体の水分という水分全部吐き出してギョリギョリに痩せてしまった僕は、当分なにかを食べようという気にはなれなかった。


 やれやれ朝からひどく疲れた。

 しきりに隣でターシャさんがお腹をさすってくれているのがありがたかった。


「大丈夫ですか?あぁん可哀想です……。せめて私が痛みを肩代わりしてあげられたら良いんですが……」


「いや本当にすまないと思っている。まさかそんなものが置いてあるなんて……」


《ていうか香りで食べられんものだと気付くじゃろ普通!主の鼻は飾りか愚か者め!》


「……そういう精霊様も喜んでお入れになっておられた気がするのですが……」


《わ、妾は良いのじゃ!一万年寝てたしっ》


「ボクが回復魔法を使えたら……」


 魔王ジャーク様は破壊の魔法には長けていても、他者を回復させる光の魔法だけはどうやっても覚えられなかったという。

 まあ傷ついた自分の仲間たちを率先して癒していく魔王なんてなんか見たくないしな……。

 むしろそれ魔王じゃないような気がしてくる。


「朝から散々だったみたいだけど、ロシュア君。今日は忙しくなるわよ。まず貴方たちにはこれから王都に行ってもらって色々封印の件について本部から聞かれることになるだろうからね〜」


 ギルド総本部が点在する華の大都会――『王都』。

 グランジール国王が統治する王国領全域の事を指し、数多の冒険者たちで溢れかえっている超のつく規模を誇る大都市国家だ。


 当然扱っているクエストも辞書くらいのページに及ぶほどリストにぎっしり埋まっており、冒険者にとってはそこに訪れることだけでも一種のステータスとなるほどだ。


 ここからは馬車を使っていかなければならないほど遠い。

 しかし聞くところによるとそういうのを手配してくれることはないらしい。


「ごめんね。不親切だとは思うんだけど、なんでも国王が今無礼な冒険者に大変お怒りになってるようで、あっちからの大使を派遣させないようにしてるの」


「何かあったんですか?」


「なんでもS級クエストを攻略失敗した上に国王様に楯突いたらしくて、それで国王様が機嫌をお損ねになったとか……まぁ自業自得だよね」


 そんなとんでもない事をしでかした人間がいるのか。

 僕ならとてもじゃないけどそんなこと思いつかないし、思いついても実行できそうにないや。


「S級クエストですか〜……でも私たち……ううんロシュア様なら楽勝にクリアできそうですよね!」


「えっ?」


「だって〜超S級くらいの魔王を倒して封印することに成功しちゃったんですからね〜!」


 ターシャさんは嬉しそうに元魔王のちっちゃな頭をわしゃわしゃーっとやっていた。

 撫でられている張本人も満更でもない様子でにやついていた。


「うーん……でも本気の魔王には敵わなかったわけだしなぁ」


「いや。少なくとも第二形態まで追い詰めることができたんだから、そんじょそこらのS級クエストはヌルゲーになると思うわ」


 ダリアさんが紅茶を淹れてくれた。


「そうなんですか?」


「そもそも魔王と単独で戦って1分以上身体が残っている時点でだいぶ異質な強さなのよね。神話クラスというか神話を作る側の生物とガチでやり合ってるわけだし……古龍でも多分小指の先で飛ばせると思うわよ」


「そ、それは流石に言い過ぎですよ」


「ま、貴方も何かすることが無くて力を持て余しているなら是非ともそういうクエストに挑戦してみるといいわ。そうすれば国王様も怒りを鎮めるかもしれないし」


 それは滞っていた流通が色々元通りになるし、王様も助かるしでとっても良いことなんだけど。

 また安易に僕達が挑戦してもしダメだったら、王様は今度こそ怒りが止まらなくなってしまうだろう。

 それに僕たちは公式にはまだまだランクFのひょっこ。

 実力をしっかりとつけてから挑まないとまたまた失礼を重ねてしまう危険性がある。


「よーし。それじゃあそろそろ王都に行こうか。道を知ってるのは……いないよね」


 仲間たちは全員「?」マークを頭上に浮かべていた。

 まあそうだよね。僕も行ったことないし。


「大丈夫よ。地図作っておいたから。今ここにいるのが貴方たちね。でこの赤く光ってるところが王都ね」


「わぁもうこんなの作ってくれたんですか?ありがとうございます」


「期限とかは特に設けられてないけど……1ヶ月以内には王都のギルドに顔出しておいてね。じゃないと私が怒られちゃう」


「そんなに待ってくれるんですか?」


「というよりここから行くとなると結構かかるかもだし。まあ早ければ3日くらいでつけるかもだけど……」


 そうか。徒歩でいくならそれはちょっと問題だな。

 なんとか馬車でも買って参上するか。

 旅の支度を済ませ、僕たちがギルドから出ようとしたその時、ダリアさんから語りかけられた。


「そうそう。これはまあ君たちに関係ないかもしれないけど……最近妙なやつが大陸をうろついてるらしいから気をつけてね」


「妙なやつ?」


「うん。なんか裸でうろついてる男らしいんだけど」


「紛う事なき不審者じゃないですか」


「そうなのよ。けどこの不審者目撃者によるとわけわからない力を使うし、発言もわけわからないらしいのよ。なんか瞬きする間も無く終わっていたというか……今は西大陸に向かって素っ裸で横断してるらしいから、もし出会いそうになったらちょっくら捕まえてギルドに連行しておいて」


「つ、捕まえてって……そんな簡単に……」


「魔王封印するより楽でしょ?」


「ままぁ……」


 しかしそんな変なやつよく捕まらないな。

 だって裸ってことは攻撃が素通しになるじゃないか。

 まぁ捕まえられなかったんだからそれなりに実力はあるってことか。

 不思議な力を使うらしいし気をつけていかないとな。

 特に女性陣に対する影響が悪すぎる。

 早急にしょっぴいておかないと。


 そうして出発した僕たちは、まずは街で馬車を買っていくことにした。

 ダリアさんから裸男の話が出た時、サラと魔王の表情が一瞬だけ曇ったような気がしたけど気のせいだろうか……。

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