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これにて一件落着! ロシュアのお料理教室With魔王様

「ただいまみんな〜」


「あっ。おかえりなさいロシュア君。それにみんな」


「じゃこれ封印した壺ね」


「まぁ!本当にやってのけたのね!すごいわ!」


「――とおまけね」


「え……?なんで壺がこんなに……?」


「あと魔王ね。安心してもう力は全部吸い取ってあるから」


「ど、どうも……」


「へっ?魔王??い、一体何を……」



 色々と困惑を隠せない彼女に僕達はことの経緯を説明した。


「なるほどね。大体わかったわ」


「まー報告書とか色々うちが書いとくからさ。安心しといてくれめんす」


「う、うん」


 微妙に安心できないのはガーベラさんが書くという点だ。

 失礼だけどなんかこうすごく雑に書きそうだ……。


「ありのまま起こった事を書き漏らすことなくまとめるぜ」


「……まぁこの後も色々本部の人たちに何か聞かれることも多いとは思うけど、悪いようにはしないから大丈夫よ。みんなはなんせ世界を救った英雄たちですものね!」


「えへへ……」


《いやー。それほどでもないぞ》


「……確かにみんな頑張ってはいたが、何よりその栄誉に相応しい人間がいるだろう。なぁロシュア」


「えっ?」


「リーダーとしてキミが表彰式に出るんだな」


「ええ!?そ、そんな……」


「そうね。なんてったって私の未来の旦那様ですもの。私たちが到着するまでたったひとりで魔王と激しい死闘の大立ち回りを演じてくれたのよね」


《妾の次くらいにすごいぞ!》


 何もそんなに褒めなくても……僕はただ元凶として責任を取っただけのことで……。


「ボクとあれだけやりあえるなんて大したものですよ人間」


 今や幼女サイズにまで縮んで力を失った元魔王も、僕の手を引いてにこにこと笑っていた。

 なんかすっかり倒しちゃったみたいな話になってるんだけど、当の本人的にはいいんだろうか……。

 笑ってるしいいか。


「よーしそれじゃあ一杯宴といきますかー!はいこんな時のための酒場ギルドね!!ちなみに私ことガーベラ・ミズノがここに建てると提案しましたー!」


「そのせいで全然仕事に身が入らないじゃない」


「硬い事いうなってーちゃんとやってるんだから」


「みんなもこの子が酔っ払ってクダ巻いてたら遠慮なく苦情まとめて報告書に記入してギルド本部への投函箱に詰め込んでいいわよ」


「あーんもうそんなのなしぃ!」


「あははは」


 そうして僕達はギルドと酒場を貸切にしてもらって、ギルドスタッフ主催の大宴会に参加した。

 どれもこれも素晴らしい食材ばかりが揃っており、ガーベラさん曰く「こういう時のために用意しておいた」そうだ。

 酒場には秘密の隠し階段から行ける地下があり、そこにワインやら食料やら滅多にお目にかかれない秘密の食材が陳列されていたのだ。


 ギルドが責任を持って品質など管理して保存しているそうで、一端の料理人たる僕もそれらには興奮の色を隠せなかった。


 レイドボアの生肉なんて貴族くらいお金を出さないと手に入らない入手困難な良質過ぎる肉だ。

 じっくりとバターにソースで炒めてみんなに手料理として振る舞う。


「うーん良い匂いだ……」


 リーネさんがとても満足そうに言う。

 嗅覚が鋭い彼女にとってはこの肉と脂の弾ける香りだけでもう相当な幸福感に包まれている事だろう。


 しかーし。料理は味、匂い、見た目の三つが揃って初めて完成し、初めて真に味わえるもの。


「なあなあお前何してるんだ?」


 ちっちゃくなった魔王さんが厨房を興味津々に覗いてきた。

 料理の概念も魔族には新しいのかな。


「今みんなのご飯を作ってるんだ。よかったら見ていく?」


「うん。でもこんな弱い火で本当に焼けるのか?」


 これでも結構強火な方なんだけど、弱いというのはどういうことだろうか。魔王様はこんがりウェルダンがお好きなのかな。


「もっとこー【地獄炎煉殺(インフェルノフレア)】みたいなの使って……」


 ボンッ。

 魔王様が魔法を唱えた瞬間、キッチンが肉ごと灰になった。


「うわあああっ!!な、何やってんの魔王様!!」


「えっ。だ、だってこんなので焼けるとは思わなくて……ごめんなさい……」


 黒焦げになったキッチン跡を見て僕は焦った。

 あれほど力を封印されてもう残っていないはずなのにこの魔力。

 壺を小分けにしてでもやはり全能力を封印しておくべきだったか……?


 封印しようとする僕の心が分かるのか、彼女はぎゅっと足の方にしがみついてぶんぶんも首を振って涙目になっていた。


 そ、そんな顔するなよ仮にも魔王がさ……

 罪悪感で押しつぶされそうになるだろ。

 食べる前から胃もたれしちゃうよ。


「じゃ、じゃあ魔王様。そこで見ててくれるかな僕の……料理」


「わかった」


 僕は魔王様をロッキングチェアに座らせ、特定席から自慢の料理を披露した。

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