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VS魔王④ 集結

「【分身魔法】!!」


「ほぅ……次は何を見せてくれるのかな?」


 とりあえず一気に5000体の僕に分身させてみる。

 それぞれが意識を共有している高度な分身だ。


「どれが本物か」


「わかるかな?」


「あはっ、あははは!面白いね!!鬼ごっこだね!!いいよ。私が鬼をやろうか!」


 なんてまあこんなのは時間稼ぎだ。

 できる範囲までこの平原から離れつつ、範囲魔法を使ってギルドからの使者の反応を探る。

 そして封印の壺を受け取って即封印!

 こんなに綺麗には絶対決まらない。

 何人か犠牲が出てしまうかもしれない。いうならば賭けだ。


 しかしこんなところで人類が終わらされてたまるか。

 封印を解いた責任は僕自身が取る。

 無数の僕が散り散りになって離れていく。


「はははいーちっ!!」


「ぐっ!」


 まず1体目の僕が触手の餌食になって消えた。

 その気になれば一度に全員を突き刺すこともできるだろう。

 それをしないのはこの遊びに乗っかってくれた魔王の遊び心故だ。

 それもいつ終わりを迎えるのか分からない。

 分身の数に気を配りながら街へと近づいていく。

 遙か遠方から何か近づいてくる感覚がする。


 あれがおそらくギルドが壺を持って行かせた人物だろう。

 分身の残機が余っているうちに接触を図り、隙を突いて封印しよう。


「はははそれにー!さーん!!ふふふ楽しいねぇ!!」


「くそー!分身とはいえ次から次へと自分が串刺しにされていくのはなんだか複雑だぜ!」


 しかも地味に痛覚まで共有してるので、刺殺される度に一瞬だが胸の方が痛み出す。

 それで歩みのペースが止まってしまうのが玉に瑕だ。


「どうかなぁ?このままだと私が圧倒的に有利だ。ハンデとして私は片手しか使わないというのはどうだろうか?」


「それは願ってもみないお話ですけど、腕が多過ぎてどこまでが片手なのかわかりませんね!」


 魔王の触手は確認できるだけで8本。タコか。

 しかしその触手は魚介類やらアルラウネやらのものとは異質な形状をしており、手のようにも見えるし怪物の尻尾にも見える。

 伸縮はすごく自在のようで、現に800メートルは離れている僕の分身もあっさりとその手を伸ばして始末した。

 下手したらこの星の裏側まで届くかもしれないな。


「そうだね。お前にもわかりやすく説明するとここからここまで半分!つまり4本だけしか使わないってことさ!」


「なるほど!!そいつはわかりやすいしありがたい!!」


「だろう?!しーぃ!ごーっ!!」


 しかし片手だけとはいえ、次々と魔王最終形態は分身を消しまくっていた。

 むしろペースは早まったような気がしてならない。


 人外相手に今更だとは思うが、ちょっとずるいな。


 とはいえひとりで戦って逃げ回るより的が分散される方がずっと良いはずだ。

 僕に残された最後の対抗手段は封印しか残っていないのだ。


 逃げ回りながら分身にも補助魔法で援護する。

 進化した魔王の前では紙にも等しい防御力だが、これでもないよりはマシだろう。


「ふっ……相変わらずすごい魔力だねぇ。究極魔法まで使ったのに5000体もの分身1体1体に補助魔法をかけるなんてさ」


「お褒めに預かり光栄ですよっと」


「じゃあこれも受けてもらえませんかね」


 約5000体の僕が一斉に【重力魔法(グラビティ)】を展開し、魔王の動きを止める。

 だからって威力5000倍になんてなりはしない。

 そんなことになったら誰でも簡単に地球が滅ぼせてしまう。

 ま、せいぜい3倍くらいだろう。

 フルの手で魔王がやってきたら2秒も足止めできなかっただろうけど、片手しか使わない宣言した魔王様なら1分は止められる。


「ははは、あははは!いいねいいね!やっぱりこれくらいのハンデはないとつまらないよね!?」


 んにゃろ。笑ってやがる。

 今は愉悦に浸っていてもらいたいところだ。

 でないとすぐにこちらが終わってしまう。


 そうしてようやく街の方が見えてきた。

 よし。まだ分身も3000体以上のストックがある。

 あの人が近づいてくるのももうすぐだ。


「勝負は見えてきた――そう言いたげな様子だねキミ」


 魔王は片手封印宣言から数分も経たぬうちに、両手全開にして触手の雨嵐でまとめて分身たちを消し去っていった。

 まずいっ――勘付かれたか。


「あははは。逆転の一手が途絶えたみたいだね」


「まだ終わりじゃないですよ!」


 しかし出せる分身は精々あと500。

 今残ってるのは1000。既に1/5まで削られてしまった。

 本当に遊ばれていただけなのだ。

 全くここにきて……!いやらしいタイミングで本気出してきやがって。


 なんとか転移魔法で1体だけでも逃がさないと……。


「多重【閃光魔法(フラッシュ)】分身1000体スペシャル!」


「くっ!!眩しい!!」


 よし。不意に目眩しは魔王相手にも有効な手段であるらしい。

 ただしもう二度と通用しない最初で最後の手段であろう。

 一万年くらい経てば忘れてくれるかな?

 分身の1体を感知で把握した職員の元に転移魔法で飛ばす。


 視覚も共有しているので、魔王の様子は転移先でも確認できた。


 まだ気づいていない。大丈夫だ。


「うわあっ!!な、なんだねチミは!」


「すみませんガーベラさんそれもらいます!」


「ん?あぁお久……って何あれ!!めちゃくちゃいっぱいロシュアくんがいるーっ!!いちにいさん……だめだこりゃ」


 ぱっと封印の壺をしまって魔王の元に帰還する。

 とその瞬間。


「ぐわっ!!」


 その場に残っていた分身全てがかき消されてしまった。

 くそ反魔法空間を展開されたか……!


 この領域ではあらゆる魔法を発動することができなくなり、また魔法効果のあったものも一瞬で剥がされてしまう。

 いよいよ本体だけになってしまった僕が触手の魔の手に襲い掛かられる。


「えなにあれ何。何あれ何いやーっ!!」


「ガーベラさん下がって!」


 グサリと貫かれる感覚を覚悟して立ち尽くした。


 ところが腹部や胸部は無事で、魔王の触手は切り落とされていた。


「すまない。待たせてしまったなロシュア!」


「リ、リーネさん!!」


 彼女は刀を構えて魔王に向かっていた。

 何故彼女がここにいるのかわからない。


「なんだ……エルフの小物か。邪魔しないでもらえるかな」


《ほぅ、その姿は……。久しぶりだなド・ヴォル》


 リーネさんに襲いかかった触手攻撃の群れを焼き払ったのはサラだ。


「あれ……キミは確か神様の腰巾着だった女の子……」


《サラマンダーのサラと呼べ。どうだ妾のご主人様は強かろう》


「あぁ。とってもね……だから今楽しんでる最中なんだから殺すよ?」


「そんなことさせません!私たちは全員でロシュア様のパーティーなんですから!!」


「ターシャまで!み、みんなどうして……」


「決まってるだろ。あの恐ろしい魔王を倒すためだ。このクエストは私たち4人が受けたものだろう?ひとりで戦おうなんて水臭い真似をするな」


「そうですよ。私たち、ロシュア様の役に立たないかもしれませんが……精一杯頑張らせてもらいますよ!」


《妾とご主人様は運命共同体じゃ。もう好き勝手1人にはせんぞ》


「み、みんな……」


「うるさいなぁ……キミも、あいつも、みんなみんなさぁ……!ちまちまちまちまとつるんじゃって。結局お前もそんな俗物に過ぎなかったんだね。がっかりだよ。……いいよ君たち全員今から死ぬより怖い思いさせてあげるから」


 そういって魔王様はいよいよ慈悲なき攻撃を浴びせかけてくるようになった。

 サラとリーネさんが援護に回った。


「いってくれ!フィニッシュはキミが決めるんだリーダー!」


「わかった!」


 みんなが命をかけて戦場に赴いてくれたんだ。

 彼女たちの想いを背負ってなんとしてでも僕が封印を成功させるんだ。

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