ターシャさんの秘密
ターシャさんはしがない農村で生まれた女性だった。
誰に対しても平等に優しく、その範囲は牛や羊にまで及ぶほどだった。
魔法とは程遠い田舎の小さな世界だったが、彼女には並々ならぬ回復魔法の才覚があることが判明した。
というのも、彼女が8つになる頃友人が大怪我をした事で、なんとかしたいと強く願った際に、それが初めて発現したというのだ。
村の住民も彼女が『聖女』と呼ばれる人間に相応しいとし、かねてより彼女も望んでいた旅立ちに至ったというわけである。
「……でも、本当は違うの」
ターシャさんは、その力が覚醒したのは相手が初恋の男であったことに起因するという。
幼少期から邪な考えが頭をよぎって仕方ない彼女は、とにかく性に関する目覚めの早い娘だったそうだ。
自分でもそれは自覚しており、それに対して嫌悪感と罪悪感を抱いていた彼女はこれを機に心を綺麗さっぱり入れ替えるべく、聖女として修行を積むことを申し出たという。
ところが。
長らく『禁欲』の二文字を貫き続ける教会と、男断ちをされてより8年も経過し、ふつふつと湧き上がる感情はより一層激しくなったという。
逆効果になったわけである。
そのせいで見境なく男に襲いかかりそうになり、何度か憲兵のご厄介にもかかったという。
そしてそんな淫猥な自分が前に出れば出るほど、魔法の才覚が跳ね上がっていくことに気付いた彼女は嫌気がさして、遂には大聖堂を抜け出してきたのだという。
そんな折に自分を必要としてくれる男性を見つけ、今みたいに馬乗りで押しかけたそうだ。
そしたら逃げられてしまい、半ば自暴自棄に陥ってやけ酒をかっくらっていたところ、あのガラの悪そうな男どもにホイホイと連れて行かれ、今に至るというわけだ。
いやあ……。
それはまた実に難儀な能力なのだなあ。
表向き決して聖女としては相応しくないが、異性に劣情を催せば催すほど聖女に必要な力が増していくなんて。
それに無理やり迫ったとはいえ、男性から――人間から拒絶されたなんて。
ターシャも僕と同じ仲間なんだ。
信じていた人に裏切られ、居場所を求めて彷徨う可哀想な旅人だ。
鼻声で涙ぐむ彼女の冷たく白い手を強く握った。
「大丈夫。僕が一緒に居てあげるから」
「はっ……はきゃううううううう〜ん♡」
今度は彼女が顔を真っ赤にし、うっとり顔でクネクネと腰を揺らしながら悶絶した。
「も、もう耐えられませんっ!さぁ!今すぐ情交を開始しましょう!さぁ!!」
「わ、わわああああっ!!待って待って待ってそんな――あっ」
彼女の獣めいた勢いで僕はあれよあれよと衣服を脱がされていでた。
それもいきなりズボンから。
「はぁはぁはぁ……!」
彼女の呼吸が一段と激しくなる。
僕の古臭くて安っぽい下着を食い入るようにガン見している。
や、やめて。
そんな人様に見せつけて良い代物じゃないの。
乙女のような羞恥心でいっぱいいっぱいになる頃、とうとう本丸に向かって彼女の手がわしゃわしゃと伸びた。
とうとう下着まで脱がされ、下半身だけがすっぽんぽんになってしまった。
「はっ……はうううううっ!!」
「た、ターシャさん!?」
赤面ゲージフルチャージになったターシャさんは、興奮がいきすぎたためか、鼻血を吹き出して気絶した。
そういえば彼女も僕と同じで初めてなんだよな。
いくとこまでいきそうになったのはノーカンということで。
幸せそうな顔つきで倒れ込んだ彼女に布団をかけ、いそいそと下着とズボンをあげて木の床で寝ることにした。
ベッドは彼女に預けよう。
朝起きたら何が起こってるかわからない。
まぁこの様子だと当分起きることはないだろう。
なんだか追い出された時よりどっと疲れ切ってしまったので、その日は硬い木の床だろうとすぐに眠りにつく事ができた。
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