追放side カムイの視点 欠員募集編
ちょっとだけカムイたちの視点で話が続きます。
「は〜……まじですることねぇ。まじで暇」
「そだねー」
「おいソアラ。なんか水着着て芸でもやれ」
「無茶言わないでよカムイ様〜」
「っーかおっせーなールーナのやつ……サボってんじゃねぇだろうな」
ゆっくりと腰を下ろし、机に足を上げて待っていると威勢よく扉が開く音がした。
ルーナだ。よく見る僧侶のエプロン姿に身を包みくいっと銀の眼鏡を釣り上げてクールな微笑でこちらを向く。かーっこいー。ひゅーっ。
「お待たせしました。なんとか候補者を連れてきましたよ」
「よしよしまあ入り給えよ諸君っつつつ!!」
寝ていた上体をようやく起こして俺は立った。
この超Aランクパーティーである『黄昏の獣王団』に入るに相応しい人材かどうかを、リーダーたるこの俺様が直々にチェックしてやるぜ。
俺はカムイ。東の国から来た剣士、いまはソルジャーだ。
最強の前衛職と名高いソルジャーは武器の扱いはもとより、素手での近接戦闘もお手のもの。
白兵戦では向かうところ敵なしの実力を持つみんなの憧れさ。
そんなソルジャーの中でも一際レベルが高いのがこの俺様。
時代をちょっと間違えたら勇者として世界にその名を轟かせて新たな伝説を作っていたほどの男だ。
ちなみに俺の名前は故郷では『神』を意味する単語となっている。
神……勇者なんぞ生ぬるい、世界を救うのではなく世界そのものを司る存在なのだ。
両親も味な真似をしてくれる。
先見の目があったとはまさにこのことで、8歳のうちから俺様は既にどこの冒険者にも勝るとも劣らない実力を発揮し、あっという間にその存在が知れ渡る。
冒険者ランクも初めからAを与えられ、数多くの功績を残してきた。
そっからまぁ色々やり、金、女、メシなどこの世の全て望むもの全てを手に入れてウハウハだった俺は、ついにソロ冒険者を引退し新たにパーティー『黄昏の獣王団』の設立に乗り出した。
魔法の才覚は天才的だが、直感型がすぎるおバカでしかしながら胸のでかいソアラに、それとは正反対に賢く理知的だがおっぱいの小さいガリ勉女のルーナ。
あとなんかゴミ。人数合わせの弾除け要員として入れていたんだが、ある日クビにしてやった(笑)。
だってもういらねぇもんあいつ。
名前さえ思い出せねぇし。
あと金もあいつに支払う分で段々無くなっていきやがるし、偉そーな発言をする割にはライト照らしだの荷物持ちだのほんっとしょーもねーカスみてぇな仕事しかしやがらねぇ始末。
仕事も背も小さいくせに態度がデカすぎる。
あとは自作魔法だなんだとこれまたしょーもねーもんばっか作ってやたら俺の女に色目使ってたみたいだけど。
お前気づいてないだけかもしれないが、ルーナたちは『お世辞』で言ってるだけだぞ??
誰もお前のことなんかこれっぽっちも好きになんかなってねぇんだぞ?もしもーしここに脳みそ入ってますかー?
なんてイッパツ別れ際に言ってやりたかったぐらいだが、最後あいつがソアラにボロカスに言われてしょげてたのを見て満足したのでよし。
まーあれだな?
あーいう世間知らずの童貞野郎が自分は女にモテてると勘違いしてセクハラだの犯罪だのやってるんだろうな。
かわいそうに。
そんなに女に相手にされたきゃそういうお店にでも行ってろよ。
どーせあんなやつ相手にする女なんざ捨て子か金に目が眩んだ娼婦しかいねーっつの。ったく。
俺の素晴らしい覇道を邪魔して2年近くも冒険を滞らせたのは他でもないあいつだ。
あいつの言動にも、もういい加減うんざりしてきたからみんなで話し合って辞めさせたんだ。
ここを聞いても俺って優しいだろ??
フツーなら気にくわねぇやつが見つかった時点で即解雇だぞ。
それを追加で2年、合計で3年も耐えてやったんだから俺ってやっぱ持ってるわ。持ってるし人間ができてるわ。
ここまであの無能を入れてたやつ他にいないだろ。
文句ある奴は役に立たないクズを3年もパーティーに入れてみろって。絶対途中でリタイアするから。
なんか一丁前に悲しがってたみたいだけど、笑う。
場違いすぎて。そろそろ気付けバカ。
そんなこんなで奴を追い出していえい!やったね!
と気分爽快超覚醒俺最高てなってるところにギルドのバカどもが『規則デスノデぱーてぃー二4人入レテクダサイ。ジャナイト冒険デラレマセン』なんて頭おかしなること抜かしてくるから、俺たちAランクパーティーはずっと暇を持て余すという許せない事態に発展してしまっていたのだ。
あり得べからざる異常事態。つーか誰か気付け。
俺たち天下のAランクパーティー様ご一行が、たったひとりパーティーに不在してるからって他のゴミパーティー同様のルールを適用されてこんな掃き溜めみたいな店に隔離されるという理不尽さ。
改革するならこーいう阿保が作った間抜けなルールとかだろう。
そもそもAランクパーティーだぞ??
そんな俺たちに比肩する補充要員なんかそうそういねーっつの。
だから3人でも優秀なパーティーは冒険に出られるようにするとか巻き込まれた人が苦しまないような法律を作れ。
とまぁ現状に不満垂れ流してぐちぐちとぼやくのは二流。
俺たちは天下の超一流。
ルーナのやつに募集を呼びかけて我がパーティに入るのに相応しい人材をこうして探してもらっていたというわけだはい賢い。
他のAランクパーティーならここでぶつくさ不平不満をこぼして結局期限までにパーティー結成できなくて、それまでの資格全部剥奪されることになってただろうな。哀れ。
「はじめまして。カムイさんにソアラさんですね?」
そうして入ってきた面接一人目のやつは可愛らしいピンクの髪をした女の子だった。
可愛いが今ひとつアレだな……こう物足りねえというか。
「そうだが。キミ名前とランクは?最低でもAはないと話にならないから」
「はい!もちろんランクAです!私はミシロです!19歳の魔法使いです!」
「19?!わかいねぇ〜おっぱいのサイズと尻のデカさは?」
それを聞いて一瞬ミシロは顔が硬直したが、すぐさま「胸は78……下は85です!」と答えた。
まあまあの体型だな。しかしやはり売りポイントは弾け飛ぶような溢れる若さ……。
ジロッ。
隣でソアラの冷たい視線が突き刺さる。
わ、わーってるよ。そんなに睨むなよったく……嫉妬心だけは人一倍強えんだからなこのバカは……。
「あのねぇ。魔法使いはウチにもいるんだよねー。まそりゃキミは若いし、ランクAだから文句はないよ?ないけどうちの魔法使いソアラと張り合えるレベルかというと……ちょっと厳しいんじゃない?」
「は、はうう……わ、私なんでもやります!!どんな辛いことにも耐えてみせますから……どうかお願いします!」
ほう?今何でもするって言ったよね??
じゃあ今晩裸で俺の部屋にこようかぁにへへ。
しかし俺が笑ったのが気に食わなかったのか、ソアラはすごい形相でミシロに近づいていった。
「要するに役立たずだけどカラダ売るから入れてってことよね?出てってくれる?そんな汚い女と私一緒になんてやってけないから」
「おいおいソアラ。そんなにムキになんなよ。……ま、仕方ねえやそんじゃちょっと外で待ってろ」
「は、はい……すみませんでした」
そうしてとぼとぼ歩いてミシロは外へ抜けていった。
「はいつぎー」
次にやってきたのは論外のデブ男だった。
「う……おお……よかったなソアラ。男だぞ」
「ぜーーーったいナシっ!!」
「お、おいルーナ……。本当にちゃんと集めてきたんだろうな?」
「ご心配なく。この方は超A級の盗賊ですから」
「盗賊!?マジで!?」
ひぇー……すんげ。そんなの初めて見たぞ。
細い穴どころか太い穴にさえ詰まりそうな肉の塊だったが、一体全体大丈夫なのか?こいつは。
女性陣を見るや否や鼻息を途端に荒くしやがったがこの百貫デブは。
「ええ。この男性は主に貴族の女性用下着を鍵すら用いず誰にも気付かせずに盗むことができる世界でも数えるほどしかいない固有スキル【神業】の使い手でございますから」
「だーっ!!んなもん却下ぁ!!きしょすぎだろ!!」
「ね……ねえねえキミ…………どんなパンツ履いてるのかなぁぐへっへへへ」
「いーやーー!!ルーナもカムイ様もこいつ追い出してー!」
クッソきもい豚を酒場の外へ放り出し、俺は次の面接に向かうことにした。
全く。経歴と人員は選べルーナ。
ていうか何をどう間違ってあんな奴を俺が入れると思ったんだ?
仮に俺が納得してもあんなの絶対ソアラが認める訳ないじゃないか。
それをわかっててやったんだとしたら、これはもう後でお仕置きコースだなルーナ。
その名に恥じぬよう月の見える夜に喘ぎ声を街中に響かせるといい。
「よし次ー」
俺はじゃんじゃん面接官として、次々と候補者たちに顔合わせしていった。
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