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VS魔王①

「遠慮はしないぞ……お前は世界で5本、いや3本の指に入る男だと思っているからな」


「あぁ……そうですか」


 天下の魔王様に認められて嬉しいやら、悲しいやら複雑な気持ちだ。

 まずはほんの挨拶代わりとして魔王は僕の身体を燃やし始めた。

 多分炎魔法の超強いバージョンだ。

 なんかメラメラいってて熱い。


「ふっ。この程度でくたばるお前ではないだろう?」


 まあね。こんなのメテオ六連に比べればなんて事はない。

 しかし服が燃えているというより、なんだか僕の肉体が炎に変換されているみたいな……。


「尤も普通人間ならこれを食らえば一瞬のうちに焼け死ぬがな。耐えている時点でお前もボクと同じ存在ということだ」


「僕は人間だよ」


 自身に再生魔法をかけ、お返しに僕も炎魔法で対抗する。

 こっちは純粋に炎をぶつける魔法だ。

 魔王は炎に包まれながら高笑いをしており、次々と黒い魔法陣を展開していった。


 【闇雷魔法】、【闇氷結魔法】、【闇大地魔法】。

 それぞれ属性魔法に魔王の闇が加わった一撃が一斉に襲いかかってくる。

 当たるはしから大きく後退させられ、余波で大地が消し飛んでいった。

 魔王はその場から一歩たりとも動いていない。

 更に無尽蔵のように怒涛の魔法攻撃絶え間なく放ってくる。

 究極魔法一発で片を付けてこないあたり、まだ遊び心が抜けきっていないとみる。

 遠慮はしないが本気で遊びはする――。

 だが魔王様との戯れに付き合っていられるほど暇では無い。

 魔王が更なる底力を見せて世界を破滅に導く前に早急に気絶なりなんなりしてケリをつけなくては。


 近寄ろうと走って行った瞬間、魔王の手から重力の波動を食らった。


「くっ……!」


「【重力魔法(グラビティ)】」


 足はその場で張り付いたように動かなくなってしまい、力では前へ進むことはできなくなってしまった。


「そう急くな……ボクはもっと楽しみたいのだ。久しく見ぬ強敵の出現であるぞ」


 魔王は深紅の魔法陣を開き、そこから荘厳で禍々しいデザインの長槍を取り出し始めた。


「【魔槍――全てを貫く投擲(ゲイ・ボルグ)】」


 ゲイボルグは神話に登場するグングニルと対をなすほどの大物だ。

 たしか防御力関係なく肉体を貫いてくるんじゃなかったっけ。

 いやいやいや!それはまずい!


「ふふん。どうやらコレについては多少心得があるそうだな」


 取り出した魔の槍を掲げ、こちらに向かってぶん投げてきた。


「あははは!!さぁそれをうまくかわせるかな!?」


「くっ……!動けないところに……!」


 首だけはなんとか動かすことができたので生首一閃の直撃は避けられた。

 しかし標的を逃したゲイボルグは旋回し、そのまま再び僕を突き刺さんと勢いよく舞い戻ってきた。


「危っ!」


 これもなんとか強引に筋肉を折り曲げて回避することに成功した。

 およそ人体ではあり得ない角度にまでねじくれ曲がってしまったが、あとで骨を整えて再生すればなんの問題もない。


 それよりも厄介なのはこの足枷となっている【重力魔法】とどこまでも獲物を狙って離さない神速の魔槍だ。

 しかもあれは避ければ避けるほど速度を増している気がする。

 従ってどこかで当たっておかないと威力・速度共に凄まじい一撃が防御無視で飛んでくる可能性がある。

 生きようとすればするほどその先に地獄を見せる外道な手法を平気で用いるのは流石は魔王といったところだ。

 ここはやるしかない!


「【錬成】――【皮の盾】!!」


 ズボンの裾を引きちぎり、瞬時に錬成式を編み込んで足跡の盾を作り出した。


「ふはははっ!!そんなものでゲイボルグが防ぎ切れるとでも!?」


 思っちゃいないさ、流石にね。

 でもとりあえず何かに突き刺しておけば致命傷は免れる。

 ゲイボルグは舞でも踊るようにゆらゆらと揺れ、高速でこちらに向かってきた。

 僕はそこで立ち止まって盾を突き出した。


「今だ!」


 盾が僕の盾を貫いた瞬間、さっと手を離して【転移魔法】を使って魔王の背後に移動する。

 不意を突かれた魔王が僕の存在に気付いた時は防御が間に合わず、拳の一撃を頭に浴びせて遠くに吹き飛ばした。


 硬った……!

 これでも【鋼鉄化魔法】に【腕力増強】、【衝撃増幅】といだた基本的な基礎補助魔法をガンガンにかけた拳だったんだけど。

 殴ったこっちの拳が砕け散って手からは血が垂れてきた。

 すぐに再生で修復したが、思えばとんでもない防御力だ。

 いや、防御すら攻撃に変換しているというか。


 やれやれ魔王。なんでもありだな。


 無論魔王も一撃で沈むほど貧弱でもなく、殴られた頭を押さえて笑い声を上げていた。


「ボクが叩かれるなんて何世紀ぶりのことだろうかっ!!あーっはっはっは!!」


 すごい笑ってるよ。怖い。

 次は拳でなく剣でやってみるか。

 これで気絶してくれればだいぶ楽になったんだけどな。


 サービスショットを突き当てた褒美として、魔王は全身に力を溜めるような仕草を開始し、大気を震わせていた。


「お、おいおいまじかよ……!」


「我に一撃を浴びせたこと……褒めて遣わすぞ自称ただの人間よ。しかしそれもこれまでだ……見せてやろう我の本当の姿を!!」


 魔王ちゃんだった可愛らしい生命体は一気にバキバキの厳つい筋肉質の怪物に変化していき、少女の面影なんか微塵も残っていなかった。

 赤く染まって光を放つ鋭い目に全身が青紫で硬そうな肌に変わり、髪の毛は伸びきって段々と翼のように変化していった。


「さぁ――第二ラウンドといこうか」


 開幕の挨拶に魔王は口から怪光線を放ってきた。

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