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楽しい楽しい初夜ですね……♡

「ふぅー疲れたね……」


 怒涛の一日を終え、ゆっくりと疲れを癒すべく良さげな宿屋に入っていった。

 カウンターにさっき手に入れた金貨一枚を渡して、まずは一泊していくことにした。お釣りはきちんともらった。

 当分はのんびり過ごせそうだが、これだけではダメだ。

 きちんと働いて自給自足生活をせねば。

 そういえば聖女……ターシャさんはどうするつもりなのだろう。

 なんか成り行きで着いて来ちゃってたけど……。


 二人分養うとしたら尚のことこんなところで落ち着いていられないな。

 早くギルドでクエストでも探して手頃な資金源にでもするか。


 ふかふかのベッドがある寝室はとても快適な空間だ。

 ゴロゴロするたび首の骨から腰にかけて癒されていくみたいだ。


 あぁ〜たまらん。

 コリというコリがほぐされていくぅ〜。


 などと呑気にベッドを堪能しているとガチャリと扉が開く音がした。

 あまりにも急な出来事で心臓の準備ができていなかった僕は思わず叫びながら転げ落ちそうになった。


「た、ターシャさん!?ななな何ですか。もう寝る時間ですよ?」


「ふふ……ふ。ええそうですね勇者様……ですからこうしてきたんですよぉ」


 半分目がハートになってる状態でターシャさんは爆速で部屋に侵入すると、さりげなく隣までやってきた。


 きょ、距離が近いです!聖女様!

 髪の毛からいい匂いが漂ってきています!

 早くも僕のクソザコな理性が崩壊しそうなので離れてください!


「ロシュア様……今晩は楽しみですね……!」


「こ、今晩て……な、何さそんな……」


 彼女の両手が艶かしくも僕の左腕に絡みつき、胸の谷間に吸い込まれた後に挟まれてしまった。

 な、なんだこの大胆すぎるアプローチは。

 なんかぽよんぽよんしてる!

 心臓が高鳴る。呼吸が荒くなる。

 やばい。

 ってなんかさりげなく心臓の位置まで接近されてるし。

 生命握られてる感がしてやばい。


 これもしうっかり聖女様が実は女アサシンとかで「かかったな阿呆が!私はお前を暗殺するためにカムイ様から雇われたんだよ死ねヒャッハァアー!!」とか言われて毒のナイフなんか突き刺されたらアウトだぞ。

 こんな美人に殺されるなら死んでも本望かなとか数分前の僕ならそう思ってたかもしれないが冗談じゃない。

 今は死んでたまるかって感じなのに。

 しかし振り解こうとすればするほど腕はターシャさんの肉体にがっちりとロックされていき、とうとうその美しい唇が剥き出しの肩をなぞるように触れた。


「ひいっや!」


「あら……ここが弱いんですね……♡」


 僕の反応を一部始終楽しんでおられる彼女は、あちこち耳の裏から首筋にかけて口付けをしてきた。

 こ、これなんてプレイですか……!

 くすぐったいような、なんというか、新しい世界の扉を開いてしまいそうな……。

 そんな事が体感軽く10分くらい続くと、いよいよ本番と言わんばかりに彼女は上着を脱ぎ始めた。


「な、なにしてるのターシャさん……」


「今晩は……楽しい初夜になりますね……うふふ」


 白い下着に覆われた豊満な果実に、白く美しいふっくらとしたお腹にヘソ、それにパンツまでもが露わになった。


 頭が沸騰したやかんのようにピーピーと煙を撒き散らしながら真っ赤になっていったことだろう。

 やばい。これ以上は刺激が強過ぎる。

 生まれてこのかた早17年。

 女性と触れ合った事なんて幼児期以外一切なかった僕にとって、こんな立て続けに親密なことをされると脳の処理が追いつかなくなる。


 何度必死に目を背けてもつい見てしまうのが男の悲しい性。

 哀れ。欲望には逆らえぬ。


「じっくり見ても良いんですよ……ターシャのカ・ラ・ダ」


「あああ、あの……ターシャさん……そういうのはもっとこうしたっ親しんでから……ですね」


「私はもう勇者様を十分お慕い申し上げております!さぁどうかこれを!」


 そうして彼女が渡してきたのは金属器の腕輪だった。

 これは言わずと知れた契約に使用されるものだ。

 契約とは様々であり、人間と人間、人間と亜人、人間と精霊またこれらの逆など主従関係を結ぶ際にこの金属器が使用され、契約を交わした者は以降ずっとその人の言いなりになるという恐ろしい代物だ。


「私は今日まで誰とも契約せず、ずっと……ず、ずっと純潔を守り通して来ましたの!さあ!さあロシュア様!!」


 そ、そんなにお腹を突き出してこられても……。

 僕にはあなたを契約してがんじがらめにしようとなんて……。


 知らぬ間に恐ろしい手際の速さで腕輪が取り付けられ、僕の返答を待たずして腕輪が彼女のへそあたりに触れる。

 すると腕輪がピンク色の光を放ち、ターシャさんの下腹部に紋様らしきものが刻まれていく。


「えっ?えっ?えっ??」


 そして僕の左手のひらにも同じような紋章が刻まれた。


「ふふふ。これで一応仮ですが契約は完了しました。私はロシュア様の従順な(しもべ)……いえ犬として扱ってくださいませ!」


 な、なんかすごい元気良さげにとんでもない宣言をしてくれちゃってますけど!

 ていうか本人の意向に関係なく契約ってできるんだ。

 へーすごいなぁー!昔はお互い血とか出さなきゃいけなかったり、無駄に長い誓約書とか書かせてたような気がするのに。

 進歩ってすごいんだなぁ!


 じゃなくて!


「とりあえずおちちちおちつこ?」


「お乳を突く?触るならおっぱいから……と言うことでしょうか」


「違う!断じて違う!!離れよう」


 契約のために左手が一旦自由になったのをいいことに、僕は彼女を少しだけ離した。

 彼女は目に涙を浮かべてぷくーっと睨んでいた。

 泣きたいのはこっちなんだけどなぁ。


「やっぱり私じゃダメなんですか!!前にもそうやって男性から逃げられちゃったし……やっぱり初めての女は嫌なんですか!?」


「ま、待って待ってどどどういうこと?」


「……私、実は聖女じゃないんです」


「えええ!?」


「厳密に言うと聖女になるために修行を積んだんですけど、うまくいかず、あちこちから追い出されちゃうし、挙げ句の果てにあんないかつい男たちに売られそうになって……その……」


 話すうちにひっくひっくと泣きじゃくる彼女の肩に手を触れ、僕はとりあえず話を聞いてあげることにした。

 触った瞬間無性に顔つきが元気になった気がするけど気にしないでおこう。うん。

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