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勇者様との激突!?!

「俺様は偉大なる天っ才勇者!!剣士に勝る剣術と賢者を超越する魔法力を兼ね備えた稀代のカリスマ。世界、救わずにはいらねぇぜ!!光の勇者アルフレッド様だ覚えとけ!!」


 長ったらしい口上を噛まずにペラペラと述べて、そいつは光を浴びてどーんと構えていた。

 酒場中が困惑の苦笑いを浮かべていたことは言うまでもなかろう。


「ちょっとあんた。いきなりやってきて勇者とか抜かしてるけど……ランクはいくつなわけ?」


 ターシャさんはとても不快そうに怒りを露わにしている様子だった。

 聖女である彼女にとって勇者とは特別な意味を持つ言葉なのだろう。

 それをそう易々と使ってくる男にはどうしても我慢ならない何かが感じられたと推測する。


「ふっ……これだからトーシロさんは……。俺は貴様らみたいな低俗なギルドごときが定めたランクなどという矮小でちっぽけな概念には囚われない……まぁ敢えて言うならレベル0――つまりアンノウンということだ」


「なによそれ。ただの底辺ランクってことじゃない」


 バッサリとターシャさんは言い切った。

 それを指摘されても稀代の勇者様はどこ吹く風という余裕の笑みを浮かべていた。

 ちなみにギルドにアンノウンやレベル0などの制度はない……。

 つまるところ勇者様は勘違いの痛い人ということになってしまう。


「それで、どうしようか。もう今からまた出発するか?」


「おいおいそこのエルフのキミぃ。何この俺様を無視して話を進めようとしてるんだぁ?俺様が1人居ればいいと言ったろう。お前たちはそこでママのパイパイ咥えて大人しく座っていればいいんだ!」


「……と言っているが」


 無論大人しく待っているというわけにはいかない。

 魔王復活の責任がある以上、僕たちは絶対に行く必要がある。


「悪いけど、僕たちも行かなければならないんだ」


「ふっ……全く。物覚えの悪い奴だ。大人しく座っていれば痛い目に遭わずに済んだものを……」


「何何喧嘩?おっ?ギルドスタッフとして全面的に応援しますよ?」


「いや止めてくださいよガーベラさん。普通そういうのはダメなやつでしょ」


 ガーベラさんは止めるどころか囃し立てている様子だった。

 酒場内の客全員にドリンク配りと、どっちが勝つかの賭け金まで徴収してるあたり抜めない。

 完全に試合楽しんでるノリだ。

 おいおい……。


「仕方ない……ここは本物の勇者の力を見せるとするか……まずは全開の5――いや1%を出すとしよう」


 ポキッと勢いよく鳴らした腕から何やら鉛のようなものを取り外し、木の床に落とした。

 腕輪は床を突き抜けてめり込み、そのパフォーマンスに観客がどっと湧いていた。


「すげー!」


「誰がその床直すと思ってんの!?」


 ガーベラさんはドヤ顔勇者に対してタライを投げつけた。

 怒るところそこかよ。


「さっ、きたまえ。どこからでもこの鋼のヴォディーが受け止めてやろう」


 得意げに胸をパンパンと叩き、顎を天井に向けて身をのけぞらせていた。


「それじゃ遠慮なく」


 人間といえど相手は伝説の勇者様らしいから、【腕力強化】、【鋼鉄化魔法】、【衝撃増加】を徹底して追加してその硬そうなお胸に拳を食らわせてやろう。


「えい」


「うぼぉごぉ!!」


 勢いよく殴りつけた拳は、勇者の体に深くめり込んでいき、そのまま彼を酒場のカウンターまで吹き飛ばした。


「あれ……?」


 ギャラリーは歓声を上げて手にある食器や酒瓶を投げ合っていた。


 ……もしかして弱い……?


「ぐふっ……くっ、中々やるようだな」


「……口からケチャップ漏れてますよ」


 慌てて勇者は口元を拭って再び立ち上がった。

 拳の跡がついた胸部を押さえながらプルプルと小刻みに震えていた。


「だが次は油断しない――全力の50%を、いや75%をばぁああっ!!」


「あ、ごめんまだ終わってないと思って」


 蹴りをくらった彼は、今度は天井に突き刺さって下半身だけぷらんとぶらさがってうめいていた。



 ……この勇者、弱いぞ……。

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