パーティー結成?
次なるクエストは蘇った魔王の封印。
こう聞くとなんか勇者とか賢者とかそういう伝説系の職業の人がやる壮大なやつに思えてくる。
しかしどうしようか。壺はバラバラにぶち壊れてしまってるし、再生で直そうにも僕が元の形を知らないからなぁ……。
知らないのにぶつかって壊した記憶があるってのもおかしな話だが、さっきやろうとしたらできなかったのだ。
もう一つ考えられる可能性としては、破片自体に強力な障壁魔法がかけられており、あらかじめ施された封印魔法以外の物は一切受け付けないような作りになっているということだ。
おそらく【退魔封印】なんか目じゃないほどの超強力な封印術がかけられていたのだろう。
しかし、地面に落としただけで割れてしまうとはなんとも難儀な……。
まぁそんなだから誰も近寄らない洞窟の奥地の、更に祭壇まで丁寧に作ってそこから動かしたり簡単に壊せたりしないようにされてたんだろうけど。
やっぱりあの日僕は行くべきではなかった。
カムイたちを止めはしたが、聞く耳なんか持ってくれなかったので僕だけでも居留守すればよかった。
腰抜けと言われることがなんだ。
臆病とか罵られるよりも世界が平和であることの方がよっぽど良い。
大勢の人様に多大な迷惑をかけてしまっていることに比べたら僕ひとりが恥をかくくらいどうってことは無いはずだ。
とはいえ過ぎたことを悔やんでも仕方ない。
今は前向きに封印について考えよう。
「そうね……。私も出来る限り早く壺を復活させるわ。幸運にも全てのピースが揃ってるからやろうと思えば3日もいらないと思うわ」
「ありがとうございます」
3日か……うーん。
その間魔王が瘴気を撒き散らしてモンスターを量産しないことを祈るばかりだ。
どこかに閉じ込めておければいいんだが……。
うーん難しい。
「まあ封印するだけとはいったが、相手は魔王だ。大昔の存在とはいえ闇の頂点に君臨していた怪物であることに変わりはない。各地のギルドからも勇者クラスの実力者を派遣しているから安心しなさい。ちなみにウチの勇者はアナタねロシュアくん」
「えっ?ぼ、僕ですか?」
「Aランクモンスターだって物ともせずに沈めるその実力……十分勇者を名乗るに値する人物だと私は思ってるわ」
そうかなぁ。
荷物持ちでちょっと鍛えた補助魔法使い……くらいが関の山だと思うんだけどなぁ。
そういやターシャさんにも勇者様と呼ばれてしまったな。
しかし勇者を名乗るにしては装備が地味すぎるな。
「なぁに。男は見た目よりハートさハート!ガッツでぶつかって思い切りやってこい!」
「は、はい」
彼女は僕の臀部を勢いよくズボンの上からばちこーんと叩いて闘魂注入してくれた。
まあ色々考えていても仕方ない!
世界各地の勇者さんと一緒に戦ってなんとかしよう。
「あ、ちょっと待って」
研究室を出る前、ダリアさんが席を立ってこちらに歩み寄ってきた。
「なんでしょう」
「キミのお尻……いい形してるわね」
「!?」
「ねぇどうかしら。キミさえよければなんだけど、ちょっとあそこで服脱いでこれをお尻にぶちこませてもらっても――」
「失礼しました!!」
もうそれはわき目も振らず過去最速の早さで扉を閉めて逃げましたよ。
うっすらと見えた彼女の手に握られていたのはなんかの触手のようなものだった。
……た、多分ここんところ研究のし過ぎでちょっと頭がおかしくなってしまったんだよ。うん。
元からそんなシュミがあった人だなんて考えたくもない。
でも冗談半分にしては目がマジだったんだよなぁ……。
当分僕は安心してあの部屋の椅子に座れないぞ。
何が仕掛けられているかわからん。
などと疑心暗鬼に陥っていると、背後からぽんと肩を叩くものがあった。
「うわああああああっ!!」
「うおっ、ど、どうしたロシュア。私だ。そんなに驚くこともなかろう」
「な、なんだリーネさんか……」
「……研究室で何かあったのか?」
「え、いやまああったといえばあったけど」
貞操が狙われかけた話はなかったことにしよう。うん。
かくして彼女を交えて、僕はさっき話してきたこと全部伝えた。
流石に事が事だけに動揺を隠しきれないものもいた。
「でも……私やりますよ!」
真っ先に立ち上がったのはターシャさんだった。
「放っておけば世界中の罪なき人が魔王の手で不幸になってしまうんですよ。そんなの絶対ダメです!ね?ロシュア様」
「うん。それだけは何としてでも止めなくちゃ」
《なら話は決まっておろう。かの魔王を焼き殺し、再び奴を薄暗い封印の底に沈めてしまおうではないか》
「あぁ。魔王討伐は一族の成し得なかった悲願でもある。亡き先祖に代わって不肖及ばずながらこの私も戦おう」
「みんな……」
全員の決意は固かった。
超難度クエスト・魔王討伐/封印にも臆する事なく前進する姿勢だ。
すごいなぁ。君たちこそ本物の勇者と呼ばれるに相応しい人たちだよ。
「よし、じゃあやろう!」
「はい!」
《なあなあ。それじゃあ妾たちでそのぱーてぃーとやらを作らぬか?》
「えっ?」
《前はご主人様と妾、娘を入れて3人しかおらんかったが、今はエルフの女がおるじゃろ。ほれこれで4人じゃ》
「確かにそうですね……それにパーティーを組んでおけば私たちの冒険もさらに広がりますし……」
「で、でもリーネさんの事情も考えないと……」
「あぁ私は別に構わないよ。兼業なんてお手の物さ」
リーネさんと全員の了承を得たので、僕たちは晴れてパーティー登録を行うことにした。
「その必要はねぇ!」
バン!と酒場の扉が勢いよく開かれた。
「お前もお前も、そしてお前らも。ここにいる全員旅に出る必要はねぇ。――何故なら」
その男はサークレットを額につけ、風に乗って真っ赤なマントをたなびかせ、腰にある黄金の剣を光らせていた。
「この俺が選ばれし勇者だからだ」
「な、何なんですか?あいつ……」
勇者と名乗ったその男は銀髪のツンツンヘアーと紫の双眸で入り口にドヤ顔で立ち尽くしていた。
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