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少なくとも僕たちはいつも通りです♡ 〜こんなんでホントに探索大丈夫なのかトホホ〜

「ちょ、ちょっとまってくれ給えロシュアよ!!い、今何をしたのだ?!」


「え。何って【封印魔法(シール)】だけど」


「いやいや!それもだが、まずその前のあれはどういうことなんだ!!キミがこうちょんっとひと殴りしたりだけでベヒーモスの硬い皮膚が身体ごと消し飛んだのだぞ!?」


「あぁ。それは色々強化魔法を使わせてもらったからできたんだ。今度やってみてよ」


「できるか!!そんな事できるならとっくに使ってるし魔法なんてほぼ無意味になるわ!」


 これまで比較的ボケに回ることの多かったリーネさんの珍しいツッコミぶりを見れてなんだか新鮮な気分だ。

 そうか。補助魔法とか色々使うのって普通じゃないことだったんだな。

 人間よりも大分強くて上級者のリーネさんが見てもおかしいんだから、やっぱりこれはそうそう簡単にできるものじゃないらしい。


 でも一つ一つは本当にありふれているような、地味なものばかりなんだけどな。


「確かに私も補助魔法を使うことはできるが……キミみたいに複数同時に発動させて片手で倒すなんて真似はできないぞ」


「あははやだなぁ。流石に僕も片手で全部やれるわけないじゃないですか。ちゃんと右手と左手で交互に発動させましたよ」


「聞けば聞くほどキミがつくづく化け物じみた力の魔法使いだということしかわからないのだが……なぜそれほどの実力を持ちながらどこにも所属しておらず、名が知れ渡っていないのだ?」


「全くですよ」


「パーティーには所属してたんです。Aランクの超凄腕の。……ただそれ、ちょっと前に追い出されちゃいまして」


「なんだと!?そんな愚かしい話があるものか!!これほどの逸材が一人でもいれば国家級――いや伝説にさえなっても不思議じゃないのだぞ!?それを自ら手放すなんてどういう思考構造になっているんだそのパーティーは!」


 僕が色々そのパーティーについて、主にカムイたちについて感情論抜きで詳細を語る度にリーネさんは理不尽に対する怒りに満ちていき、聞いていたみんなも同調して怒っていた。


「度し難い連中だな……。こんなにも強くて逞しい好青年をぞんざいな荷物持ちに……いや、荷物持ちという名の自分達に都合の良いサンドバッグにして弄ぶなど……正直理解に苦しむな。第一キミを追い出したからといって、その代わりが務まる人間など果たしているのか?私には大賢者か勇者くらいしか居ないと思うのだが……」


「それに話を聞いている限り、そのリーダーのカムイって人絶対ロシュア様より強くなさそうですよ。なんでしょう、もうロシュア様への嫉妬で追い出したとしか思えませんよ」


「いやそれはないと思うよ。あいつは自分より強い相手がいたらなにくそと執念から一念発起して、強くなった上で見返すようなタイプだから。本当に僕が必要なくなったから追い出しただけだと思う」


 何気にイメージも重要視しているような節があり、パーティーメンバーは僕以外全員容姿端麗で才能のある者たちばかりだった。

 僕はといえば…………なんか今思い返したらずっと居ないもの同然の扱いだったな。

 クエストクリア後の打ち上げ飲み会には誘われなかったし、カムイたちが揃って何かに参加する時も、僕だけ別席に座らされていたし。

 恐らく欲しかったのは何でも言うことを聞いてくれる小間遣い。

 決して逆らわず、自分たちの意のままにできていらなくなったらいつでも使い捨てられるような存在。

 落ちこぼれ1人入れておくことで誰彼問わず分け隔てなく接することができる「なんと慈悲深いパーティーなんだろう」と演出することができ、ランク参照や見栄えなどAランクに傷が付きそうな不都合である状況には隔離して3人パーティに大変身。


 なんとも酷い話だが、振り返ってみるとどうしてもそうとしか取れない。

 あの頃は追いつこうと必死だったこともあるからだろう。

 幸せとは優れた彼らに認めてもらえることであり、またそんな彼らに必要とされることである。

 そう思っていたから追放を言い渡された時はすごく悲しかったし、本気で自害しようと追い詰められてしまったほどだった。


 今は仲間にも囲まれ、自分自身を認められるようになって幸せだからこう思うのかもしれないが、あんまり幸せじゃなかったんだなあのパーティーにいる時って。


「いやそりゃあ誰でもそうだろう。私なら一日もかからずに辞める自信があるな。全員にこの世のものとは思えないほど手痛い仕返しを行ってからな……ふふふ」


 リーネさんの美しい瞳が妖しく光出す。

 エルフの考える手痛い仕返しなんて想像するだけで身震いする。


「私もそんな態度取られた時点でいつでも抜けてやりますわ。だってそんなブラック過ぎるパーティーにいたって何も楽しくないですわ」


「うーん……そうだったんだろうなぁ」


《主ら……もう少し状況というものを考慮せぬかこのたわけが。ご主人様にとっては生まれて初めて巡り合ったぱーてぃーだったのだぞ?その存在はあまりにも大きく、まだ右も左もわからぬひょっこであった当時のご主人様にとってそいつらは神様のような存在であったことは想像に難くなかろう。そんなぱーてぃーを盲目的に信じてしまったご主人様を誰が責めることができよう。少なくとも妾には無理じゃ》


「サ、サラ……」


 今サラが、かつて僕の抱いていた感情の要因とか気持ちのあれこれ全部詳細に説明してくれた。すごい。伊達に一万年以上生きた精霊じゃないぞ。封印が解けてからポンコツな部分が目立つばかりだった彼女だが、やっぱり上級の精霊であることに違いはない――ということを改めて痛感させられた。


「そ、そう言われると……」


「す、すみませんロシュア様。ロシュア様のお気持ちも考えずにこんな無神経な発言を……」


「二人とも良いんだよ謝らなくても。二人がちゃんと怒ってくれるから、僕は救われるんだから」


「で、ですがせめて……」


「それでも……せめて」



「「罰として私の身体を自由にしてください!!」」


「ハモったー!!最悪の組み合わせで女の子二人が最低な内容でハモったー!!」


 似たような変態が二人に増えると流石に対処し切れなくなるよ!?

 えっ。これどっち選ぶのが正解なんだ?

 いやいやそもそもどっち選ぶとかないから!

 どっちも大切な僕の仲間だし!!


「じゃあ私は下を!」


「うむ。では私は上を!」


「ってどさくさに紛れて僕を脱がすなぁあ〜!!」


 その不意も不意の不意過ぎる不意を突かれた挙動に、僕の頭が混乱し、下半身と上半身がスースーし始めた。


「サラも見てないで助けて〜!!」


《……やれやれ。まったくぅ!いつもこーなるんだからっ》


「なんでそんなよくあるまとめ役ポジションで話を〆ようとしてるの?!あっ、そこは……いやーっ!!」


 これから禁断の地に向かうというのに、僕たちは未だ平常運転の状態で互いにじゃれあっているだけだった……。

 お陰でダリアさんからの連絡が念話装置にかかっていたことに、しばらく気付けなかった。

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