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戦闘終了!!

「サラ!頼む!」


《任せろじゃすおおおおっ》


 火の精霊サラマンダーのサラがベヒーモスの放った業火を吸い込んだ。

 火の粉を余すことなく食べ尽くしたサラは、何事もなかったかのようにぽんぽんとお腹を叩いてげっぷした。


《ふん。口ほどにもないとはこの事じゃな。お返しにほれっ!本物の火を見せてやろう!!》


 そして今度はサラが灼熱の炎を吐いた。

 ベヒーモスの巨体が炎に包まれ焼かれていった。

 見るからに熱そうな光景だったが、ベヒーモスは大して驚きもせずに身体中火に焦がされたままこちらに殴りかかってきた。


「やはり効いてないか……」


 ベヒーモスとは初めて戦う魔物ではない。

 その経験から言って、奴は強いだけでなくとにかく硬い。その一言に尽きる。

 超一流魔道士であるところのソアラの強烈な魔法攻撃を受けても、ベヒーモスはその分厚くて硬い装甲でびくともしていなかったのだ。

 逆に奴の放ってきた呪文は並の人間が扱えないような高度なものを、事前準備も無しに一瞬で――しかも連発してきたのだ。

 素の防御力・攻撃力も馬鹿みたいに高いのに、魔力まで高いレベルにあるのだ。

 初見ではまず勝ち目のない大物だ。

 結局は強化魔法を受けたカムイの攻撃一閃でなんとか倒す事に成功したのだ。

 ちなみに僕はその時囮役兼荷物持ちだった。

 あのベヒーモスと同種ではない様だが、これまでの性能を見る所そう大差ある個体でもなさそうだった。

 こうして直接対決するのは初めてだったが、経験がある以上幾分かこちらに有利な状況だ。

 今度はさっきまでと違いこちらの陣営には戦える人間がさらに1人追加されているのだ。


 森羅万象斬で魔力を大分持っていかれてはいるが、その剣術は未だ衰えることを知らないハイエルフの女戦士――リーネさんが。


「はぁあああっ!!」


 鉄と鉄がぶつかり合うような轟音を鳴らし、彼女はひたすらベヒーモスを狙って刀を振るっていた。

 どちらかが壊れてもおかしくなさそうな音と威力に見えたが、どちらも全く刃こぼれひとつ、体表には傷ひとつ付いていないという一進一退の攻防だった。


「斬撃でもまるで通用していないな……くそっ!」


「だったら僕が!」


 ベヒーモスの前に身体を突き出し、右拳に力を込める。


 よし。今ならみんなそれぞれ距離を置いて散り散りになっているし大丈夫。

 ちょっとくらい本気出しても各々が対処して十分安全を保てるはず……!


「グゥァァア!!」


 それまで一切の声を上げてこなかったベヒーモスが、けたたましい雄叫びを周囲に響かせた。

 威勢やよし――

 何せ相手は天下のAランクモンスター様だ。

 アルラウネの時の反省を活かして、できるだけ肉体を残したまま倒して回収しよう。


 右手の拳に【身体強化】、【重力付与】、【加速付与】、【筋力増加】、【衝撃増加】そして絶対に避けられないように【焦点確保(ピンポイント)】を重ね掛けする。

 さらに左手から対象を任意の時間停止させられる【停止凍結(ストップ)】の魔法を発動し、守備力を無視する【反防御(アンチガード)】の魔法を右手に付与する。

 おっとそうそう忘れてはいけない。

 うっかり魔法を口走られ逃げられても困るので【沈黙(サイレント)】の魔法も付けておく。

 これによりこちらの攻撃は確定で相手に当たり、どうにか気絶までは持っていけるかもしれない。

 まずは足からだ。

 これで翼を持たぬベヒーモスは魔法や自身の能力で逃げることも叶わず楽に確保することが可能になるだろう。

 なお対象を停止させれば再生も行われなくなる。

 ただし、元からかけられた魔法は解呪できないままとなる。

 そのためもう一度ストップをかけて対象の時間を動かす必要がある。


 これを利用すれば毒状態といった状態異常にしたまま対象を捕獲するというクエストもクリア可能になる。

 何せモンスターというのは死んで間も無く魂が天に還って跡形もなく消えてしまうので、毒のまま殺さず生かしたままアイテムボックスに詰めたり、そのまま連れてきたりするのは極めて困難になるのだ。


 解体もモンスターを剥ぎ取った瞬間にそれは【モンスター】ではなく、【アイテム】として扱われてしまうため、モンスターとして回収するためにはストップをかけたまま連れてくるしかない。


 このストップだが、なかなか成功しないし仮に成功したとしてもいつまでも効果があるとは限らないなど、玄人向けのピーキー過ぎる魔法だ。

 効果時間の長さはその人の魔力依存だとか、初めから設定された時間制限だとか色々言われているが、どれが本当なのかは不明。


 さぁ。その足止めさせてもらうよ。


「えい」


 ぐにゃん。

 目前の怪物が突然空間ごと姿を歪ませ、その後ベヒーモスの下半身は綺麗さっぱり消し飛んでしまった。


「あああっ!!」


 またやってしまった。

 これはやり過ぎだ。魔瘴Aランクモンスターの貴重な下半身を飛ばしてしまうなんて。

 まあ今回はちゃんと綺麗に上半分残ったからよしと……してくれるだろうかダリアさん。


 いきなりベヒーモスは腹の下を失ったベヒーモスは先程みたいな雄叫びや悲鳴を上げることすら許されず、そのまま固まって動かなくなってしまった。

 どうやらストップも成功した様である。

 ふぅーよかった。こいつ上半身や下半身がなかろうと首だけになっても動き回ることができるとんでもないタフネスを持ってる化け物だからな。


「【封印魔法(シール)】」


 すぐさま奴の肉体に『封』の紋章をつけてアイテムボックスに叩き込む。

 ストップが切れても二重保険で奴はもうギルドに着くまで箱の中から動けない。

 着いたとしても大方ダリアさんによって実験対象にされるだけだから自由にならないという意味では結局一緒だが。

 強敵を撃破し凱旋すると、それをみていたみんな――主にリーネさんがぽかーんと口を開けて僕の顔を見ていた。

 

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