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エルフの戦士、登場

「もう大分歩いてきたなあ」


 僕たちはギルドを抜け、平原を突っ切って北東の方角へと向かっていた。

 地図に記された地帯によるとそこはかつて僕がAランクパーティーに所属していた頃に訪れた難関ダンジョン『禁断の地』付近だった。

 Aランク相当のパーティーでようやく出入りできる危険な地帯だから、当然今の僕たちでは追い返されてしまうだろう。

 しかし僕らがアルラウネを撃破した事と、その戦利品を持ち帰ったことで特別に侵入を許されるようにダリアさんがライセンスに設定してくれたという。

 いつの間にそんなことを……と思ったが、クエスト終了の際全員ライセンスをギルドに提出する必要があるから恐らくその時だと推測してみる。

 何やら楽しそうに鼻歌を歌ってスキップしているターシャであったが、僕にはちっともそんな風に楽しめる余裕なんてなかった。


 禁断の地付近から魔瘴が溢れ出ている――ということはその辺にいた魔物はより強大なものに変化している可能性さえあるのだ。

 C相当の魔物でさえ、下手をすればAランクに匹敵する強さの魔物になるといえばその恐ろしさが伝わってくるだろうか。

 ターシャさんを守りながらとなると、集団で囲まれた時が一番最悪の展開となる。

 パーティーにいたときは何度もA級の怪物を相手取ってきた僕だが、流石に大勢のAランクモンスターと戦闘した経験は無い。


 そもそも禁断の地の周辺に強めのモンスターが跳梁跋扈しているというのに、魔瘴のせいでそれが更に強大化しているというのならもっと強いモンスターのいるダンジョン内はどうなっているのか……。

 考えただけで鳥肌が立つ。

 さっきから頭を離れない不吉な予感でいっぱいになってるし、今回ばかりはちょっとヤバいかもしれない。

 なんて今になって思い始めてきたのはいつも僕の悪い癖だ。


 思えばカムイたちのパーティーに所属している頃から僕はこうだった。

 彼らが前人未到の危険な地帯に赴こうとした時、最初はその場のノリで可決するんだけど、いざ訪れてみたら想像以上にシビアな世界で「やっぱり引き返そう」などと思ってしまっていた。

 既に後戻りできない場所でこんなことを考えてもどうもしようがない。

 うーん……まぁいざとなればカムイたちとは違って『撤退』も考えられるから大丈夫か。


「どうしたんですかロシュア様?さっきからずっと険しい顔をしてますよ」


「えっ、あっ、うんごめんね。ちょっと心配でさ……」


《主は愚かものか!ご主人様はな、これからたいへん危険な場所に行くんじゃということがわかっておるからずっと悩んでおるんじゃ。妾たちを守り切れるかどうか、いやそもそも無事生きて帰れるかどうかとな!主も正妻になると抜かすのならそのくらい察せぇ!》


「なによ!私だって遊びじゃないって分かってるわよ!でも私、信じてるから。ロシュア様ならどんな怪物が相手でも必ず倒してくれるって」


「お、おお……お」


 珍しく真剣な語り口調でそんなふうにまじまじと見つめられてしまったらドキドキしてしまう。

 信じてる――そんなことハッキリと言われたことなんて今までなかったな。

 いつも期待を裏切られた、とかそもそも信じていない、とか色々言われてたから。

 これは僕の力不足以外何物でもないのだけど、そんな半人前より劣る僕を見ても彼女は信頼してくれているのだ。


 これはやはり僕が気合入れて頑張らないといけないな。


「よし!」


 頬をペチンと両手で叩き、気合注入した。

 辛気臭い考えと陰険な顔つきはもうやめだ!

 目の前にある課題を全力でこなしていこう。

 今は仲間がいる。一人じゃない。


 不安もあるが、まずは先へ進んでいこう。


 そうすること進んでいった先の平原は、とうとう草や木も一本足りとも生えていない荒野とも呼べる場所にまで差し掛かっていった。

 足元の砂や岩がゴツゴツと硬く、歩きづらいことこの上ない地帯だった。

 ひとまず『範囲感知』で周囲の魔瘴を探ってみる。

 まだこの辺は微かに漂っているだけだ。もうここは通り過ぎた後ということになる。


「あの向こうですか?その禁断の地って」


「うん。もうちょっと先にいけば見えてくるはずだけど……」


 ――その刹那だった。

 何かが凄まじい轟音と共に風を切るものが聞こえてきたので、咄嗟にしゃがんで退避した。

 すると見つめた先には刀と思わしき銀色の何かが煌めいており、その後サラが「危ない!」と叫んだ。


「……ほぅ。あの娘が叫ぶ前に私の気配に勘付いていたとはな。これでも一応、殺気はずっと殺してきたつもりなのだがな」


 切られる直前まで全く気が付かなかった。

 声の主を見てみると、1人のエルフが刀を構えて立っているようだった。

 それも女性。

 幼さと大人っぽさの中間にあるような雰囲気を出しつつ、整った顔立ちをしており、目は左右で微妙に色が異なるオッドアイ。エメラルドグリーンが右目で、ターコイズに似た青色混じりの緑色が左目だった。

 すらっとした体型、華奢な首元から見える全体的に白い肌。

 とんがった耳。透き通るように美しい銀にも見える金髪。


 その特徴からいって上級(ハイ)エルフだろうか。

 ハイエルフは羽の生えた小さなエルフとは異なり、人間のように直立二足歩行し、人語も流暢に操れるため、しばしば人間社会に正体を隠して参加していることがある。


 そんな謎のハイエルフが何故僕たちを襲ってきたのだろうか。

 さっとターシャさんを後ろの方に寄せる。


「僕たちはギルドから正式な依頼を受けてこの近辺を調査しにやってきた者たちだ!お前は一体何者なんだ!」


「ほぅ。やはりそうか。……知っていたさ。キミたちがあちこちで魔瘴をばら撒いている張本人だとな」


 あれ。なんか話が噛み合ってないぞ。

 何で僕たちが原因みたいになってるんだ。


「ふん。大方ギルドの連中に嗅ぎつけられそうになったんで、自分の撒いた種を回収しにやって来たって算段だろうがそうはいかないよ」


「あの……何かすんげー誤解をなさってると思うんですが」


「我が名はリーネ!誇り高きハイエルフの戦士だ!!悪しき瘴気を蔓延らせる元凶め。一族の使命と正義の名に於いて、貴様ら悪党に天誅を下す!!」


「だから何で!?」


 しかしあちらさんは聞く耳持たずの状態で、手にした刀を振り回してこちらに襲いかかってきた。

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