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追放side 〜黄昏の獣王団②〜

「よーしそんじゃみんな〜今日も一日ご苦労さんっ。てことでーかんぱぁあい!」


「かんぱーい♪」


 一日を特に何もすることなく黄昏の獣王団は今日も今日とて酒場の中に入り浸っていた。

 両手にたっぷりのお酒が入ったジョッキを抱えて、ルーナが二人に手渡しする。


「おぅサンキュ、ルーナ」


 カムイはおつまみの焼き鳥と細っこい魚か何かのフライを串に刺し、それらを丸ごと口に放り込んだ後、手にしたお酒をがぶ飲みしていった。


「ぷっへぇあ!生き返らぁ!!」


「ほーんと美味しい〜マジ天国なんですけど〜」


 快楽と極楽の渦に飲み込まれ、いつも通りの熱狂で盛り上がりを見せるAランクパーティーの一行に、物申したげな顔で店主が後ろで咳払いをした。


「あ、あのですね……すみませんがお客様、そろそろお金も尽きそうなようですし……この辺でもういい加減に……」


「あん?何だよオッさん。俺たちがこのまま払わねーと思ってんのかよ」


「あっ、いいいいえですね!?そ、その……ウチとしても無銭飲食されるのは困るといいますか……」


「心配するないずれ払う」


「そーそー。なんてったってアタシらはAランクパーティーだもんね〜」


「はははそうそう。ま、そういうわけだから。足りない金はツケといてくれやオッさん」


「は……?い、いやいや何をそんな……」


「あぁ?せっかく俺たちAランクパーティー様ご一行がこんな客の来ないチンケな酒屋に来てやってるんだぞ?それなのに何だその態度は」


「い、いえ客がこないのはあんたらが四六時中騒いで怖がらせているからで……ひっ!」


「おーまーえーさー。ココにちゃんと脳みそ入ってる??えていうかバカなの?今の説明がわかんなかったの?アタシらが潰れそうなお店にわざわざ助けに食べてあげてるの。アタシら居なかったらこの店とっくに潰れてんの。それ分かって喋ってるの?」


 天使の微笑みとは対極の位置にある、冷徹で邪悪な表情にソアラは変化しており、店主を胆で圧倒していた。

 震える店主が腰を抜かして地に落ちる。

 それを見たソアラが甲高い声で笑い声をあげていた。


「ていうか金払わないなんて言ってないし。後で払うってんだし。こんなゴミみたいな店の出すちっぽけな材料費なんか、アタシらがクエストクリアすれば一発でお釣りがくるんですけど。ねぇ金の計算できるんでしょ?それくらいちょっとは考えてから喋ったら?ねぇ。本気でこの店潰そうか?」


 倒れ込んだ店主の頭を掴みかかって、ソアラは彼の顔に唾を吐きつけた。


「カンタンだよ??アタシらがこの店は客に対して横暴を働いたサイテーサイアクのお店だって言いふらせば、その噂があーっという間にギルドに知れ渡って、隣町の隣町の、そのまた隣町にまで悪評が広まってさ。おっさんもうこの国で二度と商売できなくなるんだよ??」


 掴んでいた髪の毛を雑に放り投げ、彼女は突然にっこりと微笑み出した。


「よかったねアタシらがまだ優しくて♡」


「ひっ……!」


 それを見た店主の顔はひどく青ざめており、この世のものとは思えない地獄の一端を垣間見た様子でその場から走り去って逃げ出した。


「やれやれ。相変わらずだなソア。そんなんじゃ将来付き合うことになっても、相手の男が逃げちまうぞ」


「アタシが付き合うのはカムイ様だけだしぃ〜?別にいいもーんだ」


「ははは。全く、お前ってやつは。けどな。男は口が立つ女よりも少しくらいバカっぽい方がお好みなんだぞ。……こんな風にほれっ」


「いやぁんおシリ触ったぁ〜」


「そことここくらい頭柔らかくしてみろって」


「もぉ〜カムイ様のドスケベ大王〜」


 しきりにソアラの胸を鷲掴みにした後、何か思い出したようにルーナに話しかけた。


「そういやルーナ。お前のとこで探してもらってる追加メンバーの件、あれからどうなってる?」


「……私たちが天下無敵のAランクパーティーと知って、どうしても加盟したい!という者たちが大半ですが、その反面私たちの理想とする者は未だ現れておりませんでした」


「やはりそうか……まぁ、有象無象の連中に俺たちと肩を並べられる存在を期待する方が間違ってんのか……。にしてもそんならいっそのこと妥協してみるか?」


「だーめっ。そんなことしたらまたアイツみたいな陰気な奴が入ってくることになるよ?……えっと誰だっけ。あーだめだ名前忘れちゃった」


「俺も覚えてねーが……ええと確か名前は……『トリッシュ』だったよーな『グレゴリ』だったよーな……うーむ」


「『レックス』ではなかったでしょうか」


「そう『レックス』!!それだ!!……あいつみたいな屁理屈屋で慎重でお人好しの鈍間なんかに、俺たちの何が分かるってんだよな。今思い返しても腹が立つぜ!!……そういやあいつがいた時のダンジョンでさ、ひとつだけおもしれーのがあったよな?!」


「ええ。たしかあの時は……洞窟にいって奥底に何かツボがありましたっけ……」


「そうそう。俺が華麗に叩き割ったあと、あのバカ――レックスを連れてきたらよ。あいつったら自分がやったとすっかり騙されて思い込んでやがってさぁ!!あん時のあいつの驚いたような顔傑作だったよなぁ」


「あはっ、あははは!や、やめてよもぅ!

 アタシまで思い出して笑いが込み上げてきちゃったじゃん!」


「いやー悪い悪い。……にしてもあのツボなんだったんだろーな。奥に意味深に置いてあったけどさ」


「……恐らく冒険者に対する一種の脅しかと。いかにも触ってはいけなさそうな物が目の前にあると、この先何かある!危険だから引き返さないと!なんて発想に陥るそうですから」


「なるほどな。あいつみたいなビビってばっかで大したことない口先だけのカスの牽制のためにあんなガキのおままごとみたいなオブジェが置かれてんのか。全くもっていい迷惑だな」


「まぁ何も起こらなかったようなので、その線である可能性は極めて高いでしょう」


 メガネを意味深にクイっとさせると、カムイは退屈そうに天井を眺めていた。


「あーあ。俺たちもなんか特別なことがしてぇなー」


 机の上に足を乗せて、腕を後頭部に交差させて退屈そうにしていた。


 メンバー追加有効期限まであと28日。

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