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いざ、クエストへ!①

「よし。それじゃあ……」


 【雷魔法】に【風魔法】を合成し【雷風竜巻(サンダートルネード)】に変化させ、

 【重力魔法】、【風強化】×2、【雷強化】×2。

 更に魔法そのものの威力を底上げする【魔力増幅】に【爆発魔法】を付与……。


 超合成魔法【爆雷大嵐旋風殺(サイクロンストーム)】の完成だ。


「やりましょうか……」


「まってまってまってまって。何を!?」


 僕が片手間に魔法を合成しまくって超巨大台風のようなものを錬成していくと、獣人受付嬢ガーベラさんの顔はどんどん蒼白なものになっていった。


 いやぁ。何せ四天王最強の実力を誇るとされるガーベラさん相手ですから。

 もうランクは決定しているとはいえ、全力をもってお相手させていただかなければ失礼かと……。


「よし……じゃあいきますよ……」


「わーっ!すみませんすみませんごめんなさい!嘘です!冗談です!四天王なんていません!許して許して!殺さないでーっ!」


 目に大粒の涙を蓄え、鼻水を撒き散らしながら彼女は必死で全力の命乞いをみせてきた。なんだ冗談だったのか。

 作って損した。


「はーっ……はーっ……まだ生きてるよぅ……生きててよかったぁ……」


「……そんなに?」


 まだこうして対面して5分も経ってないのに彼女だけ50年くらい時が経ったみたいに老けたぞ。

 そんな死の危険と恐怖を味合わせるようなものだっけこれ。


 ともかくこれで僕とターシャは晴れてギルド公認のランクD冒険者になることができた。

 あとはサラだけだった。

 彼女は退屈そうにスライムを焼き払い、小悪魔を消し炭にした後、あっという間にゴーレムを灰にした。

 タイムで言えば僕より圧倒的に早かった。


「あっ、ハイ……ええとこれで全員合格です」


《こんなもんかのぅ。歯応えないわい。やはりお主ともやらせろ》


「いやすみません。ご勘弁を」


 ちなみにサラだけは【Aランク】の冒険者となった。

 戦績を思えば当然といえば当然である。

 出来立てほやほやのライセンスを握りしめ、僕たちはそのままクエストを受けることにした。


「クエストってどんなものですか?私興味津々です!」


 元聖女見習いのターシャさんが目をキラキラと子供みたいに輝かせながら僕に尋ねてきた。

 今日が何せ人生初クエスト挑戦になるのだ。


「ああクエストっていうのはね、冒険者の助けを必要としている人たちがギルドに依頼手続きを申請して、それを受諾されて認められたものが僕たち冒険者に【依頼(クエスト)】という形で提示されるものなんだ」


 それはもう薬草の採取から魔物の討伐といった本格的なものや、果てはペットの捜索までとにかく幅広く多岐に渡る。


 また、ギルドによっては取り扱うクエスト内容が異なるものもあるが、これは地理や依頼主とのアクセスの関係で最も手間暇かかることなくクエストを達成できるようにするためとか言われている。

 クエストは内容によって難易度が設定され、薬草採取や荷物を指定された場所まで運ぶといった簡単なものはF、ドラゴン討伐や未開の地に赴くなどが高難易度のA。

 そして神話クラスの生物と戦って勝つことなどがSである。


 余りにもパーティーもしくは個人のランクと設定されたクエスト難易度に隔離がある場合、ギルド側から受注拒否されることがある。

 うっかり素人さんが興味本位で怪物退治に乗り出して全滅してしまわないための配慮だ。

 ご存知の通り、クエストの挑戦は飽くまでも受けた本人の自己責任になるため、その最中にいかなる事態が発生しようとギルドは一切の責任を取らない。

 責任は取らないが、罰は与えてくるので好き勝手にできるというわけではない。

 たとえばパーティーにおける7条にも記載されているが、仲間同士で殺し合ったり、成果品をきちんと献上しないまま勝手に追加報酬を要求したり、冒険者が力や悪知恵を使って依頼主を脅すような真似は認められない。

 尤もクエスト終了後は必ずギルドに立ち寄らなければならないため、結果の書き換えや依頼主に直接会いに行ったりする行為はそもそもできないようになってるのだが。


 たまにそういうルールを無視するような輩が現れる時があるが、その時はこのライセンスからギルドに向けて発信される冒険者個人の魔力信号をキャッチし、クエスト中であるにも関わらず不審な行動が見受けられた冒険者の元に直行し、不正行為を取り締まる手筈になっている。

 このためライセンスを捨てたり紛失したりした場合は受けていたクエストそのものが問答無用で破棄されることになり、一からライセンスの作り直しとなる。


 これはどんな者にでも適用される絶対的なルールである。


 故に不正は施しようがなく、自分で自分の首を絞める愚かな行為になりかねない。

 またそういった不正行為を何度注意しても働くような人物はブラックリストにぶちこまれ、ライセンス発行の際にはっきりくっきり消えない印をつけられるようになる。

 どこで何回作り直しても、その人が死んだ後も永遠にライセンスに記録される消えない傷である。


 これを見たギルドや依頼主は「あっこの人は過去に何度も違反を繰り返した人なんだ」ということが一目瞭然となるわけで、これは冒険を送る上で凄まじいディスアドバンテージとなる。


 そうならないよう、冒険者もギルドも一丸となって健全かつ公正で公平なやり取りが行われるよう厳正な審査がなされているというわけである。


 なお依頼主に関しては、クエスト終了後クリアしたパーティーや冒険者に会って提示していた報酬を手渡しても良いが(冒険者から会いに行くのは不可)、必ずギルドの職員の確認が必要である。

 まあつまりクエストクリアしたら寄り道せずとっととギルドに帰れよと。

 クリアできなくても結果報告のために帰れよということだ。


 ――てなわけで、これらを踏まえて早速クエストやってみよう。


「うーん……色々あって目移りしちゃいますね……あっ、そういえばどのくらい難易度とランクが離れていたら受けられないんでしょうか」


「そうだね……大体2つ3つくらいだね。A難易度ならCまで……でもギリギリ断られる可能性もあるから、今の僕たちが受けられそうなのは最高でCからだね」


 Aのサラだけは大抵どんなクエストでも受けられるけどね。

 パーティーも組んでないし、3人が3人個人個人で受注する形になるから、必然サラはランクの低い僕たちに合わせてもらうことになる。


《妾は構わんよ。ご主人様の行くとこについていくだけじゃ》


 それはとてもありがたい言葉だった。

 よーし。じゃあとりあえず初日だし、まずは簡単なのからいくか。


 僕は難易度Fの初心者用クエスト、薬草採取を受注することにした。

 後の2人も全く同じものを受注する。

 これ自体は別に問題ではない。ただ高難易度のクエストを受注した人間が、更にランクの高い冒険者に協力を要請して自分は何もせず手柄だけを不正に受け取るなどの寄生行為は原則として禁止されている。


 よって彼女たちは自力の実力でクリアしてもらうことになる。


 といっても薬草採取にそんな実力も何もないのだが。


 クエストを受注し終えた僕たちは、いよいよその冒険に向けて華々しい一歩を踏み出していった。

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