適性検査と実力測定②
「おおお、おちちちおちおちおちおつくぁせぬふじこ」
「受付さんが一番落ち着いてください!」
湧き上がった数値を確認して、泡を吹いたり舌を噛み噛みだったりと、阿鼻叫喚の地獄だった。
「いちにいさん……すごいこれ何個数字あるんですか!?数えても100万以上はありますよ!」
僕もこんな数値見たことがない。
確か前に黄昏にいた頃、カムイたちが見せてきた最高の数字がカムイの攻撃力『500』だった気がする。
すごい結果でわいわいギルドを沸かせて、彼も有頂天になっていたものの、今の僕はざっとその16000倍はあることになる。
何回考えてもおかしい不可思議な数値だったが、そのあと大きめの機械でターシャさんを測定したら全く同じ数値が記録されたので、どうやら故障ではない事が証明されてしまった。
「い、いやぁ何だこの数値は、たまげたなぁ……」
余りの衝撃でガーベラさんは尻尾をぶんぶんさせて失禁していたが大丈夫なんだろうか。
汚した床を掃除することもなく、彼女は次にサラを測定しようと新たなサンドバッグ=クンを出そうとしていた。
「あっ、待ってください。僕が直しますから――『再生』」
壊れた壁も存在ごと消滅したサンドバッグ=クンは何事もなかったかのように元通りになった。
しかし壁に関しては周囲の少しくすんで腐った部分も目立つ木材とは異なり、新品同然のツヤツヤになってしまったため、そこだけ異様に目立つ壁になってしまった。
「あーいやいや別にいいですよ。そんな些細なこと。なんならリフォームと称してロシュアさんにこのギルドを丸ごと焼き払ってもらってその後『再生』していただいても構わないくらいなので」
「構うよ!!どんな使い方なのさ!!」
「本来はそう使うためのものでは!?!」
いや彼女のいうことも尤もなんだが、そんなめちゃくちゃな……。
なんだか魔王みたいだぞ。
サラが生まれ変わったサンドバッグ=クンの前に立ち、拳に力を込めた。
「いいですよ!思い切りやっちゃってくださ〜い!」
《でやっ》
そんなサンドバッグ=クンの人生(物生?)だったが、生き返って間もない数分後に、再び全身が灰となって消え去り、さらには僕が壊しちゃった壁とは別の部分が焼け落ちてしまった。
「うひゃぁあおおおおお!」
その方角には年代物のワインやら非常用の食料などがあったようで、彼女は白目を剥いて絶叫し、再び失禁し始めた。
「『再生』!」
焼け落ちたはずの全てが以前のように元通りになった。
流石に連続で大きいものに『再生』を使うとちょっとしんどいな。
ワインの方は……大丈夫なんだろうか。
この場合、せっかく熟成していた中身がまた熟成のし直しになってしまわないだろうか。
「あーそんなの気にしなくていいよ。新品のワインを熟成済みのワインと交換すればいいんだし」
「そんなリサイクルマーケットみたいな事ってある?」
やれやれ。まさか再生にこんな活用法があったとは。
僕も壊れたものとかほつれたものにしか使ったことがなくて、それに冒険が後半になるにつれ、こういう能力ってどんどん使わなくなっていったから分からなかった。
やがてサラの測定結果が記入されていった。
ていうかすごいなこの自動筆記機。
サンドバッグ=クンもう跡形も無くなったっていうのに、2回ともきちんと結果を記してくれるなんて。
――――――――――――――――――――
実力測定 結果
測定者:サラ
性別:不明
種族:サラマンダー
実施者:ガーベラ
以下全て推定値
攻撃力 :1980
防御力 :2200
回復魔力:1000
攻撃魔力:5200
俊敏性 :980
体力 :21000
器用さ :300
総合判定:A+
特化判定:A+ランク魔法使い
あなたは 魔法職に適正があります。
――――――――――――――――――――
「お、おお……流石精霊ですね」
《くああ〜。もう何をやっても妾が霞んでしまううー。いやーここまでくるともう天晴れじゃご主人様よ!妾は一生ついていくぞい!》
「ちょっと!何勝手にお嫁さん宣言しちゃってくれてんの!?」
《……誰もそんな事しとらんわい》
「ロシュア様と一生一緒に添い遂げるのは私! 墓場まで渡さないんだからっ!」
《好きにせえ》
一通り全員の検査を終えたガーベラさんが、いよいよ本番だと言わんばかりに前へ不気味な笑いを浮かべてやってきた。
「な、なんですかガーベラちゃん」
「ふふふ。これで終わったとお思いになられるなよ……これからきみたちには最後の試験が待っているのだ〜っ!」
だーっだーっとセルフエコーをさせて彼女は得意満面に平坦な胸を突き出して宣言した。
「最後の試験?」
「そう。いよいよ実力試験の本番!これを見て諸君らの推定ではない最終ランクが決定するのだ!!」
彼女が手をかざすと酒場の受付奥にある棚が開き、扉が目に入った。
「お入りよ」
手招きされた先の空間は一面黒の何もない場所だった。
「ここは特別な戦闘場でね。基本的に壊したり外に音が漏れたりしないから、存分に戦ってくれたまえ〜」
「といってもどちらと?」
すると地面から緑光色の魔法陣が発動し、そこからどろどろとした怪物――スライムが現れた。
「まずはシケン=クン1号!彼と一戦交えてもらおうか!持ちうる技の全てを駆使して相手を倒せ!危なくなったらこちらから中断し、その時点で試験終了となります!」
「なるほど。ところであと何戦あるの?」
「全3回でルール無用のデスマッチさ」
ガーベラさんは興奮気味に叫んだ。
「よぉし。やりますわ見ててくださいロシュア様。こんなスライム、アーメンみたいなものですから!」
「うん。頑張ってね」
その例えがどのくらいの難易度を示し、またどの程度適切なものかはわからなかったが、とりあえず応援することにした。
攻撃魔法を覚えていなさそうなターシャさんは、プルプルと蠢くスライム相手に素手格闘の戦闘を申し込んでいた。
しかしスライムのゼリー状の肉体は捉えようがなく、逆に彼女がスライムによって全身飲み込まれてしまった。
「くっ、こんなもの!」
彼女は懸命にもがいたが、そうすればするほどスライムは段々と彼女の身体を包み込んでいき、しばらくするとターシャさんの服をじわじわと溶かしていった。
「あっ、ちょっと!や、やめくすぐった……あっ、やぁん!」
「うわっ!なんたるエロティック!!」
思わず鼻血が出そうになった。
「おかしいですな!ウチに服だけ溶かすスライムくんの実装なんてまだやってないぞ!」
「くっ、ピンポイントな性癖を突いてくるじゃないか……!」
飲み込まれた彼女は淫乱なスライムによって、破れた服の破片が局所を隠していなければほとんど全裸状態にまでなってしまっていた。
「やぁんっいやぁん!」
「あーっと!これ以上は運営から怒られそうだから早急にやめさせねーと!!」
「運営って誰!?」
「決まってんでしょーが!ギルドの運営さんですよ!」
ガーベラさんが試合終了の宣言を行おうとしたその時、
ターシャさんが紫色の光に包まれ、下腹部にはハートの紋様が浮かび上がった。
「うふふ……よくも好き放題やってくれたわね……お仕置きの時間よ♡」
「な、なんかターシャさんの雰囲気が変わった!?」
説明しよう!
元々性欲の強い彼女は、長らく禁欲生活を強いられたことで自分の中に『ドスケベ淫乱パワー』を宿すようになってしまったのだ。
普段は清楚系痴女だが、衣服を脱いで肌を露出すると体内のピンクエネルギーを全開にし、ただの痴女になるモードが発動するのだ!!
「いやそれもうただの痴女じゃん」
というかガーベラさん。
いきなり地の文に割り込んでこないでよ。
それに何で彼女の身の上を知っているんだ。
って……そういえば仲良さそうにしてたっけ。
しかしなんだその唐突な説明おじさん口調は。
いい加減僕もツッコミが追いつかないぞ。
かくして痴女と化したターシャさんは誘惑するような悪魔的な微笑みを浮かべ、そっと投げキッスを飛ばした。
するとそのキスから魔法陣と共に炎が飛び出し、スライムの肉体に穴を開けた。
そこから(何故か最後まで脱げていない)彼女は脱出を果たした。
「さぁ……カクゴしなさい……うふふふっ♡」
そして彼女はたわわに実った両胸を持ち上げるような仕草を取り、セクシーポーズ全開でスライムの頭上に巨大な火炎玉を召喚した。
「『炎魔法』っ……♡」
特大フレアを一身に浴びて、スライムくんは灰になって昇天した。
今の詠唱モーションだったのか。
「勝者ぁああああち……ターシャちゃん!!」
「いま痴女て言いかけなかったですか?」
全てを終えた後、突然彼女は正気に戻ったように身体をばっと手で隠した。
「きゃぁー!なにこれ!恥ずかしい!」
「…………今更?」
散々裸同然で練り歩いていたじゃないか。
どうもそのなんたらモードが終わると、火が消えたように冷静になるんだろうか。
「説明しよう!!彼女は淫乱ピンクモードが終了すると、失った魔力を回復させるために『賢者タイム』に突入し、それまでは忘れていた羞恥心や知性に理性を取り戻したのである!」
「何から何まで最低だなぁ……」
そして彼女にガーベラさんは服を与えて、そのまま2回戦へと突入していった。
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