虚偽の申告
「で、あんたらは誓って壺は割ってねぇと」
「ああ。俺たちはむしろ止めた側だぜ。なぁお前ら?」
「え、ええ……」
「そ、そうよ。あたしらは何もやってないわ」
いきなり裁判所に連れて行かれたから何事かと思っちまったが、どうやら俺たちには何の関係もなさそうだ。
ったく冷や汗かいたぜ。
だが、これはまた神より賜った大きなチャンスだ。
ここで今絶賛力を持って調子こいてるロシュアの野郎を地の底に落とし、俺たちが再びA……いや絶対無敵のSランクに返り咲き、失ったものを全て取り戻す。
そのためにもこんなところで尻尾を掴まれるわけにはいかねぇ。なるべく冷静にかつ慎重に、着々とあいつをハメるための準備を進めていくとしよう。
「それによザイムさん。他ならぬロシュア本人が罪を認めているってんだろ?それで良いじゃねぇか。判決は下された。ロシュアの有罪!100年懲役!終わり閉廷!以上解散!てなもんよ」
「う〜んそうできたら簡単なんだがな」
なんだ。こんだけ完璧に揃っているというのにまだ不満があるというのか。
「いやね。証拠の壺とか洞窟の状態から判断するにどうもロシュアくんを犯人にするには不自然な点が多すぎるんだよね」
ま、まさか。
いやいや。流石にありえない。
第一あの場には俺たちしかいなかった。
他の誰が捜査・介入しようと無駄なのだ。
「そ、それによ。ほら。あいつ2回目の封印とやらは自力で解いたんだろ?完全に黒じゃねぇか。魔王の持つ絶大な力に溺れ魅了され、世界を我が物にせんと封印を解いたに違いねえ。力だけ封印したって話も、全ては魔王を意のままに懐柔しようと目論んだ結果だろうぜ」
「なるほどね……。ま、いいや。とりあえずあんたらに聞くことはこれで終わりだから。あとは裁判でどうにかしよーぜ」
ふふん。ようやく分かったかこのポンコツめ。
職員が無能だと上が苦労するって話は本当だな。
こんな結果のわかりきった裁判にいつまで時間をかけてやがる。
俺が国王なら今すぐクビにしてやるぜ。ロシュアみたいにな。
「ね、ねぇ大丈夫なの?」
「あん?」
誰もいなくなった執務室でソアラのやつが耳元でひそひそと囁いてきた。
「壺の話!もしかしたらショーコもってるかもしれないじゃんか!あたしらが割ったって……」
「けっ、ばーか。大丈夫に決まってんだろ。割れた壺を拾い集めて直そうとしましたとか適当なこと言っとけば良いんだっつの」
「そ、そうかな」
「何聞かれても知らぬ存ぜぬ分かりませぬで貫き通しておけばオールオッケーよ。それに何よりあのロシュアの馬鹿正直者が未だ俺たちの冗談を間に受けてんだから絶対大丈夫だ。覚えとけソアラ。より確からしい犯人がいればそれっぽい容疑者は全部白になるってこった」
「流石カムイ様!あったまいい〜!」
「全く……お前は少しくらいここ使って考えることをしてみろ。なぁルーナ?」
「えっ?」
「お前はとっくに俺様の意図を気付いていたよな?お前も賢いからなぁ」
「そ、そうですね……もちろん知っておりましたよえ、ええ」
よしよし。
風は俺たちに向かって吹きはじめた。
証人になったら俺たちがあることないこと語り尽くしてやればいい。
それをあのバカロシュアが認めれば即終了だ。
あいつの判決は有罪、そして死刑――!
力を持つが故の驕りだなロシュア!
時として凄い力というのは自分の首を絞める諸刃の剣ともなるのだよ!!
お前はそのすげぇ力で俺たちを切り離したつもりだろうが、今度はお前自身がその力にぶっ刺されて断頭台に処されてしまえ!