漫才『接待』
二人「よろしくお願いします」
ボケ「今日は僕らの特徴と名前だけでも覚えて帰ってくださいね。この通りイケメンで良い声してる僕、橘と」
ツッコミ「自分で言っちゃうんだ」
ボケ「隣にいる、ここにいるのかいないのかさえ疑わしい存在感の無さが特徴の男、南です」
ツッコミ「俺の紹介の仕方!何だよ、存在感の無さが特徴って!」
ボケ「仕方ないだろ?お前の存在感の無さは凄まじいんだから。この前だってファミレスで何回呼んでも店員さん来てくれないから自ら厨房に入って行ってたじゃん」
ツッコミ「あれは単に店員さんが忙しかっただけだから! 存在感が無さすぎて気付いてもらえなかったわけじゃないから!」
ボケ「でも、厨房入ってもしばらくの間誰にも気づかれなかったじゃん」
ツッコミ「いや、それも店員さん達が忙しくて――」
ボケ「いい加減、現実見ようぜ?」
ツッコミ「励ますような口調で言うな! 本当に俺が存在感薄いキャラみたいになっちゃうだろうが!」
ボケ「大丈夫。お前の存在感の無さは本物だ。――例えるなら、コンビニ弁当に添付されてる割り箸と一緒の袋に入ってる爪楊枝くらいの存在感だ」
ツッコミ「爪楊枝!?弁当の横についてる割り箸でさえ時々ついてるの忘れちゃうくらいなのに、それ以下の存在感の爪楊枝!?」
ボケ「今日からお前のことは“つっくん”と呼ばせてもらうおう」
ツッコミ「爪楊枝語源の新しいあだ名つけてんじゃねぇよ! つまようじの“つっくん”って最早俺の名前無くなってるからね!?」
ボケ「まぁまぁ、つっくん、落ち着けって」
ツッコミ「さり気なくつっくん定着させようとしてんじゃねぇよ! 大体、そんなあだ名つけられる程存在感薄くないから!」
ボケ「まぁいいや。――あ、そう言えば、存在感無いってところで思い出したんだけど、『営業マン』って楽そうな仕事だと思うんですよ」
ツッコミ「おい、二重の意味で全国の営業マンの方々に謝れ!」
ボケ「いやいや、だって事実でしょ。だって毎日公園の脇に営業車停めて寝てるだけでいいんだろ? いや、でもサボってるところをいろんな人に見られている時点で存在感はあるってことになるのか。だとしたら、さっきの発言はお詫びしなきゃな――全国の営業マンの皆さん、『存在感が無くて、楽そうな仕事をしてる』というニュアンスの発言をしてしまい、すみませんでした。『存在感抜群で、実に楽そうな仕事をしている』と訂正させていただきます」
ツッコミ「お前、もし、営業マンの人がデ○ノート拾ったら、真っ先に殺されるぞ」
ツッコミ「大体、サボってる人達だっていつもサボってるわけじゃないから。業務時間外でも大変なこととかたくさんあるし」
ボケ「例えば?」
ツッコミ「例えば、接待の飲み会とか」
ボケ「なんだよ、あれこそ楽勝じゃん」
(設定に入る)
ツッコミ「いやぁ、今日は君と飲めて楽しいよ。これは長い付き合いになりそうだな」
ボケ「部長に楽しんで頂けて良かったです。まぁ、僕もつまらないのに我慢して付き合った甲斐がありましたよ」
ツッコミ「ごめん、もう少し本音は隠そうか。お互い気まずい感じになっちゃうからね」
ボケ「いやいや、冗談ですよ、冗談!」
ツッコミ「なんだ、冗談か」
ボケ「ホント、部長とこれ以上関わり続けるとか冗談じゃないですよ」
ツッコミ「うん、君、失言にも程があるよ。――おい、お前全然接待できてねぇじゃねぇかよ!」
ボケ「悪い悪い。ちょっとあの、あれ、あれで本調子じゃなくて」
ツッコミ「言い訳下手くそか!――もう一回最初からな」
(設定に入る)
ツッコミ「今日は君と飲めて楽しいよ。これは長い付き合いになりそうだな」
ボケ「ありがとうございます(笑)僕も部長と飲めて楽しかったです(笑)」
ツッコミ「(笑)外せぇ!」
ツッコミ「もう一回!」
(設定に入る)
ツッコミ「今日は君と飲めて楽しいよ。これは長い付き合いになりそうだな!」
ボケ「ありがとうございます。僕も今日は部長とお話できて良い時間が過ごせました」
ツッコミ「そうそう。そういう感じだよ」
ボケ「(キョロキョロしながら)ところで部長、今はどちらにいらっしゃるのですか?」
ツッコミ「ここだよ! 存在感ちゃんとあるから! 冒頭のやり取り蒸し返してんじゃねぇよ!」
ボケ「ところでつっくんさ~」
ツッコミ「今は部長だよ! そして素の状態でも爪楊枝のつっくんじゃねぇから!――おい、さっきから全然接待できてねぇぞ? 接待なんて楽勝なんじゃなかったのかよ?」
ボケ「いいんだよ、そんなのできなくたって。俺は今日の漫才でもっと大切なことをお客さんに伝えることができたから」
ツッコミ「は? なんだよ、それ?」
ボケ「ほら、お客さんにお前の最大の特徴を伝えられただろ?」
ツッコミ「だから俺の特徴“存在感の無さ”じゃねぇから!」
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