第79話 ハルトへ繋がる情報7
合流してから俺達は三人で資料を探していた。
「しかしこれだけ資料があると何が何だか……それになんて書いてあるかサッパリで」
やはりだ。
この建物内の資料は全て日本語で書かれているんだ。
俺がたまたま日本人だから読めるものの、やはりこの世界ではイレギュラーな存在なんだろうな。
という事は強制スキル発現薬の事について書かれているものがあったとしてもカナタ達は読めない可能性があるから、カナタ達では探すことは出来ないだろう。
実質俺一人で探すことになるのか……こんなに資料がある中から一つの資料を見つける――砂漠で一本の針を探すのとほぼ同じだろう。
「はぁ……骨が折れる」
パイプも勇者だって言っていたが日本語は読めないらしいから期待は持てんな……。
だがこれをこなさなければハルトを見つけることなんて夢のまた夢だ。
パチィンと頬を叩いて気合を入れる。
「おぉ〜……こんなに気合いの入ったヒロさん、初めて見ました」
「今日をヒロが気合を入れた記念日と名付けましょう」
散々な言われ用だ。だが、それも今までの行いで仕方が無いことだろう。
とりあえず俺は非人道的な事は大っ嫌い何だ。だから絶対に止めてみせる。
「ヒロさん。そう言えばさっきこの資料の文字を読めていたみたいですが」
「ん、ああ。それは俺のもといた所の文字だからな」
床に目を凝らしながらも受け答えをしていく。
しかしかなり疲れるな。こんなに資料が散らかっている上にそこそこの広さがあるからどこにあるか……。
くそ、こんな事になるならダウジングを覚えておけばよかった。
どうせ宝探しなんてしねぇから要らないだろうとタカをくくって居たが、探し物も出来ると言う魔法だから覚えておいて損はなかったって事か……。
「もっと先を見すえた行動が出来るようにならないとダメだな」
今更になって後悔してくる。
土属性のダウジング。探している物の大体の位置を教えてくれる便利魔法だ。
だが、この魔法を知ったその時はダウジングと言ったら宝探しだろうと思い、宝探しなんて面倒臭いものを誰がやるかとスルーしていたのだが……今になってその時の行いがボディーブローの様に効いてきた。
「ヒロさんの事をもっと知りたいです! ヒロさんのもといた世界の」
「今度な」
とりあえず今は探し物に集中したいのであまりしつこくされないような返答をする。
するとやはり俺の狙い通りにユユは嬉しそうな表情をして大人しくなる。
「だいぶ疲れてきたな……」
「ヒロト、一回休憩したらどう?」
優しい声色で言ってくるルル。心にジーンと来る。こんな優しい言葉をかけられたのはいつぶりだろうか。
だが俺は知っている。こんな俺に優しい言葉をかけてくるやつの心の内を。
涙がちょちょ切れそうになっている手を隠しながら薄目でルルの方を見ると勝ち誇った笑みを浮かべユユを見下ろしていた。
ユユはユユで悔しそうに唇を噛み締めている。
そんな二人の間には火花が見えるような気がした。だが、何となく分かった。ルルもあっち側の人間だ。
「はぁ……」
俺に味方は居ないのか。
ため息を着きながら資料探しを再会しようとすると――
「うわぁぁぁぁっ!」
外の方で悲鳴が聞こえてきた。
この声はパイプか?
「ヒロ」
カナタの目配せをする。
カナタも同じことを考えているようだ。となるとここは一旦中断して、
「一回外に出るぞ!」
俺がそう声をかけ古くなり、開きにくくなっている窓を無理やりこじ開けて開けて外に飛び出すと他の面々も俺に続いて飛び出してきた。
パイプはなかなかに強い。だが、そのパイプが悲鳴を上げるってことは相当やばいに違いない。
体力の無い体を無理やり走らせて現場まで来ると俺達の目に驚くべき光景が飛び込んできた。
「うそ、だろ?」
そこでは魔物に囲まれて必死に戦っているパイプが居た。
だが、ただそれだけでは無い。何とあのカラタさんの攻撃でも傷一つつかなかった強靭な肉体から鮮血が流れ出していたのだ。
カラタさんでも傷を付けれないという事を知っている俺は物凄く驚いた。
「パイプ!」
俺は焦り、急いで駆け寄る。
しかしパイプはそんな俺を静止するように右掌をこちらに向けてくる。
どういうつもりだ。ここは俺も共に戦った方が、
「来るな。死ぬぞ」
必死の声色。パイプの口から初めて聞いた口調だ。
いつもおちゃらけているパイプがこんな口調になるってことは相当まずい状況なのだろう。
それならば尚更助けないわけには――
「聞こえなかったのか? 来るな、俺はそう言ったんだ」
「パイプ、お前っ」
まさか俺達を庇って死ぬつもりか?
「パイプさん……」
カナタは背後で心配そうな声を漏らす。
俺は魔物達の方を見てみる。
そいつ等はいつも見るような魔物ばかりでとてもパイプが負けるような魔物には見えなかった。
だがさっきこんな資料を見つけてしまった。『魔物凶暴化事件』と言う資料を。
これによると凶暴化した暴魔と言う魔物達は弱い種だとしてもかなり強くなる。もしこれが今怒っているのだとしたらパイプ一人で倒すのはかなり無理があるんじゃ?
「とにかく逃げろ! 特にヒロトっ!! お前は全力疾走するんだぁぁぁっ!」
とても必死に俺に訴え掛けてくる。
しかしなぜ今、俺を名指しして逃げるように促したんだ。『みんな』で良いだろうが態々『ヒロト』と言った事に引っかかった。
何か理由があるのか?
その瞬間だった。
「ぐわぁっ!」
突如としてパイプのすぐ真横が爆発してパイプは吹っ飛ばされる。
少し距離がある俺らにもかなりの爆風が来たし、近くに居た暴魔と思わしき魔物達は何人か爆風に巻き込まれて倒れてしまった。
だから直撃を食らったパイプはかなりのダメージのはずだ。
砂煙で見えなくなっているがパイプの悲鳴が聞こえてくる。それを聞くだけで自分とパイプを置き換えてゾッとする。
「ったく、余計な事を言う小僧だな〜。なぁ、君等もそう思わないかい、ボーイアンドガァァル?」
「っ!?」
背後から突然声が聞こえてきた。




