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第75話 ハルトへ繋がる情報3

 この世界に来てから一番の驚きだった。

 まさかドラゴンから結婚してくれと頼まれるとは思っていなかった。

 だってドラゴンだぞ? 種族違うぞ?


「うーん……獣人族と人間が結婚した例もあるので……ありなんですかね?」

「カナタ何言ってんの!?」


 ちょっと獣人族って言葉に惹かれたけど、獣人族とドラゴンって全くサイズが違うだろ。同じベクトルで考えちゃいけないだろ。

 ドラゴンと人、小人の人と巨大なドラゴンで愛を育むことが出来るかっていうんだよ……。

 しかし良くもまぁ俺のようなどこぞの馬の骨とも分からない自分達より何倍も小さい種族に結婚を申し込もうと思ったよな。しかも偉いところのお嬢さんだろ?

 これは断るべき、いや断る以外の選択肢なんてあるか?


「あー。お断りさせていただきま」

『分かる。分かるぞ』


 何が分かるんだよ。このドラゴン、頭のネジが数本抜け落ちてんじゃないのか?

 しかも少し興奮気味に食い気味だし。


『体の大きさだろ?』

「分かってるなら最初から言わないでください」


 どうやら体の大きさの問題に関しては自覚していた様子のドラゴン。ならばもうここには用はないな。

 あの巨大なドラゴンとの結婚は気が向く向かないの問題ではなく不可能だ。


『ならこうすればいい』


 玉座に座ってるドラゴンが弾けるような大きな音の指パッチンをかましたら隣のドラゴンの体が光始め、どんどんと体が小さくなっていく。


「これならいいよねヒロト!」


 光が俺達と同じくらいの大きさになると中から一人の女の子が飛び出してきた。

 その女の子は一目散に俺に飛びかかってきて抱きついてきた。

 その衝撃はかなりな物だったが何とか耐えて、その顔を見てみると俺は目を丸く見開いて驚いた。

 他の面々も絶句をしている様子で言葉も出ない。


「あ〜ヒロト会いたかったよ〜」


 俺の胸に頬ずりをするドラゴン。

 そのドラゴンは以前見た事あるドラゴンで、俺達が今回探していた俺達の仲間(・・・・・)のドラゴンだった。

 ドラゴンに結婚を申し込まれたことにも驚きだし、横に居た娘らしきドラゴンが件のドラゴンだったという事にも驚きで二度驚かされた。


 そ、そんなことよりもこの子の豊満な胸が押し付けられてて……。


「この子はドラゴンこの子はドラゴンこの子はドラゴン」


 何度も繰り返して何とか心の平穏を保とうと試みる。

 だが感触は目を閉じても開いてもドラゴンではなく人間の女の子。

 視覚でも獣人族とは違い、しっぽも耳も出ていなく、完全なる人間になっているわけで同い年の女の子にしか見えないから抱きつかれてドキドキしてしまう。


「え、えっと……君はあの時のドラゴンだよね?」

「そうだよ」

「なんで俺に抱きついてるんだ?」

「好きだからだね」


 ピキっとその場が凍りついたのを感じた。

 お父様に命じられて仕方なくでは無く明確な好意を俺に寄せてきたから頭が混乱してしまった。

 あれ? 俺はこの子になんか好かれるようなことしたかな?


「私、あなたの事が好きです。結婚してください」

「「いきなりプロポーズ!?」」


 カナタとユユが叫ぶような声で驚いた。

 近くにいたパイプさんは端に避けて壁によりかかって寝ている。こんな場所なのに寝るなんて神経が図太いなこの人。後で絞めておこう。


「えっと、どんなとこが好きになったの?」


 カナタが聞くとドラゴンは直ぐに答えた。


「そんなの……えへへ。この里を守って下さった時のあのキリッとした真剣な表情に惚れたに決まってるじゃない〜」


 くねくねと動きながら頬に手を当てキャッキャと嬉しそうに俺に惚れた理由を語ってくる。

 その様子はまるでユユを見ているみたいだ。


「ドラゴンさん」

「はい?」

「……良い趣味してますね」

「……あなたこそ」


 ガシッと握手をキメるユユとドラゴン。俺を好きな者同士共鳴してしまっている時点で俺にとっては嫌な気しかしない。

 そもそもユユと共鳴してしまったら確実にやばい事になってしまう。

 ユユは性教育を全く受けてこなかったみたいだが、みんながみんなそういう訳では無いだろう。

 だからユユと共鳴されたら俺の安眠が今度こそ不可能になってしまう。


「そう言えば皆さんって私のことをドラゴンって呼びますよね」

「そうね」


 そうか。ドラゴンと言うのは種族名だもんな。人間で言ったら人間って呼ばれるのと同じ意味だ。

 確かに名前で呼んだ方がいいかもしれない。


「んじゃあ名前を教えて貰えるか?」

「それでは教えてしんぜよう」


 ドラゴンは長い赤髪を揺らしながら回転するとスカートを持ってお辞儀しながら自己紹介を始める。


「私の名前はルル。種族は見た通りドラゴンをやっています」


 丁寧な仕草で少し驚いたものの、ユユが高速で頷いているのを見て驚きが少し薄れた。

 と言うか普通に可愛い。人間だったら即お友達になりたいレベルだ。


「そう言えばあなた方は私達が来る事を知っていたようですが……」


 実はそこは俺も気になっていた。

 アポもとっていないのに名前パスされた事に驚きを隠せなかった。

 しかも真っ先にこの部屋に案内されたってことは俺らが危なくないと思われていたからだ。そんなことはそうそう無いだろう。


「それはお父様の力で、えっと……人間で言うところのスキルだっけ? 私達ドラゴンも人間と同じくスキルが使えるのだよ〜」


 スキル。つい最近知った言葉だが、それには色々な種類がある。

 カラタさんとハルトのスキルが違ったから色々あるのだろう。ならば俺達が来る事を察知できるスキルがあったとしてもおかしくない。

 それよりも驚きなのはドラゴンがスキルを使えると言う点だ。人間以外でも持っているもんなんだな。


「お父様、ゴードンのスキルは予知。使うと次の日の身の回りで起きる出来事全てを予知できるって言う凄まじい力なんだよね」

『我の力は予知、予知奥義――フューチャーは未来と言っても次の日の出来事を全て予測できる力。ただし一日に一回しか使えなく、対象一人の周りしか見えないけどな』


 ルルが軽く解説するとゴードンさんは詳しく説明してくれた。

 なるほど。ってことはゴードンさんが予知を使ったから今日俺がここに来ることがバレていたわけか。


 しかしかなり使うポイントが重要になってきそうな力だ。対象一人って事は自分に使えるけど他の人に使ったら自分の事は見えない。

 つまり奇襲されるとしても自分の未来が見えないから予測できない。

 使う場面による力だな。


「なるほど理解しました」

「はい! んでこの私、ルルのスキルは異型化だよ!」


 異型化?


「って事は今のそれって」

「はい。異型化です」


 これがスキルってことはドラゴンがみんながみんな人間になれる訳じゃないのか?

 てっきりドラゴンはみんながみんなこうだと思っていた。

 だが違ったようだ。ルルが特殊なだけだったようだ。


「異型化奥義――ミミックで何にも擬態できるよ!」


 何その便利でステルスに最適なスキル。俺も欲しい! ……何に使うかはご想像におまかせするが。


「次、ルルちゃんはなんの属性を持っているの?」


 魔物一体一体にも属性ってのがあるとヒューラーの時に理解した為、ルルにも属性はあるのだろうと思いカナタは聞いた。


「オールアトリビュートだよ」


 オールアトリビュート? 聞いたことの無い属性だな。

 確かこの世界には火・風・木・水・土・光・闇の七属性しか無かったんじゃ?

 唯一翻訳魔法には属性が書かれていなかったから無いのだろうけど。

 そんな感じで疑問を抱きながらカナタの方を見るとカナタは絶句していた。

 そんなに驚くような属性なのか?


「えっと……オールアトリビュートって?」

「オールアトリビュートとは簡単に言ってしまうと全属性です」

「全属性っ!?」


 今、聞き間違いじゃなかったら全属性って言った?

 持てる属性って一人一つじゃ無かったのか? そんな疑問に答えるようにカナタは話し出す。


「基本的には一人一属性です。しかし稀に二・三個も属性を持っている人が居ます。その人の事を限界を越えた者と呼びます。そして全ての属性を持っている事をオールアトリビュートって言います。まさか彼女がオールアトリビュートだったなんて」


 オールアトリビュート。俺の知らなかった単語。

 まだまだこの世界には色々な秘密がありそうだな。


「それで、ヒロト達はこんな所へわざわざ顔を見せに来たんじゃ無いよね?」

「ああそれなんだが、ルル。君に協力して欲しいことがある」

「任せてよ! 大体のことは聞いてあげるよ!」


 なんと言う心強い仲間だ。

 多分この子だったら手伝ってくれるはずだ。


「実はな。色々あって調査しなければいけない事があってさ、そこは危険だって言うから護衛を頼みたいなって」

「分かった」

「良いのルルちゃん!? 結構大雑把な説明だけど」


 自分でもわかってる。だけどこの子なら信じていた、これくらいの説明だって着いてきてくれるって。


「その代わり条件ね」

「なんだ?」

「私を仲間に入れてください!」


 ぺこりと礼儀良く頭を下げて懇願してくるルル。

 その予想外の言葉にポカンとしてしまった。

 それから俺達三人は顔を見合わせて声を揃えて言った。


「「「何言ってるの、既に仲間でしょ?」」」

「え!?」


 ルルにとっては予想外の返答だったのだろう。今度はルルがポカンとしている。


「一緒に戦っただろ? その時点でお前は俺達の仲間だ」


 そのままの勢いで頭を撫でると俺に思いっきり抱きついてきた。さっきより強めだ。


「ヒロト、カナタ、ユユ! 大好き!」


 こうして新しくルルと言う仲間が増えた。

 これで行く準備は整った。あとはそこの寝ている奴を殴り起こせば終了だ。


「起きろ!」


 俺はブーストで勢いをつけた拳をパイプさん……いやパイプの顔にめり込ませる。


「ぐはっ」


 パイプは俺に殴られたことによって鼻血を出しながらその場に倒れ込んでしまった。

 だが俺はそんなことは気にせずに歩き始める。


「あ、あれ大丈夫なの?」


 ルルは心配そうに聞いてくるが俺は苦笑いしながら返答する。


「あいつ、防御だけは硬いんで」

「防御だけはってなんすか!」

「ほらね?」


 カナタもユユも俺の全力パンチがクリーンヒットしたもんで少しはパイプの事を心配したようだが直ぐに心配して損したと言う表情をしていた。

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