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第7話 無詠魔法

 そうか──これは決闘だったんだ。


 俺は絶対に決闘なんてしたくないな。殺し合うなんて俺の願いである平和を脅かすだけだ。


「どうだカラタ。俺は前回お前に負けてから死にものぐるいで特訓したんだ! 今度は俺が勝たせてもらう!」

 そして剣でのラッシュを更に激しくする。

 その斬撃をギリギリで防いでいくカラタ。苦しそうだ。誰もがシュウの勝ち。そう思ったその瞬間、

「風よ。我に力を与え、奴をうち倒せ! エアスラッシュ!」

 カラタがそう唱えると、急に突風が吹いたかと思ったらシュウの体に無数の切り傷が出来た。


 するとカナタは急に口を開いた。

「これが魔法ありのデュエルの面白い所です。押されていたとしても一発逆転が可能なこのデュエルではどっちが優勢だとしても勝つのがどっちかは分からない」

 確かに。今のを見てかなり魔法があれば有利になれるということが分かった。

「シュウ! 終わりだ!」

 カラタはそう言って剣を振り下ろす。しかし、その剣はシュウに当たることは無かった。

 シュウの直前で止まってしまったのだ。

「自分だけが魔法を使えると思ったか」

 そう言って剣の下から出てから指パッチンをすると、止まっていた剣が動き出して床に突き刺さる。

 今のはどういう事だ? 俺は一切何が起こったのかは理解できなかった。レベルが高い。


「今のは無詠魔法!?」

 隣を見てみるとカナタも驚いていた。

「無詠魔法は高等テクニック。並の腕前じゃ出来ないはず……。あのシュウとかいう人何者!?」

 カナタがそこまで言うならかなり凄いことなんだろう。

「まぁとにかく凄いってことなんだな?」

 そう聞くとカナタはコクリと小さく頷く。

「無詠魔法とはその名の通り、詠唱をしないで魔法を発動すると言う技術です。本来は無詠唱で魔法は放てません。それはどんなに強い人でもです。しかし、偶に無詠唱でも魔法を使える人が居ます。その人を超能力師(マジシャン)と呼びます。この街に一人居るかいないかだと思ってましたが、実際にお目にかかれるとは……」

カナタは感嘆の声を上げて興奮している。俺にはその価値はあまり分からないが、凄さは何となく伝わった。

 カナタ達からすればこの戦いはかなり参考になるんだろう。


「この俺の特定のものの動きを止められる停止の魔法に勝てる者など居ない!」

 さっきの剣が止まった現象は停止の魔法だったという事か。

 これはなかなかに強そうだな。

 やはりカナタの言う通り魔法で一発逆転が出来るってところが面白いポイントなのかもしれないな。


「はぁ……降参だ……。また腕を上げやがったな?」

「お前もな」

 と言って二人で固い握手を交わす。それだけでかなりの歓声が上がる。

 さっきからこの二人の戦いでは観戦してる人が多いなと思っていたら、周りの人の言葉を聞く限り、この二人は特に人気が高いみたいだ。それこそファンクラブなんてものも有るくらいだとか。

 そして戦いが終わったから徐々に人が居なくなっていって、最終的には俺とカナタとさっき戦っていた二人だけとなった。

「ん? あ! あなたは!」

「か、カナタ様!?」

 カナタに気が付いたようで驚いてこっちに駆け寄ってくるシュウとカラタ。

 なんかカナタとカラタってややこしいな。ナかラの違いだもんな。


「ん? 隣にいる人はどなたで?」

「もしかして勇者様?」

 違いまーす。俺を勝手に勇者として扱わないで欲しいのですが……。

 俺は勇者を断ったから勇者ではない。

「残念ながら一応勇者ですよ。断られましたが……」

 そして声や表情には感情は現れていないものの、アホ毛が垂れている為落ち込んでいるというのが分かる。

 アホ毛は正直なんだな。


 その瞬間、俺にキツい眼差しを向けられた。

「おい。勇者を断るなんて前代未聞だぞ!」

「いや、そんな事を言われましても」

「なんで断るんだ!」

 双方向から責められて正直怖いです。

 しかも下手なことを言ったらこの手に持ってる大剣で俺の事を斬ってきそうだから下手なことを言えない。本当の理由を言った瞬間に俺の異世界生活。いや、この世での生活が終わる気がしてならない。

 そしてどう言い訳をしようかと考えているとシュウがこんな事を言い出してきた。

「俺と決闘しろ」

 そんな最悪な事を言い出してきた。

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