第69話 ハルトの謎3
あの後、会場がボロボロになってしまったのでこの大会は中止となった。
暫くは復興は不可能だろうということで冬季の開催も怪しいらしい。
大会が中止となり多くの人達が気持ちを切り替えている中、俺はただ一人悶々とさっきの試合を考え込んでいた。
もちろんハルトの事だ。
嫌な予感が消えることがない。それくらいの事件だった。
「カナタ、あのハルトの事、どう思う?」
「怪しいですね。何か裏がありそうな、そんな感じがします」
おどけた様に見せて、んであんな力を使う。あれらは全て偽りだったのか?
現時点ではよく分からないが雰囲気的に良くないことなのは確かなようだ。
「そんなにハルト選手の事が気になりますか?」
「ん? まぁ少し」
あの場で唯一俺と同じ境遇で話しかけてくれた人だ。気にならないわけが無い。
それにあの時の安堵したような表情も気になる。
もしかしてハルトは今の境遇から逃れられたいとかそんな感じのことを思っているんじゃないだろうか?
何にしても心配で仕方が無い。
「ヒロト君」
後ろから肩を叩かれた。
叩いてきた人物はカラタさんだ。
「カラタさん?」
「君、ハルト君の事が気になるんだろ?」
「はい」
口に出していないのに読まれた!?
「よし、それなら俺の方で調べておこう。パイプは情報収集が得意だしそんなにかからないはずだ」
パイプ、そんな特技があったんだ。
「ではお願いします」
俺がそう言うとカラタさんは「うむ」と言って走り去ってしまった。
調べて貰えるならそれがいいだろう。
何にせよ俺らだけで調べるよりも協力者は多い方がいい。
「ヒロ、私達も調べてみましょう」
「ああ、もとよりそのつもりだ」
そして覚悟を決める。
この先には何が待ってるかは分からないがこの事件を必ず解明してみせる。
ギルドで受けるクエストではない、個人で考えたクエスト。略して個人クエストだ。
「私はヒロさんにどこまででも着いていきますよ!」
「ありがとうな。だが危険だと思ったら逃げてくれ」
俺達は三人で一チーム。この三人が居ないとやはり成り立たないんだなと再認識する。
「とりあえず今日は疲れたでしょうし、また魔痛にならないように今日はしっかりと休んでください」
カナタが労いの言葉を掛けてくれる。それだけで俺は感動を覚えた。
日本にいた頃は穀潰しだったから誰も労ってくれる人なんていなかったもんな。これが異世界に来てからの一番の変化なんじゃないだろうか?
「ああ、あんまり心配をかけないように善処する」
「善処じゃなくて絶対です!」
カナタはグイッと体を近づけて物凄い勢いで言ってきた。
それだけ心配されているってことで嬉しい。嬉しいが……。
「ち、近い」
「はっ!」
カナタは俺が近いと言ったことで距離の事に気がついたらしく顔を真っ赤にして華麗なバックステップをキメ、俺と一瞬で距離をとる。
そんなに俺と距離が近かったのが嫌だったのか? 大袈裟な距離のとり方だったが……。
「とにかく、絶対に無茶だけはしないでくださいよ。心配になるんですから、このままだと本当にヒロ……なので絶対に無茶はしないでください!」
「……心配してくれてありがとうな」
「〜〜っ。当たり前じゃないですか。仲間なんですから……」
そうだな。仲間だ。俺も仲間が居なくなったら悲しい。その事を理解してるつもりだったが理解していなかったみたいだな。
俺がこの二人を失ったら悲しくなってしまう。だがそれは逆も然りってことを俺は忘れていた。
結局俺は勇者として呼ばれたが勇者になる器なんて無かったということだ。
「勇者業は他の人に任せて平穏な自宅警備ライフを送りたい」
「うわぁ……さっきまでちょっとやる気になっていた人が今度はクズ発言をしていますよ……どう思いますかユユさん?」
「とりあえずヒロさんは世界一かっこいいと思います」
いや、今の発言は誰がどう聞いたってクズそのものでかっこいいとは真逆だっただろうが。
ユユ、お前はかっこいいしか言えなくなったのか?
「ユユちゃんは本当にヒロの事が好きだよね。……ちょっと助けられたからってちょろ過ぎるんじゃない? 『これ』はいつ何をしでかすか分からないよ?」
「…………あ、最近あまり聞かなくなった『これ』が出たな。頼むから人間扱いしてくれよ」
でも最近カナタの『これ』扱いに慣れてきた自分がいて今若干スルーしてしまいそうになった。
慣れって恐ろしい……。
「ヒロさんは酷いことはしません! それと私がヒロさんを好きなのは助けられただけが理由じゃないですから」
ぷいっと顔を逸らすユユ。その動作が可愛いなとクスッと笑みがこぼれる。
「ヒロがまた笑った。ユユちゃんにそんな力が!? これがロリコンの力…………っ!?」
「おい誰がロリコンだ誰が!」
ロリコン疑惑だけはダメだ。
それに俺がユユを見て微笑ましくなるのはもっと別な理由だし。
「俺さ、最近気がついたんだ。ユユの中に妹の面影を……弓の面影を探していたんだと思う」
「妹さんの?」
所詮俺はシスコンだってことだな。
あれから二年経つのか。
「ヒロさん……分かりました! 私、ヒロさんの……ヒロトさんの心を埋められるように頑張ります!」
「お、おう」
俺はそれを聞いて少し嬉しくなった。大切に思われてる気がして悪い気はしない。
俺達はそんな話をしながら帰路を辿るのだった。




