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第6話 利益がある場合は媚びを売ります

 俺は再びカナタに街を案内してもらっている。

 因みにここは商店街らしい。


 リンゴやみかんなど、日本でもよく見かけるフルーツの他に、「これはなんだ?」と指を指しながらカナタに聞くと──

「それはスクの実です。栄養価がとても高く、風邪をひいたらこれを食べておけば治る! と言われるほど栄養価が高いんですよ。ちょっと食感はパサパサしますが料理して食べると、他の食材の旨みを余すことなく引き出して美味しくなるので人気のある実ですね」

とやたら饒舌に解説してくれた。もしかしたら好きなのかな?


 スクの実か……。やはり新しいものの発見は良い。今だけは気が向いているから面倒には感じない。

 見た目は枝豆の様に小さく赤い木の実だ。


 そして更に歩いていると急に横から声をかけられた。

「兄ちゃん。何か買っていかないか? 安くしておくぞ」

 安くも何も一文無しなんですけどね。と俺は心の中で思う。

 だが、断るとこの手の人はもっと面倒な事になりそうな気がするからな。

「そう言うのは適当に断ればいいんです」

 俺の心中を知らないカナタは簡単にそんな事を言ってくれる。だが、俺にとっては一つの選択肢で生死を分けるくらいの問題だ。


 悩むも何も一文無しだから買うって選択肢は無いけどな……。

 そして悩んだ結果こういう答えにたどり着いた。

「今はちょっと用があるのであんまり長居できないんですよ。すみません」

 と相手も食い下がりにくい理由を述べる。

 これならこの人もこれ以上食い下がらないだろう。

「いやいや! そう言わずに!」

 これは予想外だった。

 まさか食い下がってくるとは思わなかった。


「いや、用事が」と俺が困っていると──

「あの。私達、急いでいますので」

 とカナタが割り込んできた。俺の話に乗っかってくれたようだ。

 そして商人はカナタを見るなり「お引き止めしてしまい、申し訳ありません!」と謝ってきたため、俺は不思議に思う。


 ──カナタを見た瞬間、態度が変わった?


 そんな事を考えているとカナタは小声で教えてくれた。

「その年の勇者召喚術を使う人は王様の次に偉いとされます。なので私の言葉は王様の次に重視されます」

 知らなかった。


 まぁ知らないのは当たり前なのかもしれないけど、知らないで悪い態度を取ったのは悪かったかもなぁ。

 まぁ、ここで急に敬語を使うタイプでも無いし、このままでいいか。

「さいですか……」

 まぁ、あまり俺は地位のことについては興味が無い。だから俺は結構誰に対してもこんな口調だ。


 そしてカナタが言うと直ぐに解放してくれたため、カナタに対して尊敬の眼差しを向ける。

「さすがです! 一生着いていきます!」

「そうですか……。なら魔王討伐──」

「それは嫌です」

 俺は平常運転です。


 そして暫く歩いて行くと城が見えてきた。

 やっぱり王様が居るって話を聞いた時から薄々気がついていたけど城もあるようだ。

 しかももんの凄く立派な城ですね。

 実物をこの目で見たのは初めてだ。城というものが日本にもあるってのは知っているが、見に行ったことは無い。


「あの城にはこの国の王様。アルブレイト様が住んでおられます。あの城はこの街の半分近くの面積を閉めていると言われるほど大きい建物です」

 この広い街の半分を閉めている……だと? バカバカしい話ではあるが、ここが異世界だと言うことも考慮するとありえない話ではないかなと思えてきてしまうのが怖いところである。

 マジ半端ねえ。


「それじゃ、街の中心の方へ行ってみますか。確か街の中心には道場や兵士育成施設、憩いの場なんかもあったはずです。そこで休憩しましょう」

 今まで街の中心じゃなかったのか、あんなに賑わっていたというのに……。これより賑わっているって元々人混みが苦手な俺には厳しいな。人に酔わなければいいけど……。



 歩いているとどんどん人の声が大きくなって言っているのが聞こえてきた。

 俺としてはあまり近づきたくないんだが、カナタが気にせずに進んで行くから俺も行かざるおえない状況になっている。


 そしてまた暫く歩くと街の中心と思わしき場所にたどり着いた。

 真ん中にデカデカと噴水があって、それを囲うようにベンチが八つほど置いてある。

 その周りを木が数本取り囲むような感じだ。

「ここが中心です。あそこが道場なんですが、今は何やら試合をしているようなので見に行きましょうか」

 カナタはそう言って全体的に丸太で出来た建物の中に入って行った。

 入り口の上の方にはまた看板が置いてあるようなんだが、またまた読めない。恐らく道場的なことを書いてあるんだろうが、これは不便だ。


 そして建物内に入ると人集りが出来ていた。

 そしてその中心で二人の男が剣を持って向き合っていた。

「ここであったが百年目!」

「今日こそ決着をつける!」

 あれが試合……なのか?

 まぁ、俺には縁のない世界だよなぁ。

「キャー。シュウ様カッコイイ!」

「カラタ様! 負けないで!」

 野次馬の声が聞こえてくる。


 話から考えると今、押している方がシュウ、そして押されているのがカラタと言うらしい。

 確かに見ている分には面白い。良いものを見せてもらっている。

 だが気になるんだが、どうして戦ってるのかだ。

 その事についてカナタに聞いてみると、「あの二人はライバル同士なんです。それでここの道場に入会するとデュエルカードと言う決闘できるカードを貰えるんです。そのカードを使えばこれみたいに決闘が出来るって言うことです。因みにデュエルでは殺し合いをするんですが、デュエル中に死んでも終わったら生き返るので安心です」と説明してくれた。


 そうか──これは決闘だったんだ。

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