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第53話 平和の始まり

 飯を食い終わり、俺らは久し振りに穏やかな朝の一時を過ごしていた。

「とりあえずヒロの体が完治するまでクエストはなしですね」

「仕方が無いですね。ヒューラーを倒したことでやっとお父さんに実力が認められましたが、ヒロさんとでないとやる気が出ません」

 二人はクエストの話しを主にしているがその話の中心には必ず俺への配慮が織り交じっている。

 良くもこんな奴なのにこの二人の好感度は下がらないな。

 と言うかユユに関してはずっと好感度を下げようとしていたのにどんどんと上がって行っている。

 もうユユの好感度を下げることは無理なのだろうと確信に近いものを感じている。

 きっとあの時魔物から助けた時からもう俺はユユから逃れられない運命にあったのだろう。


「そう言えば俺がずっと寝ていたせいでバンフーさんの建築を手伝えなかったな」

 少し肩を落とす。

 確かにクエストで気を持ってきたのだが、それでも任せっきりにするのは罪悪感があった。

「ん~? お父さんなら大丈夫だと思います。今朝もすごく張り切ってましたよ」

「あー。なんかその光景が目に浮かぶな」

 何か想像出来てしまう。

 バンフーさんは俺に対して妙に協力的だ。だからバンフーさんの願いはなるべく聞いてあげたいが、 バンフーさんの願いといえばユユをお嫁さんに貰うってことだから気軽に聞くことが出来ない。

「そう言えばバンフーさんなら『ラストスパートだぁぁぁっ!』って言ってましたよ」

「……マジで?」

 もうそんなに進んだの?

 真新しく建てるからもっと時間がかかると思ってたからびっくりした。

 だが、それだと本当に俺は何も出来てないな。

「まぁ、今回はあの人が居たから余計にスムーズに進んだんですが」

「ん? あの人って?」

「多分会ったら分かりますよ」

 俺はこれまでに名前を覚えてる人と言うのは限られている。

 その中の誰かなのか? でも見たらでは無く会ったらってのが気になる。

 って事は今ここで写真でもなんでも見せられても分からないってことなのか?

 その理由が分からない。

「でもヒロさんは確実にあった事がありますよ。そこだけは自信をもてます!」

「ほう、そんなに自信満々なのか。それは楽しみだ」

 そう言えばここ最近は精鋭部隊とも他の勇者の方々とも接点がなかったからあの方々と久々に会うのもいいかもしれないな。

 だが、また急に決闘を申し込まれるのだけは勘弁だ。

「誰の事を思い浮かべてるか知りませんが、ヒロのその顔は面倒くさがってる時の顔ですね。決闘を申し込まれた時のことでも思い出してるんですか?」

「……なんでわかった。魔法のある世界だからってプライバシーは大事だと思うんだ。人の心を読む魔法は──」

「そんな物ないですよ……。ヒロの表情が分かりやすいだけです」

 呆れた声で返されてしまった。

 そんなに俺って分かりやすいか? さっきは俺の表情筋が硬いって言ってたのに今度は分かりやすいと言ってきた。

 矛盾である。

「そう言えば私、一度ヒロさんと戦ってみたいと思ってたんです。それで一発叩きのめしたいな~って」

「あなたは俺に恨みでもあるんですかねぇっ!?」

「……逆に無いと思う?」

「ちょっと思い当たる節が多すぎるので具体的に言ってくれませんか?」

「多分その思い当たる節全部が私の恨みの原因だと思いますよ」

 うそ……だろ?

 もしそうだとしたらカナタは優しすぎる。

 今一瞬考えたのだけで20個位は思いついてしまった。

 もし本当にそうだとしたらいつカナタに背後からグサリといかれてもおかしくない。

 これはカナタを少しでも刺激したら本当に刺されかねない。

 応戦したとしても確実にボコボコにされて終わるだけだろう。つまり──ジ・エンドだ。

「カナタさん、ヒロさんのどこが不満だと言うんですか?」

 両手でコップを持ちながら俺への不満を打ち明けたカナタに抗議し始めた。

 可愛すぎてあんまり威力は無さそうだが、カナタは結構ユユの事を気に入っていたはずだ。

(か、可愛いっ!)

 カナタは口を両手で押さえて頬を染めていた。効果覿面である。もっとやれユユ、情けないが俺を守ってくれ!

「ヒロさんはダメ人間ではありません! 私達が居ないと何も出来ないダメ人間なんですよっ!? ……えへ、えへへ」

「追い討ちだ!」

 しかも後半に関しては頬を染めて照れながらくねくねと体を揺らしながらえへえへと変な笑いを零している。正直この子はもうダメだと思う。

 バンフーさんには申し訳ないがユユはもう手遅れだ。

「そ、そうですね! 私達が居ないと何も出来ないヒロは私達が支えてあげないとですね」

「お前ら、よくそれを本人の前で言えるよな」

 だが、事実なもんで否定出来ないのが辛い。

 戦いでもなんでもいつも二人に助けられている一人では何も出来ない男、それが俺だ。

 策士も本当に強い人じゃなきゃ仲間が居ないと何も出来なくなるのだ。


「そう言えば今更ですがヒロ、筋肉痛とか魔痛は大丈夫なんですか?」

「今までの流れをぶち壊したが、本当に今更だな。魔痛はリラックス草を食ったからフラフラしない程度にはなった。筋肉痛に関しては痛いが、それで一歩も動かないわけにはいかんだろ」

「ヒロさんカッコイイです」

「…………是非今の言葉のどこがカッコイイのか御教授願いたい」

 普通のことを言っただけなんだがかっこいいと思ったらしい。

「え~。良いんですか? ヒロさんのカッコ良さを語りだしたら私は一ヶ月間ずっと話し続ける自信があります」

「「重い重い!」」

 珍しく俺とカナタのツッコミの声が被った。

 ちょっとユユさんの愛が重すぎてこっちからも身の危険を感じる。四面楚歌じゃないか。


「まぁ、ユユがヒロの事を愛してるのは十分に分かったからとりあえずバンフーさんの所に行きましょうか。バンフーさんもヒロさんが目を覚ましたら報告をと騒いでいたので」

「ん? まぁ、バンフーさんの所には丁度行きたいと思ってたところだし分かった」

「楽しみですね。私と同じヒロさんのマイホーム!」

「本当に一緒に住む気か?」

「はい! 既に引越しの準備は済んでいます!」

 早っ!? 気が早くね? 話によるとまだ完成してないはずなんだが!?

「………………ですか?」

「え? なんて?」

「私はそのメンバーに入れて貰えないんですか?」

 メンバー、即ち同居メンバーってことだろう。

「でもカナタさんには立派な一戸建てがあるじゃないですか?」

「引っ越すもん」

 珍しくカナタが可愛い。

「珍しくってなんですか!?」

 おっと間違えた。

「珍しいなそんなに俺たちと来たがるなんて」

「だって私達は仲間なのに自分以外が一緒に住んでいるのに私だけ仲間はずれみたいじゃないですか!」

 可愛い理由だった。

 当初は俺一人のつもりだったんだが結局皆一緒に住む事を望み、多数決で敗北してしまった。

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