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第5話 お詫び

 外に出た俺達は宿を探していた。

「えぇっと。確かここら辺に……」

 と言って辺りを見回して宿を探しているご様子。

 しかしなかなか見つからないのか、もう結構な時間探し歩いている。

「もしかして──迷った?」

 そう聞くとカナタの顔が真っ赤に染ってしまった。

「そそそ、そんな訳ないですよ!」

 必死なところが更に怪しいのである。


 そしてそれから暫く彷徨い……。

「あ、見つかりましたよ宿」

 やっと宿が見つかったようです。

 そして明らかにホッとするカナタ。迷っていたの、最早隠す気ないだろと言う様なリアクションである。


 看板には羊の絵とZが三つ並んでが書いてあったた為、さっきの文字しか書いてなかった鍛冶屋よりは文字を読めない俺でもわかりやすい親切で設計だった。


 中に入るとテーブル席が幾つかあって、その奥にカウンターがあり、横には2回へ続く階段があった。

 そして今度は女性の店員もちゃんと居る。それが普通なんだが、さっきの鍛冶屋のせいで感覚が狂ってしまった。


「いらっひゃいまひぇ〜!」

 大きな声の可愛らしい声が聞こえてきた。

 でも声を発したらしい主は見当たらない。

 店員も言って居たのだが、もう一つ違う声が聞こえた気がしたんだが……。

 すると声の主を探しているのがカナタに伝わったのか「ヒロ。下」と言いながら肩を叩いてそう言ってきたから下を見ると小さい女の子が居た。


 そして女の子は一生懸命背伸びをして「いらっひゃいまひぇ〜」と舌足らずな話し方で元気に接客していた。

 一生懸命な所が凄く可愛い。

「ヒロとは違いますね」

 ──ああ、全くだ。俺と違って頑張り屋さんだな……。


 俺もちょっと人生が違ったらひねくれないで頑張っていたのかな?


 否定せず俺は心の中で肯定する。

 何故なら自分でも分かっていて受け入れているからである。まぁ、これを本人が肯定するのもどうかとは思うけどね。

 というかさり気なくカナタもさり気なくヒロって呼んできていたな。まぁ別に良いんだが、この世界の人のコミュ力が化け物で俺が浮いてる感がある。


 そしてカナタはカウンターの店員の元に行った。

「あの。一部屋借りても良いですか?」

 そう言うと店員がノートに何かを描き始めた。

 この世界はアナログ方式なのかな?

 まぁここまでで分かったが、文明的な発展は現代日本よりも進んで無い。

 便利なものはほとんど無いんだろう。その代わりに魔法という便利な技がこの世界にはあるって事だな。

 さっき言ってた奴。魔法で良いんだよな?


 そして店内を見渡す。

 ここはさっきの鍛冶屋とは違って石が主な建築材になっていることには代わりないが、結構至る所で木材が使われている。

 天井は張りが見えていて何というか……。引き篭もりじゃボキャブラリーが貧困すぎてあんまり上手く表現出来ないんだが、一言で言ったらオシャレと言うことだろう。

 ──すると突然服を少しだけ引っ張られる感じがした。

 下を見てみるとさっきの頑張り屋さんな子が気がついて貰えるように俺の服の裾を引っ張っていた。

 そして気がついて貰えたらパァァっと太陽よりも眩しい笑顔を見せて「何か飲みましゅ?」と聞いてくる。

 そんな可愛い行動を取られたら断れないじゃないか。


 そしてどうしようかと考えると俺はお金の事を思い出した。

 もしかして、こっちでは日本円は使えないんじゃないか? 使えないなら今の俺って一文無し。

 さっきまでは全然気にしていなかったが、よくよく考えてみるとそれってかなりやばいんじゃないか?


 ここは仕方が無い。少し胸が痛むけど

「ごめんな。今、持ち合わせが無くってな……」

 そう言うと「あぁっ! すみません!」とペコペコ頭を下げながら謝ってくるので余計に胸が痛む。

 気を使わせてしまったな。何やってんだよ俺。こんな小さな子に気を使わせるって──。


 なんかいつもだったらここで無視するんだけど、なんか可哀想だしなんか気が向いたから励ましてあげよう。

「大丈夫だよ。君、偉いねこんなに小さいのに」

 と頭を撫でるとワキャキャと言いながら喜んでくれているのを見て安心する。


 しっかり者だけど、この点に関してはまだ子供なんだなと感じる。

「ヒロ!」

 カウンターでの事が一段落したのかこっちに駆け寄ってきたカナタは俺に一枚の紙を渡した。

 何か書いてあるようだけど、こっちの世界の文字は全般的に読めないようだ。不便だな。

 だが、読めないものは仕方が無い。少しずつ勉強するしかないか……。まさかこっちでも勉強することになるとはな。


 これは誰しもに言えることだと思うが、勉強は好きって言う人はあまりいないだろう。俺もその一人だ。

 だから高校には行かなかったんだ。

 だが、ニートでは無い。自宅警備員と言う内職をしていたからな。え? これをニートって言うんじゃないかって? そんなバカな!


「これが鍵です。ここに部屋の番号が書いてあるのでその部屋に着いたら、ここに書いてある言葉を唱えてください」

 その言葉が分からなくて困ってるんですが──

「あの……読めないので教えて貰って良いですか?」

 そう言うと驚いた様子で目を見開いた。もしかして字も読めない学校に行けなかった可哀想な人とか思われているんじゃなかろうか。この世界に学校があるかは分からないけどな。


「分かりました。じゃあ読みますね。『オープン・ザ・クロウ』部屋によってこのクロウの部分がフィッシュだとかラビットと言うように変わります。今回の部屋はクロウですね」

 クロウか……。今上げた例は全て動物だったよな。もしかしてここには全部動物が入るのか?

 まぁそんな事はどうでもいい。

 俺が今心配しているのは──

「あの……宿泊代とかは?」

 そう。宿泊代を払えないから非常に心配なんだ。


「転生者はみんな一文無しですので代わりに私が払っておきました。とりあえず一週間程度」

 と淡々と告げるカナタ。


 だが、こんな俺でも少し申し訳ない気持ちになる。

「んじゃ今度返す。必ず」

 そう言うとカナタのアホ毛がピンと立った。そして、カナタ自身の表情も驚きを表現していた。

「まさかヒロの口からそんな言葉が出てくるとは思いませんでした」

 俺をなんだと思ってるんだよ。

 確かに色々と俺は酷い性格だと思うが、そこまで腐っちゃいない。そういう事はちゃんと気にかけるタイプなのだ。

「でも良いですよ。本当に。これは私なりのお詫びです」

 そう言ってもう俺に向かってはしないと思っていた微笑みを見せる。


「後でやっぱり返してとか言っても聞かないからな。だからと言って地下帝国に送るのだけはマジで勘弁」

 俺はそう釘を刺すとカナタは「ちかていこく?」と不思議そうな表情を浮かべた。

「ああ、気にしないでくれ」

 直ぐにそう言うと「納得いかないけど」とは口にはしていたけど何も聞いてこなかった。


「では部屋も決まったことですし、街案内の続きをします」

 そう言って踵を返して宿から出ていく。

 それに続いて俺も首だけでお辞儀したあとカナタに着いて出ていく。

 そして宿から出る時に客と思われる人物とすれ違った時に肌がピリピリとした。

「今のは……」

 考えてるとカナタに遅いと文句を言われたので気にしないことにした。

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